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照義、東京を走る ~東京レガシーハーフマラソン(前編)~
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照義、58歳、男。日課の早朝ランも、レース参加も基本は独り。誰にも気を遣わず、自分のためだけに贅沢な1泊2日を組み立てる。前日は名所を歩き、名物で腹を整える(走る前なので節度はある)。大会当日はマイペースで走り切り、ゴール後はグループ参加の乾杯を横目にレース後の身体を静かにいたわる。速さも順位も関係ない(はずだった)。走る、旅する、食べる―それを真剣に楽しむだけだ。
照義の「孤独のグルメ」的ハーフマラソン旅は、ジャパンプレミアハーフシリーズ(JPHS)のシーズン最終戦を迎えた。舞台は、東京。
今回は東京が舞台。前泊もなければ、旅先のご当地グルメもない。
これまでとは違う、少し特別な朝を迎えた。
午前4時半に起きると、テーブルに玉子焼きが置かれていた。朝食用にと、深夜に妻が作っておいてくれたらしい。炊きたてのご飯と一緒に、ありがたくいただいた。
これから21.0975kmを走る身にとって、何よりのごちそうだ。
千駄ヶ谷駅で下車し、国立競技場に到着。ゲートオープン前から、すでにランナーの行列ができている。
一昨日のマラソンEXPOでも訪れているが、朝日に照らされた国立競技場は、圧倒的な存在感だ。聖地という言葉がよく似合う。
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天気は快晴、スタート時の気温は20℃。芝生の上でいつものように念入りにストレッチした |
レースウエアに着替え、スタートブロックへ向かう。
それにしても、会場の動線づくりが見事。約1万8000人のランナーが混乱することなく移動し、スタッフに手荷物を預け、指定のスタートブロックへと進んでいく。
海外からの参加者も迷わずに済みそうだ。
東京世界陸上でアスリートたちが競い合ったトラックへと降り立つ。
スタートを待つ間、場内の大型ビジョンには、前回大会の参加者たちのインタビュー映像が流れていた。
この演出で期待が一気に膨らむ。ここから東京の街へ走り出すのだ。
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行き交うランナーと静かに放ち合う熱気。おのずと気持ちが高まっていく |
車いすマラソンに続き、第1ウェーブのスタートを見送る。そして、いよいよ第2ウェーブのスタート。
号砲が鳴った。
予想通り、スタート直後から大混雑。思うように前へ出られず、最初の1kmに6分かかってしまった。
札幌では果たせなかった1時間50分切りを、今日は何としても達成したい。なのに、いきなりのビハインドだ。
5kmまでにロスタイムを取り戻そう。そう考え、前のランナーにぶつからないよう注意しながら、少しずつペースを上げていく。
この大会は、東京2020オリンピック・パラリンピックのレガシーとして誕生した。
東京オリンピックのマラソン競技こそ札幌で開催されたが、こうして東京の街を走る機会を残してくれたことには感謝したい。
コースは国立競技場をスタートし、外苑西通り、靖国通り、外堀通り、白山通り、中央通りなど、東京を代表する大通りを駆け抜ける。
ランナーなら、一度は走ってみたいコースだろう。
5km通過は26分台。何とか出遅れを取り戻した。
少しペースを落とそうと思うのに、キロ5分のペースはなかなか落ちない。
このまま行けるところまで行ってみよう。最後は力尽きてもいい。
神保町の交差点を左折し、靖国通りを走っていると、ふいに懐かしさが込み上げてきた。
かつて大学受験に失敗し、浪人生として御茶ノ水の予備校に通っていた頃の記憶だ。
1986年。バブル経済が本格的に始まり、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が大ヒット。デザイナーズブランドが全盛期を迎えていた時代だ。
当時の私には、そんな世の中の流行など関係なかった。テレビを見る時間も惜しみ、ひたすら勉強する毎日。予備校帰りに、仲のよい5人で喫茶店に立ち寄るのが、唯一の楽しみだった。今になると、あの1年間も貴重な体験だったと思える。
そんな感慨に浸っているうちに、日本橋を渡り、10km地点を通過。
折り返しポイントを示す大きなカラーコーンには、英語で「TURNING POINT」と書かれている。
人生のターニングポイントは、この先もやってくるのだろうか?
いや、今は人生の先行きを案じている場合ではない。
それよりも先に、あと11kmという現実が待ち構えている。まずはそちらに集中しなければ。
(後編へつづく)
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