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ランナーズonline

【連載:バックヤードウルトラ⑯】「20秒」で食事を済ませる選手を支えるサポートクルーの役割

2026年9月24日

2026年8月オーストラリアのClint Eastwood Last One Standingにてテントでサポートを受ける選手の様子(写真/水野倫太郎)

2026年8月オーストラリアのClint Eastwood Last One Standingにてテントでサポートを受ける選手の様子(写真/水野倫太郎)


「1時間で6.7km走る」ことを身体の限界まで繰り返す、バックヤードウルトラという競技をご存知でしょうか。近年国内外ウルトラランナーの間で人気が高まりつつあります。この競技に魅せられて脱サラ、大会に参加するだけでなく自身でも大会を企画、さらには普及活動も行っている水野倫太郎さんがその魅力について綴る連載です。


2026年8月14日、現地時間午前9時。日本人5名(うち1名はオーストラリア在住)を含む約200名のランナーが一斉にスタートし、バックヤードウルトラのレース「Clint Eastwood Last One Standing 2026」が幕を開けました。 会場にはサポートクルーや家族も集まり、総勢約300人の“小さな村”が出現。日本から遠征した櫻庭選手、芳賀選手、吉沢選手、小松選手の4名には、私を含む3名のサポートクルーが帯同しました。

サポートクルーというと、「選手のお手伝い」というイメージがあるかもしれません。しかし実際に経験してみると、「選手と一緒に記録をつくるチームメイト」と捉えた方がしっくりきます。
選手のリクエストに応えるだけでなく、状況を想像して先回りする。疲労や眠気で選手の判断力が落ちてきたら、代わりに選択肢を絞り、行動を促す。ときにはボクシングのセコンドのように、選手を落ち着かせ、励まし、次のスタートラインへ送り出すことも役割です。

今回は選手4名に対して、帯同クルーは3名(加えて、現地在住の方が応援に来てくださる場面も)。芳賀選手、吉沢選手、小松選手の3名を、ゴールドコースト在住のジュンさんと私で分担しました。私自身、サポートクルーは初めて。最初は手探りでしたが、数LAPを重ねるうちに自然と“型”ができていきました。

初日の日中は、選手が6.7kmを終えて戻るたび、コーラやドリンク、ジェル、食事を準備。借りた炊飯器で炊きたてのごはんを出し、暑さ対策にはスーパーで氷を調達して氷嚢を量産しました。汗やかけ水で濡れたウェアの着替えを手伝い、次の周に必要な補給物を持たせる。そして時計を見ながら「あと1分30秒」「30秒前」と声をかけ、スタートへ送り出します。

夜になると、天気予報を確認した上で、防寒着や手袋、雨具をすぐ渡せるよう準備し、張りや痛みが出た選手にはマッサージやアイシング。仮眠に入る選手には耳栓とブランケットを渡し、再スタート3分前に起こします。


2026年8月オーストラリアのClint Eastwood Last One Standingにて小松選手にマッサージをするサポートクルー(写真/水野倫太郎)

2026年8月オーストラリアのClint Eastwood Last One Standingにて小松選手にマッサージをするサポートクルー(写真/水野倫太郎)


さらに30時間を超える頃には、選手の帰着も遅くなります。フィニッシュ地点まで迎えに行き、「食べるか(お茶漬け)、飲むか(コーラ)」と両手を差し出しながら、自分の手で選んでもらいます。テントまでの20秒ほどで補給を済ませてもらい、テント内で1秒でも長く眠れる時間をつくるためです。
ときには愚痴を聞き、ときには冗談を言い合い、「一歩ずついきましょう」「大丈夫です」と背中を押し、ハイタッチで送り出す。心身の両面で、少しでも選手の支えになれば、という一心でした。
もちろん、食料や氷の残量管理(お米は計5㎏ほど、氷は20㎏近くを使用)、追加の買い出し、ご近所のテントとの交流も大切です。そしてクルー自身も、選手を送り出したら30〜40分眠る。

選手もクルーも一丸となって、どうすれば少しでも快適に、そして楽しく長く続けられるか。そんな工夫の積み重ねが、バックヤードの“チーム戦”をつくっていきます。

「選手が走り続けるためには出し惜しみをしない」そんなサポートの末、現地在住の日本人女性を含む日本人5名は、全員が65LAPまで走り、3位タイとなりました。
選手が安全な場所で眠りにつくまで見届けてから、ようやく私も眠りにつくことができました。
この結果をもとに、10月17日から始まるバックヤード国別対抗戦(通称サテライト大会)の日本代表が確定しました。「サテライト大会」とは何なのか。今回の結果、5人全員が同じ65LAPで終えたことにどのように影響したのか。続きは次回、お届けします。



<プロフィール>
みずの・みちたろう
プロウルトラランナー。1995年生まれ。神奈川県秦野市在住。バックヤードウルトラを主戦場に、2024年、2025年、日本代表として世界選手権に出場。自己ベストは 94LAP/約630km。
活動の軸は、走ること・伝えること・つくること。『走るはつなぐ』『共走』をテーマに、「丹沢ループス」「バックヤードウルトラ神奈川大会」等のイベント企画やバックヤードウルトラのドキュメンタリー上映会・ポッドキャスト配信にも精力的に取り組む。2026年は海外バックヤードを転戦中。



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