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ひとり名古屋めし選抜会議 ~名古屋シティハーフマラソン編~
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照義、58歳、男。東京都在住。日課の早朝ランも、レース参加も基本は独り。誰にも気を遣わず、自分のためだけに贅沢な1泊2日を組み立てる。前日は名所を歩き、名物で腹を整える(走る前なので節度はある)。大会当日はマイペースで走り切り、ゴール後はグループ参加の乾杯を横目にレース後の身体を静かにいたわる。速さも順位も関係ない。走る、旅する、食べる―それを真剣に楽しむだけだ。
「孤独のグルメ」的ハーフマラソン旅、今回の目的地はまさにグルメの街、名古屋。
「孤独を選択することは、自分自身を知ることを選択すること」(フランスのことわざ)
「ハーフマラソン旅」の楽しみは、走ることだけではない。むしろ半分は食べることにある。せっかく現地まで足を運ぶのだから、その土地の名物を味わいたい。
今回の目的地は名古屋。実は12年前、私はここに単身赴任していたことがある。しかし当時は節約のため自炊中心。名古屋めしの味をよく知らぬまま街を去ってしまった。今回は、名古屋グルメのやり残しを回収する旅でもある。
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行きの新幹線から撮れた富士山。ネットでの予約は窓側のE列。2日間とも晴天に恵まれた |
1泊2日の旅で外食をするタイミングは、レース前日の昼と夜、そしてレース後の昼。たったの3回しかない。
されど、名古屋めしは強敵だ。味噌かつ、味噌煮込みうどん、あんかけスパゲティ、手羽先、ひつまぶし、小倉トースト……。限られた食事回数の中で何を選ぶか、私の「選択と集中」が試される。
しばらく悩んだ末、私はこう決めた。
前日昼、味噌かつ丼 ……昼食なら消化に時間をかけられる
前日夜、あんかけスパゲティ ……前夜の炭水化物補給
レース後、味噌煮込みうどん ……疲れた内臓をいたわる
食とスポーツに関する、私の精一杯の知識を動員した戦略だ。
なかでも今回、密かに楽しみにしていたのが「あんかけスパゲティ」。実はこれまで食わず嫌いだった。理由は単純で、パスタにとろみのある「あん」をかけるという発想に、違和感がぬぐえなかったからである。
栄にある有名店に入り、「人気No.1」の商品をタッチパネルから注文。鉄板の上でパスタをジュージューと炒める調理人の姿が見える。運ばれてきた大きな皿には、ウインナー、ハム、ベーコン、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームと一緒に炒められたパスタ、その脇には大量のあんがかかっている。
ひと口食べた瞬間、驚いた。
熱い。
パスタで舌をやけどしそうになったのは、これが初めてだ。が、この熱さが妙にうまい。ゆでたパスタとは完全に別ジャンルの食べ物だ。どうやら私は、この街で新しい好物を見つけてしまったらしい。
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「とんかつ」と「みそ」というこってりしたもの同士を掛け合わせてもしつこくならないのが、本場「矢場とん」のみそかつ丼 |
スパゲッティハウス・ヨコイの元祖あんかけスパゲティ。これまで食わず嫌いだったことを悔いた一品 |
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ご存じの方も多いが、「名古屋シティマラソン」は「名古屋ウィメンズマラソン」と併催される。ナゴヤドームのEXPO会場に入ると、大勢の女性ランナーとそれをもてなす出展ブースの装飾がまぶしい。どう見ても主役は女性である。異世界に迷い込んだような戸惑いを覚えつつも、会場全体に漂う「浮かれ気分」を存分に味わった。
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レース当日。ウィメンズマラソンと同様の華々しいセレモニーでスタート。5kmほど走ると、反対車線からフルマラソンのランナーたちがやって来る。延々と続く女性の大集団。これだけ多くの人が42.195kmに挑戦していることに、あらためて驚く。同じコースを走っていても、こちらは21kmの気楽な旅人。向こうはフルマラソンという長い旅路の途中である。中には、初フルに挑戦している人もいるのだろう。覚悟の重さが違うはずだ。
大通りで繰り広げられる「女性の祭典」に混ざり、沿道からは子供たちの「がんばれー!」という声。あれには不思議な力がある。どんなエネルギージェルより効く気がする。
コースの後半、上り坂では強い向かい風にも苦しみながら、やがてハーフのフィニッシュ地点へ。一方、ウィメンズはまだ21km地点。ここからが本番だ。フルを走る皆さんには少し申し訳ない気もするが、私はひと足先にゴールする。
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上り坂での向かい風はこたえたが、ネットタイムで2時間を切ってフィニッシュ。達成感あり。 |
手荷物を受け取り、心地よい疲労感を味わいながら会場を歩くと、「たいやき」の文字を見つける。脇目もふらずに屋台へ。寒い日のレース後は、なぜかたい焼きが食べたくなる。疲れきった身体が自然に求めるのか、そう感じているのは私だけなのか。真相は分からないが、とにかく美味しい。
旅の最後は、名古屋めしの締めくくりだ。名古屋駅近くにある「味噌煮込みうどん」の老舗へ。ぐつぐつと音を立てる土鍋のふたを開け、コシの強いうどんを、汁が飛び散らないよう少しずつ口へ運ぶ。先月、丸亀で食べた讃岐うどんとはまったく違うが、これはこれで実にいい。
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老舗「山本屋本店」の味噌煮込みうどん。時間をかけて醸造された赤味噌、白味噌のブレンドが絶品 |
名古屋めし三昧もこれで終了。満腹と多幸感を抱えて、私は新幹線に乗り込んだ。
次の目的地は、来月の「ぎふ清流ハーフマラソン」である。
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