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金哲彦(ランニングコーチ)&小川孔輔(経営学者)「経済的視点で考えるハーフマラソン活性案」
写真/小野口健太 |
ランナーズ5月号(発売中)ではハーフマラソンを特集しています。
コロナ前まで年間20以上のハーフに出場していた経営学者の小川孔輔教授(70歳)と、レースアドバイザーを務める金哲彦さん(58歳)がハーフマラソンを活性化するためのポイントを語り合いました。
大会のコンセプトを明確にすることが大切
小川 私はハーフマラソンが大好きなので今日、お話しできるのを楽しみにしていました。金さんは様々なレースのアドバイザーを務めていらっしゃいますね。その中にはハーフも含まれていますか?
金 はい、たとえば2020年に日本記録(ヤクルトの小椋裕介選手が1時間0秒)が出た丸亀国際ハーフは、大会をリニューアルした2008年から携わっています。丸亀国際は元々エリートのみで開催されていたのですが、「市民参加型にする」という話が出たタイミングで、お声がけいただきました。それまでゲストとして大会に参加することはあったのですが、アドバイザーという形で、大会の中身を主催者の方々と一緒に考えるようになったのがこの頃です。
小川 どのようにエリートから市民参加型のレースにするかのアドバイスをしたわけですよね? 重責のように感じます。
金 いわゆるマーケティングですね。丸亀は近隣地域からどれくらいの時間で来られるのか?アクセスは?同日や近い時期はどんな大会が開催されているか?といったデータを調べた上で、どのような層に参加してもらうかのターゲットを定めました。制限時間を3時間に延ばし、ポスターやHPのビジュアルは「市民ランナーが参加ハードルの高さを感じない」けど「エリート選手が緩すぎる、という気持ちを抱かない」ことを考慮。あとは事前駐車券を配布したり、カーブが減るコースに変更したり……ランナー目線に立ったリニューアルを行ってきました。
小川 日本でたくさんのエリート選手と市民ランナーが出場するハーフは、丸亀国際くらいしか思い浮かびません。
金 はい、ある年は『WR(世界記録)から3時間まで。トップアスリートと5000人のランナーが織りなすドラマへようこそ』という大会キャッチコピーをつけました。
小川 そもそも私がハーフを好きになったキッカケは初マラソン(ホノルル)で5時間30分かかって「まずはハーフをしっかり走ろう」と思ったことです。それから旅をかねて各地のハーフに出場するようになり、47都道府県のレースを走破しました。私は寝台列車など、いろいろな電車に乗って各地のレースに出ることを楽しんでいるので、ランナーズ読者の方々にはコロナが落ち着いたタイミングで「ハーフ出場の旅」をお勧めしたい。主催者にはそれに応える大会を作っていただきたいです。
金 フルマラソンは「記録を狙う」「歩かずに完走する」といった、ややストイックなメンタリティを持って取り組む人が多いですが、ハーフに関しては〝ウェルネス〟の延長と捉えた大会を作ってもよいのではないかと思っています。たとえば21.0975kmのコースで「リレー」ができたり、親子で走る部門があったり、レース後にBBQが楽しめたり。
小川 なるほど、それにはやはり大会のコンセプトを明確にすることが大切ですよね。
金 たとえば天童ラ・フランスマラソンは「ラ・フランス出荷量№1をPRする」という目的が明確なので、走る以外でどのようなサービスをつけるかが自ずと見えてきて、「ラ・フランス食べ放題」が名物です。
小川 私が出場した中で印象深いのは、愛媛県の坊ちゃんランランランです。「前座」としてスタート前にマドンナと坊ちゃんの恰好をした二人が、参加者の前を駆け抜けていくのですが結局、地域が大会を通して何を訴えかけたいかではないでしょうか。
金 長野県の小布施見にマラソンは坂が多くて走りにくい部分が多々あるのですが、「景色を見てもらう」ことを優先にしているので、「タイムが出やすい」ことは完全度外視。一律に「なるべく坂がない」「涼しい時期に開催」とするのではなく、目的を定めて、地域の文化にどうマラソンをインクルードしていくかがポイントだと考えています。
金哲彦
プロランニングコーチ。早稲田大学時代に箱根駅伝5区で活躍。現在はマラソンや駅伝のテレビ解説も務める。
小川孔輔
東京大学卒業、米カリフォルニア大学バークレー校客員研究員などを経て法政大学教授。著書に『青いりんごの物語~ロック・フィールドのサラダ革命~』など。
現在発売中のランナーズ5月号では、金さん小川さんが他にも新たな趣向の大会開催を提案しています。
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