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ラッパーGAKU-MC「『頑張れ』という言葉が嫌いだった僕が、マラソンの応援で感じた魔法」

2026年2月20日

写真:軍記ひろし、本人提供

写真:軍記ひろし、本人提供


1990年代に「EAST END×YURI」として「DA.YO.NE」などのヒット曲でブレイクし、現在はギターを弾きながらのラップという独自のスタイルで活動するGAKU-MCさん(55歳)。コロナ禍でランニングを始め、2022年に初マラソンを完走して以来、ランニングライフを満喫。フルマラソンでの応援体験が、30年間の表現活動では気づかなかった「言葉と身体の関係」を教えてくれたという。


ライブ中止のモヤモヤが生んだ、「人生初フルマラソン」

僕がランニングを始めたのは、コロナ禍がきっかけでした。ライブが次々とキャンセルになり、何ともいえないモヤモヤした気持ちを抱えていた時期のことです。もともと20代からサッカーチームを作って、30年近く週2回のペースで続けていました。基本的な体力作りはできていたのですが、コロナでサッカーもままならない状況になって。そんなときに、フルマラソンという新たな挑戦が目の前に現れました。

初マラソンは、2022年の水戸黄門漫遊マラソン。練習としては30km走を1回、大会前3か月間の月間走行距離は80km程度。今考えると80kmはだいぶ少ないですが、当時は「一生懸命やったな」という思いでした。結果は4時間57分での完走、もちろん自己新記録です(笑)。


「無理やりやらされた方が楽だな…」自分が試される42.195km

初フルマラソンを走った多くのランナーが体験すると思うのですが、フィニッシュした瞬間の充実感は、今でも忘れられません。こんなにきついスポーツをしたのは記憶になかったですし、やめようと思ったらいつでもやめられるっていう状況がずっと自分を試されているようで、「無理やりやらされた方が楽だな…」とも思いました。逆に、いつでもやめられるなかで42.195kmを走り切るという“精神性”のようなものにも慄きました。

水戸では、何人かの仲間と走ったんですけど、その人たちがいなかったら僕はゴールできなかったかもしれない。30kmぐらいまでは「いつやめよう、いつやめよう」と思っていましたし、「ここでやめたい、やめる」って言ってしまったら「カッコ悪いな」とか、きつい顔して粘っている人をみて「負けたくない」みたいな、いろんな感情が毎秒を襲ってくる。あの感じは、本当に新鮮でした。

水戸黄門漫遊マラソンで初フル完走の笑顔


伴走者は「サスペンス小説」ラッパーなのに音楽は聴けない

走るときは、Audibleで小説を聞いてます。音楽は聴けないんですよね。例えば日本語の歌詞が乗ってる人の曲を聴くと「ああ、なるほど、こういう感じで韻踏んでいくのか」とか「こういう展開か」とか変に頭を使いだすし、全然楽しくない。聴く小説のジャンルは、殺人事件とかのサスペンスものです。一冊9時間から11時間ぐらいの作品が多いんですけど、続きが気になるので、走ることが全然苦じゃなくなりました。

そんな感じで週4ぐらい習慣的に走るようになって、月間の走行距離は150~200kmくらい。サブフォーも見えてきました。とにかくご飯が毎日美味しくなりましたね。あと、一番変わったのは妻との会話です。子どもが3人いるんですけど、タイミングが合わずゆっくり話をする時間がなかったりすると、一緒に走るようになりました。子どもの塾の話とか、最近の家族会議はしばしば走りながらという感じです。


「打ち上げとホテルしか覚えてない」ツアーを変えた100kmチャレンジ

仕事でも、ランニングによって変化が生まれています。2025年から始めたのが、全国10ヶ所を巡る約3週間の弾き語りツアー中に、それぞれの土地を合計100km走る音楽旅「独ガクツアー」です。もともとキャンピングカーに機材と生活用品を詰めこんで全国ツアーをしていたのですが、それにランニングを加えました。

きっかけは、全国でライブをしているのにステージと打ち上げとホテルの部屋しか記憶に残っていなかったことです。自ら運転して移動したり、自分の脚で走ったりすることで海や田園風景など、その土地の魅力を感じられる素晴らしい機会になっています。唯一のネックは、地元の銭湯を見つけられないと汗の匂いが大ごとになることですね(笑)。

