ニュース・記事
ランナーズonline
「追い込まない」でサブ3.5は可能? 2人の実例を専門家が検証(後編)
|
苦しい練習をせずにサブ3.5ができたランナーの事例を紹介 |
月刊ランナーズではこれまで何度もフルマラソン3時間30分を切る方法を特集してきました。2024年の調査では月間走行距離が通常200km、走り込み期が250kmで、ロング走やスピード走を取り入れたという傾向が明らかになっています。一方、本記事の前編では「追い込まない」トレーニングで3時間30分を切ったランナーを紹介しました。
後編ではその取り組みについて専門家に解説・分析していただきました。
福澤潔コーチ(ミズノランニングクラブ監督)
「『追い込まない』とは楽な練習ではなく、強度を抑えること」
私はミズノランニングクラブのペースアドバイザーとしてたくさんのランナーをサブスリーに導いてきました。また、自分でも福岡国際マラソンに10回出場しています。その経験から「追い込まない」トレーニングを推奨し、津軽さんと岩佐さんにもそのようなアドバイスをしました。
「追い込まない」という言い方をすると、楽な練習だけをやっている、というふうに受け取られることがあるのですが、実際はそうではありません。強度を抑えているだけで、コンスタントに10~15km走ったり、1kmを余裕のあるペースで3~5本走る日を設けたりすることで、無理なく練習が継続できます。毎日ゆっくり走ればいいのではなく、快調なペースで走る日も2割程度は入れることが大事なのです。
津軽さんはトラックで走る日があり、岩佐さんもただゆっくり走っているわけでなく、快調に感じるペースで走っているそうです。
藤牧利昭先生(ランニング学会副理事長)
「追い込まない範囲での速い動きはエコノミー向上に寄与する」
ある程度練習している市民ランナーは、フルマラソンを走るために必要な有酸素能力や脚筋力そのものは、すでにある程度備わっているケースも多いと思います。その上で重要になるのがランニングエコノミーです。有酸素能力を10%向上させるのは簡単ではありませんが、フォームや動きの質を見直すことで、ランニングエコノミーを10%、20%改善することは、決して不可能な話ではありません。
日本では『走った距離は裏切らない』という考え方が根強く、結果的にランニングエコノミーが軽視されがちでしたが、力まず、追い込まない範囲での比較的速い動きは、フォームの改善につながり、エコノミー向上に寄与します。
また、津軽さんは月に1~2回ヨガや体幹トレーニングを取り入れているそうですし、低強度のランニングで効率の良い呼吸を身につけたりすることも、エコノミー改善という意味では有効です。
ゼーハーするような練習は達成感があるので、『これをやったから自分は強くなったんじゃないか』という感覚になりやすいですが、アネロビック(無酸素性)な走りを繰り返していると、本来は楽に走れるペースでもアネロビックなエネルギーが動員されやすくなってしまう場合もあります。重要なのは最大酸素摂取量よりもLT(乳酸性作業閾値)付近の強度で安定して走り続けられるかどうかです。
サブ3.5であれば、『追い込まないトレーニング』でもフルマラソンに必要な力は十分に養えると思います。私は2019年に「高強度トレーニングを重視しない市民ランナーの42年間 12万キロのトレーニングとマラソン成績(事例報告)」という論文を執筆しました。岩佐さんや津軽さんもその方と同様に、自分にとって無理のないペースでLTの刺激を取り入れているのだと考えられます。
鍋倉賢治先生(筑波大学教授)
「年齢や背景が違えばトレーニングの最適な形も変わる」
津軽さんと岩佐さんは「追い込まない」という共通点はありますが、トレーニングの形はかなり違います。津軽さんの場合は、9月後半からは週に1回以上、必ず20kmを超える練習をしていて、レース前の2カ月間はきちんと月間200kmを走っています。内容としても、マラソンペースを意識した練習が入っていて、レース前には負荷をかけ、最後の2週間はしっかりと落としています。オフシーズンの落とし方やテーパリングも含めて、全体としてはメリハリのある構成だと思いました。3時間半前後の記録を狙える練習内容になっています。
一方の岩佐さんは、強い負荷をかけ続けるよりも、毎日コンスタントに同じ程度のジョグを続けるというやり方を選んでいます。若い人のトレーニングとは全く違いますが、その人の年齢やこれまでの経験を考えると、無理のない強度で継続している点は、その人にマッチしたやり方なのだと感じます。年齢を考え、長年走ってきた中で身につけた、ご本人なりの知恵だと思います。
トレーニングは月間走行距離や練習の回数などの数字で判断されがちですが、それだけで正しい評価はできません。走る距離が少なくても、日常生活の中で歩く量が多かったり、津軽さんのようにジムで筋トレやヨガなどをしている場合もあります。そうしたものを含めて、その人の「運動量」を見ていく必要があります。
また、走行距離が少なくても、レースに出ていれば、それ自体が一つの刺激になります。
同じ『追い込まない』でも、その中身は人によって全く違いますし、年齢や背景が違えば最適な形も変わってきます。2人の事例は、その違いがはっきり表れているケースだと感じました。
※こちらから記事検索ができます。

ランナーズ10月号 8月21日発売!
「走りたい」気持ちを駆り立てる厚底シューズ
ショップ店員が勧める注目の14足
「マラソン2時間切り」を掲げて2017年にナイキが初めて発売した厚底カーボンシューズは近年、速いランナーだけの “特別な存在” ではなくなってきています。本特集では幅広いランナーに厚底カーボンを勧める識者や愛用するランナーの声を紹介するとともに、ショップ店員が勧める注目厚底カーボンシューズ×14を掲載します。
本気で燃え尽きれば50代サブ3.5は必ずできる!
「本気で取り組めば、50代サブ3.5はかなりの確率で可能」。本企画では、一人のランナーの実話を通して50歳を超えてから初のサブ3.5をするためのヒントを紹介します。あわせて、「50代に必須の筋トレ」「スピード走&レース出場」など、走力を向上させたい50代ランナーにお勧めのトレーニングを本誌50年分から厳選して紹介します。
ランニング界に “元気” をもたらす
「走るZ世代」増加中!
いま、若者たちの間でランニングが新しいカルチャーになりつつあります。スマートフォンやSNSとともに育ち、青春時代にコロナ禍による活動制限も経験した世代。彼らはなぜ走り始めたのか。そしてランニングに何を求めているのか。データと現場取材を通して「走るZ世代」のリアルに迫ります。
本誌購入は年会費7,800円「ランナーズ+メンバーズ」がお勧め!
「ランナーズ+メンバーズ」は毎月最新号が自宅に届く(定期購読)だけでなく、「デジタルで最新号&2011年1月号以降が読み放題」「TATTAサタデーランが年間走り放題」「会員限定動画&コラム閲覧可」のサブスクリプションサービス! 年会費7,800円の超お得なプランです。



