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誰かにシューズを勧めると、社会が少し健康になる——スポーツ庁「シュープロ」が始動
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「このシューズ、すごく走りやすいよ」——市民ランナーなら、お気に入りの一足を誰かに勧めた経験があるのではないでしょうか。何気ないその一言が運動習慣のない人を動かす強い力になる、スポーツ庁による新たなソーシャルアクション「シュープロ」が9月2日に始動します。
| シュープロとは 「シューズ」と「プロジェクト」から着想を得たスポーツ庁が推進する健康応援プロジェクト。一人ひとりに合った「動きやすい靴」を利用することで、運動・スポーツの習慣化や健康増進、ウェルビーイングの向上につなげることを目指す。 |
8月27日の記者発表会で河合純一スポーツ庁長官は「動きたいという気持ちを後押しする、そんなプロジェクトとして考えています」と説明しました。主なターゲットは運動実施率が低い社会人世代となっていますが、すでにランニングや運動を楽しんでいる人々は、そういった人たちに影響を与える「拡散層」として位置づけられています。
発表会ではシュープロのコンセプトに賛同する多種多様な業種の企業、団体が登壇し、トークセッションとして語り合いました。
口コミが生む、重い腰を上げる"最後のひと押し"
女性専用フィットネスクラブを展開するカーブスジャパン常務執行役員の齋藤光氏は、同社の会員90万人のうち、約9割が「入会前は日常的に運動をしていなかった」と回答していることを紹介しました。そして入会の最後のきっかけとなったのは、6〜7割が「友人からの口コミ」だったといいます。しかも一度誘われてすぐ動くわけではなく、半年から1年、多い人では20回以上誘われて、ようやく重い腰を上げるというプロセスをたどります。「靴を買おうと思う瞬間、誰かに靴を勧める瞬間、その積み重ねが行動変容のベースになる」と齋藤氏は話しました。
では、ランナーが勧めたくなるような靴は、どうやって生まれるのでしょうか。アシックス副社長の千田伸二氏は、2018年の箱根駅伝でナイキの厚底シューズに市場を席巻され、自社シェアが一時ゼロになった経験を明かしました。そこから開発チームが着目したのは、ランナー個々の走法の違いでした。歩幅の広いランナーと、ピッチの短いランナーでは、ミッドソールの構造やカーボンファイバーの形状を変える必要がある——その気づきから生まれた「メタスピード」シリーズは、箱根駅伝のトップ選手に採用されるまでになりました。「アスリートの声を聴かなければ、本当に履きたくなる靴はできない」と千田氏。ランナー一人ひとりの走り方や足の感覚が、次の一足を生み出す原点になっているといいます。
そういった"声"を仕組みとして集めているのが、ゼビオホールディングス副社長執行役員の中村考昭氏が紹介した3D足型測定サービス「フィートアクセス」です。すでに100万人以上が利用し、足の形だけでなく歩行時の重心の動きまで計測してきたといいます。「メーカーを横断してデータを持っているからこそ、その人に本当に合う一足を提案できる」と中村氏。ランニングシューズを選ぶ際に測定した自分の足のデータが、次に店を訪れる誰かの靴選びの精度を高める一部になっているといいます。靴選びは個人的な体験でありながら、他者の靴選びを支えるデータの一部にもなっているのです。
ランナーもビジネスパーソンも、同じように靴を選んでいる
会場では、日本郵政グループ女子陸上部・鈴木亜由子選手からの動画メッセージも上映されました。「シューズは身体の一部。走る距離やペースによって使い分けています」と語る鈴木選手は、普段は郵便局員として勤務しています。そのため、オフィスカジュアルにも合わせやすいクッション性の高いスニーカーを愛用しているといいます。
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日本郵政鈴木亜由子選手もビデオメッセージで登場。 |
日本航空ウェルネス推進部の藤田奈穂美氏は、客室乗務員や空港スタッフ約1万4,000人を対象に、制服着用時のスニーカーを選べる制度を昨年11月から始めたことを紹介しました。「全員に履いてほしいわけではない。その日の体調や業務内容に応じて無理なく選べることが大切」。制服姿のスタッフが選ぶ一足も、休日にランナーが選ぶ一足と、実は同じ理由——疲れにくさや心地よさ——を求めています。「動きやすい靴」という価値観は、働く人々の間にも自然に広がりつつあるといいます。
市民ランナーが日々何気なく行っている「靴を選ぶ」「靴を勧める」という行為は、開発現場のデータになり、運動を始めていない誰かの背中を押し、働く人々の選択肢を広げる起点になっていきます。「シュープロ」は、その循環を社会全体でさらに大きく育てていく試みともいえそうです。
9月2日のキャンペーン開始後、10月12日(月・祝)のスポーツの日にはポスター掲出などの展開も予定されています。シュープロへの賛同・参加を希望する企業・団体は、スポーツ庁「シュープロ」Webサイトから申込ができます。 https://sportinlife.go.jp/shoes-project/
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