今年は前回から111%アップの111kmを宣言し、経過をSNSで発信「ランニングは努力を数字で表しやすいのも魅力です」


「頑張れ!」に代わる言葉は、「頑張れ!」だった

走り出したことでの一番大きな変化は、言葉に対する感度が変わったことです。ラッパー、ミュージシャン、小説家として30年に渡って言葉での表現をしてきたので、いい言葉があったらメモをしてきて、それはもう何十年分のリストになっています。そんな中で、一番ポピュラーな励ましの言葉である「頑張れ」が、ずっと押しつけがましいように感じていて「頑張れに代わる言葉って、何だろう?」と長年探していたんです。

そんな中で、水戸黄門漫遊マラソンで初めて大会を走ったわけですが、沿道からは最初から最後まで「頑張れ!」って言われるわけです。心身が元気だった序盤は「言われなくても頑張ってるよ!」と思っていたんですけど、30kmを超えて本当に疲労困憊していたとき、現地の子どもたちが太鼓をバンバン叩きながら言ってくれた「頑張れ!」は魔法のように全身に沁みて、「この頑張れは、理屈では説明できない素晴らしいパワーワードだな」と感じたんです。

でも、仕事とかで努力しているのに上手くいかないことがあったとき「あんた頑張れよ」って言われたら「十分頑張ってますけどね!」みたいになるじゃないですか。言葉って生き物で、自分の状態によって伝わる意味が全然違う。マラソン大会で応援を受けた体験は、表現をするうえでの新鮮な気づきを僕に与えてくれました。走り始めたことで、こういう言葉と身体の関係、受け手の状態によって同じ言葉が全く異なる意味を持っていく不思議さについて、より考察をしていくようになりました。そんな気づきを書籍にもしました。

僕自身、年齢を重ねたり、子どもが生まれたり、人生にはいろんなステージがある中で「走ったらいいことばかり」だと感じています。どんな距離でも、どんな速度でも、走ることは楽しめる。唯一の試練は、家を出るまでの葛藤ですかね。ドアを開けるまでが勝負。ドアを開けたら、人生もう勝ちです(笑)。


走ることで再発見した「言葉の力」を一冊に
『人生で後悔しないために読んでおきたい88の言葉』
(すばる舎刊・本体価格1600円+税)

人生で後悔しないために読んでおきたい88の言葉

GAKU-MCさんによる「やる気」と「行動力」が湧き出るメッセージ。挑戦したいけど一歩が踏み出せないとき、自分の軸を見失いそうなとき、失敗が怖いとき、人間関係に心が疲れたとき――さまざまな瞬間に寄り添い、前へと導くメッセージ。「調子が悪い日は、まずは寝る。そして走る」など、ランナーとしての体験を交えた言葉も収録。



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ロンドンで人類初の2時間切りが誕生!
「驚異的ペースアップの裏側」

4月26日に開催されたロンドンマラソンで、ケニアのセバスチャン・サウェ選手が1時間59分30秒をマークし人類初のフルマラソン2時間切りを達成しました。この記録が実現した背景について、筑波大学の鍋倉賢治先生が科学的見地から分析。今後の記録更新に向けての注目点についても言及しています。また瀬古利彦さん、藤原新さん、吉田響選手ら識者もコメントを寄せました。

第22回全日本マラソンランキング

2025年4月から2026年3月の1年間、日本国内で開催されたフルマラソンの各種データをまとめた「全日本マラソンランキング」。対象大会数は108大会で過去最多でした(前年度92大会)。メインのコンテンツの「フルマラソン1歳刻みランキング」は各年齢上位100位を掲載。本誌に掲載の、ランキングで誕生した記録やストーリーをピックアップする「偉大な記録からほんわかストーリーまで 全日本マラソンランキングトピックス×18」特集も合わせてお読みください。

週一スピード走は月間走行距離100km増と同効果!
& プレイバックRUNNERS Since1976「継続できるスピード走」

今年、ボストンマラソンの参加者(2022年)を対象にしたトレーニング調査の結果が報告されました。それは「レース記録は、走行距離に加え “スピード練習の回数” と強く関連している」というもの。この研究を踏まえて、兵庫県立大学の森寿仁先生が春先からスピード走を実践することの有効性を解説します。



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