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ランナーズonline

アジア大会女子マラソン銅・矢田選手の走りを専門家が解説「バネの効いた走りでエネルギーロスが少ない」

2026年9月29日

今年の大阪国際女子マラソンで2時間19分57秒をマークした矢田選手(写真中央)写真/塩川真悟

今年の大阪国際女子マラソンで2時間19分57秒をマークした矢田選手(写真中央)
写真/塩川真悟


9月26日、愛知・名古屋2026アジア競技大会の男子・女子マラソンが開催されました。男子は山下一貴選手(三菱重工)が2時間10分49秒で優勝。女子は矢田みくに選手(エディオン)が2時間27分56秒で3位に入り、日本勢が男女ともにメダルを獲得しました。

ランナーズ4月号では、今年1月の大阪国際女子マラソンで初マラソン女子日本最高記録(2時間19分57秒)を樹立した矢田選手の走りを、旭化成時代にトラック1万mで世界選手権出場、98年アジア大会1万m優勝の実績を持ち、現在は研究者としても活動する高尾憲司さん(株式会社ブルーミング代表取締役/神戸医療未来大学講師)が解説。記事を一部編集して紹介します。




私自身も現地で観戦していましたが、特に印象的だったのは、彼女の脚スティフネスの高さ、即ち『バネの効いた走り』です。脚スティフネスとは、接地中に地面から受ける反発に対して、脚が振る舞う「バネ」を指します。
矢田選手は、接地時のエネルギーロスが非常に少なく、上下動の少ない走りでスピードを維持しながら、42.195kmを走り切れる資質を備えていると感じました。

30km以降、ペースメーカーが外れた状況で先頭に立ち、自らレースを引っ張る展開は、初マラソンの選手にとって大きな勇気を要します。多くの場合、この局面ではペースの維持を優先し、無理な判断を避けるのが一般的です。しかしそうした心理的・身体的負荷の高い状況下においても、主体的に先頭を引きながらレースを進めました。

さらに注目すべきは、その後のラップが1kmあたり3分11秒へと明確にペースアップしている点です。これは単なる精神力だけで説明できるものではなく、それまでの30kmにおいて、脚の弾性エネルギー、すなわち『バネ』を過度に消耗することなく走れていた可能性を示唆します。
言い換えれば、効率的な接地と高い脚スティフネスによってエネルギーロスを抑え、終盤においても推進力を発揮できる余力を残していたと考えられます。この終盤でのペースアップは、矢田選手の走動作の合理性と、距離に対する優れた適応能力を象徴する場面だったと言えるでしょう。

私たちの研究では、足関節底屈スティフネスが高い選手ほど5000mの記録が良く、ランニングエコノミー(走りの経済性)とも関係する可能性が示されています※1。

※1 Ueno et al., 2018



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