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速くて頭脳派! 俺たち「走る研究室」誌上討論
左から古川大晃さん、近藤秀一さん、三津家貴也さん、オンライン参加:福田裕大さん |
写真の若手ランナーたちは大学や大学院での研究経験を持ち、なおかつ箱根駅伝や全日本大学駅伝、日本選手権に出場している実力派。ウェブ上で「走る研究室」というコミュニティをつくり、ランニングの疑問について科学的見地から定期ディスカッションを行っています。
今回は「走る研究室」の成り立ちやそれぞれの研究分野を聞きました。
科学はランナーの道しるべになる
編集部 まずは「走る研究室」の成り立ちを教えていただけますか?
古川 僕が発起人です。三津家君は高校が同じ熊本県、近藤君は僕が東大に入る時に話を聞かせてもらったり一緒に練習した経験があり、福田君は日本学連選抜チームで一緒に全日本大学駅伝を走ったので、それぞれとは面識がありました。みんな現役のランナーで、大学院などでの研究もしていたので、当初は食事をしながら4人で研究の話をしないかと呼び掛けたんです。
近藤 その話が持ち上がったのが2019年末で、翌年のランニング学会で会えたらいいね、と。でも、コロナで学会が中止になってしまいました。
三津家 じゃあウェブ上で話そうか、という話になって2020年5月からSNSを使って公開ディスカッションをしています。これまでのテーマは「故障やスランプの乗り越え方」「きつさとパフォーマンスの関係」など。ランナーは記録の壁にぶつかることがあると思うのですが、そういった時に「科学」はやり方を見直すための道しるべになります。ただ、科学的な理論を調べられない人もいますし、研究者って情報を発信している人が少ないんです。だったら僕らが発信して、ランナーの方々に役立ててもらえれば、と思っています。
編集部 みなさんの研究はどういった分野なのですか?
三津家 僕はランナーズにも出ている鍋倉賢治先生の研究室で最大酸素摂取量※1やランニングエコノミー※2といった運動生理学を研究していました。
近藤 同じく運動生理学なのですが、三津家君は身体の中で起きていることを呼気ガスから調べているのに対し、僕の場合は乳酸です。
古川 先月号までの連載「東大院生箱根への道」でも書きましたが、人と走るとなぜ楽なのかという「追尾走」を研究しています。
福田 僕は計量統計学が専門でした。また、大学時代からフィットネスやランニングに関するアプリを開発したり、ランナーのコミュニティサイトを立ち上げています。
次回(4月1日)はエリウド・キプチョゲ選手の強さについて語り合った内容を掲載します。
※1 1分間に体内に取り込むことができる最大の酸素量のこと。70ml/kg /分のように、体重1kg 当たりに何mlの酸素が摂取できたかで表される。VO2maxとも呼ばれ、持久力を表す指標として用いられる。
※2 あるスピードで走った時の酸素摂取量のこと。同じスピードで走ってもランナーによって酸素摂取量は異なり、少ない酸素摂取量で走れるほど効率が良い走りと評価できる。
古川大晃
東京大学大学院博士課程1年。九州大学大学院から昨春に東大院へ。2021年箱根駅伝予選会で88位に入り、学生連合メンバーに選ばれた。2月27日の大阪マラソンで2時間17分37秒の自己ベスト
近藤秀一
GMOインターネットグループ所属。東京大学4年時に学生連合で箱根駅伝1区出走。卒業後は実業団に所属しながら大学院での研究を続けた。2020年日本選手権5000m出場。フルマラソン2時間14分13秒(2017東京)
三津家貴也
ランニングコーチ、モデル、体育講師、インフルエンサーなどの活動を行うマルチタレント。高校時代は800mでインターハイ6位。筑波大学大学院を経て社会人になってから800mで日本選手権出場。フルマラソン2時間32分35秒(2021Beyond ※ 非公認レース)
福田裕大
ソフトウェア開発企業経営。
金沢大学在学中は5000mや1万mなどで北信越学生記録を計5回更新し、出雲駅伝、全日本大学駅伝に出場。学生時代からランニング関連のアプリを開発。1万m28分52秒、フルマラソン2時間18分46秒(2021びわ湖)
現在発売中のランナーズ5月号では、他にも厚底シューズの有効性についての誌上討論を掲載しています。
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ランナーズ5月号 3月22日発売!
万国共通「走る力は生きる力」
3月2日に開催された東京マラソンは約3万7000人が出走し、海外からの参加者は約1万7000人。2月24日の大阪マラソンには約3万2000人が参加し、海外からのエントリーは約6000人。世界各国のランナーにあなたにとっての「走る力は生きる力」をインタビューしてわかったことは、言葉や文化が異なっても、ランニングを通じて前向きな人生を切り開いていることは万国共通、ということでした。
40年連続サブスリー達成者に川内優輝がインタビュー
今年2月の別府大分マラソンを2時間59分27秒でフィニッシュし、40年連続サブスリーを達成した日吉一郎さん(当時59歳)に、マラソン2時間20分以内で100回以上走破し、ギネス記録保持者である川内優輝選手がインタビュー。「なぜこれほど長い間継続できたのか」を聞きました。
世界のレジェンドたちに聞いた!
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年齢を重ねても走り続けるレジェンドランナーたちはどのようにして衰えを克服し、マラソンで高いパフォーマンスを維持しているのでしょうか。今号に登場するレジェンドたちの「マイトレーニング」を紹介します。
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