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元ゴールドマンサックス投資部門日本共同統括・田中渓さん「ランニングも投資もほとんど同じ哲学」
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写真/軍記ひろし |
月刊ランナーズで好評連載中の「トップランナーのビジネス×ランニング」。企業の経営者や組織のトップに立つ人にランニング実践者は多く、そんな “トップランナー” にとって走ることはビジネスにどんな影響を与えているのかをインタビューする連載です。発売中の7月号に登場するのは元ゴールドマン・サックス投資部門日本共同統括で投資家の田中渓さん(42歳)。ゴールドマン・サックス時代のエピソードや朝3時45分から25km走る日常の話など幅広く語っていただきました。今回はその一部をご紹介します。
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――昨年刊行された著書、堀江貴文さんやひろゆきさんと対談されたYouTubeも拝見しました。まず経歴を簡単にお聞かせいただけますか。
「2007年にゴールドマン・サックスへ新卒で入社し、会社を自分たちのお金で買収したり、不動産や不良債権を買ったりするような、少し特殊な部署でキャリアをスタートしました。しかし、入ってすぐに金融危機が起こって在籍部署の9割ぐらいが人員削減され、自分もいつリストラされるのかわからない中、2、3年を過ごしました。それでも結局、投資部門で500件以上の案件に携わり60件以上の投資案件を実行し、投資規模は投資金額ベースで約4000億円、企業価値、資産価値ベースで1.2兆円を超えました。17年間同社に在籍し、最終的には投資部門の日本共同統括を務め、昨年退職しました。今は独立し、少数精鋭のチームで投資業をやっています」
――ゴールドマン・サックス社では具体的にはどんな投資を手がけたのでしょうか。お話できる範囲で具体的なエピソードなどはありますか。
「やはり星野リゾートの件がわかりやすいと思います。星野家は元々、軽井沢で温泉と旅館を由緒正しくやっていました。この星野兄弟は、お兄さんはアメリカのコーネル大学でホテル経営を学び、弟さんは財務に強い。そして、自分たちの星野家だけではなく、バブルの遺産のように放置されてきた世の中の旅館やホテルを再生したいという思いを持っていました。ただ、それにはお金が必要。一方、私たちも日本には埋もれた遺産が多数あることは認識し、再生をしたかったのですが、やってくれる人がいなかった。彼らは技術はあるけどお金がない、僕らはお金があるけど技術がない。お互いのニーズが合って手を組み、我々は破綻した旅館やホテルなどを買い集め、星野さんに次々再生していただきました」
――ランニングはどういうキッカケで始めたのですか。
「社会人1年目は、毎日深夜まで働き、晩ご飯を食べた後の夜中に夜食と称してお弁当を食べ、仕事後の朝3、4時から飲みに行く生活でした。そうしたら、3カ月程で15kgも太りました。すると2年目にリーマンショックが起き、次々と人がリストラされ、苦しい精神状態に追い込まれました。ただ仕事もないので、余り時間で何となく会社のジムで走り始めたんです。初日は1kmくらい。すると、その夜の寝つきが良くなって。徐々に距離を伸ばし、意外とすぐに5km、10kmと走れるようになりました」
――何かを変えなきゃという気持ちがあったのでしょうか。
「仕事って若いうちは失敗しても成長するからいいんですが、管理職側になると、やったことに対して結果が返ってこないことが増えてストレスが溜まってくるんです。その点、ランニングは走った分、如実に結果を返してくれます。1km走れたら、すぐに倍の2kmも走れるようになる。2kmいければ、4、5kmも走るのも難しくない。行き詰っている仕事に対し、走ることは努力を裏切らない。これは心理的にすごく気持ちいいプロセスでした」
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ゴールドマン・サックス時代に富裕層の哲学や思考、習慣などについて学んだことを伝える著書『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』(徳間書店)の中でも自身のランニングについて語っている |
――初フルを3時間44分で完走し、次のホノルルを3時間28分で走った後、トライアスロンや100kmウルトラ、100km超のトレイルも走り、砂漠レースではチーム戦で優勝まで。フルマラソンの方は、縁遠くなったのですか。
「いえ、その間もサブスリーのことはずっと引っかかっていて、これはヤバイ、取り憑かれると思いつつ、とりあえずできることは一通り試しました。サブスリー用の練習プランから、シューズ、インソール、フォームもこだわり、サプリ、食事、呼吸法のトレーニングも全部やって。思い立ってから3カ月で別府大分と静岡に出たのですが、ちょっと間に合わず、どちらも3時間0分台。翌年は、2時間50分切りぐらいを狙わないとダメだという思いで練習を重ね、19年の東京マラソンで2時間55分57秒を出しました」
――練習は毎朝3時45分からやっていると聞きました。
「この習慣を始めたのは子どもが3歳の頃。誰にも迷惑がかからない時間はここしかないと。毎日3時間ほど練習し、7時前に全部終わらせます。トレーニングは、1日おきにラン、バイク、ラン、スイムというサイクルで、走る時は25kmくらい。1日で1番大変な作業がトレーニングで、それが朝7時には全部終わっていると、すごく気が楽になります。月間走行距離は400kmほど、ピークの時は700kmでした」
――ランニングが投資の仕事に生きたことはありますか。
「すごくあると思います。特にマラソンでは、どこまで決めたことを守るかも勝負ですよね。投資も同じで、相場は揺れ動くし、心を揺さぶるイベントがたくさんあります。そこで自己規律を持ち、株が下がっても待つとか、逆に一旦損切りをして出直しするとか、判断する必要があります。マラソンも、きつい中で42.195kmを紡ぐ勝負で、ベストならこう、最低でもこのラインで行くとシナリオを描きますよね。ダメなのはやめてしまうこと。ランニングも投資もほとんど同じ哲学で成り立っているんです」
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