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あなたは持っている力を発揮しきれていないかもしれない 全て撃退〝失速の落とし穴〟(全3ページ/2ページ目)

2026年10月26日

試行錯誤する努力は素晴らしいです!……が
情報に惑わされていませんか?


山口さんは本当に真面目に取り組んでいらっしゃると感じます。ただ、それが故に疲労を残したままレースに挑んでいる可能性が高いです。ちょっとした考えの転換で様々な「失速の落とし穴」を回避できます。具体的に説明していきます。

①情報に惑わされている
私が感じたのは「情報に惑わされているのでは?」ということです。月間走行距離200㎞を目標に掲げるのは良いですが、未達成を気にしてしまうと心理的にマイナスに働くので、あくまで目安と捉えましょう。

②30㎞走の回数・時期は適切か
30㎞走も「本番3〜4週間前に1回」が絶対ではありません。ロング走に慣れていない人がその時期に行うと疲労が残るケースがあります。それ以前から月1回、ジョグ感覚で行い、最後の30㎞走は1カ月半前に終えてもいいです。

③ 速い動きの練習が不足
インターバルが苦手なら無理にやらなくて大丈夫ですが、速い動きは取り入れた方が良いです。ジョグの後に100m程度の流しを入れてみてください。ストライドが伸び、大きなフォームで走る感覚がつかみやすくなります。

④ 前日観光で身体に負担?
前日の観光は、「猫背で歩く」「荷物を片手だけで持って身体が傾く」「靴紐をゆるめたまま長く歩く」等、小さな身体への負担がじわじわとダメージとなって積み重なります。「姿勢を正して歩く」「荷物を左右均等に持つ」「靴紐をしっかり結ぶ」を意識してください。

⑤ 当日の朝食時間
当日朝の食事の時間も気になります。会場への移動中にとっているということは、少なくとも2時間ほど前まで食べていると思います。そうすると、本来は筋肉を動かすために使いたい血液が消化に利用されてしまいます。山口さんのみぞおちの不快感には、そこが関係している可能性もあります。固形物はスタート4時間前までに食べて、それ以降は食べないことを勧めます。

もう一つ考えられる原因がフォームです。もしみぞおちを支点に上半身をねじるような腕振りになっているなら、内臓が揺さぶられて不快感につながっている可能性があります。先ほどの流しは、速い動きの中で上半身の無駄なねじれを減らすトレーニングにもなります。

⑥ネガティブ思考
「失速するかもしれない」というネガティブ感情はパフォーマンスを低下させます。ポジティブ思考で脳を活性化させましょう。次のレースで弱い気持ちになりかけた時は、私に「我に返れ!」と叱咤激励されているところを想像してみてください(笑)

このように少しトレーニングやレース前の過ごし方を分析するだけでも「失速の落とし穴」に引っかかっていることが分かります。

走り始めて間もない初フルで3時間54分を出せた山口さんは、3時間半切りも可能なポテンシャルをお持ちだと思います。


3週間前から練習量を落とし、3日前に刺激走
➡体重増加と疲労蓄積につながっている可能性


ランナーカルテ


ラーメン店をやっており、練習は昼の休憩時間にジムのトレッドミルで行うことがほとんどです。以前は外を中心に走っていたのですが、今は月間走行距離の約8割がトレッドミルです。

レースに向けては、3週間前になると「レースが近いから」と思い練習量を3割減ほどに落とします。本番3日前にはレースペースより少し速いペースで5㎞の刺激走を実施します。

失速レースは今年の勝田です。当日はスタート約3時間前の7時頃に、前泊のホテルでご飯と味噌汁に加えおかずも食べました。レース後半、水分やジェルを身体が吸収していない感覚がありました。「30㎞の壁」は強く意識している自覚があります。31㎞で失速し、歩いたり走ったりになりました。

【コーチの分析&アドバイス】
お店の営業の合間時間を上手く使って練習に取り組まれているのだと思います。ただトレッドミルはベルトが自動的に動く分、屋外に比べて自分で地面を押さずに走れます。石井さんは練習の8割がトレッドミルということなので、大腿部やお尻を使う力が弱くなっている可能性が考えられます。

もう一つ気になるのが、ラーメンを作る時の姿勢です。想像してみたのですが、長時間立って湯切りをする中で、骨盤が後傾する姿勢がクセになっていませんか?そうであれば、骨盤の位置を意識し、股関節やお尻を使って立つよう意識すれば、トレッドミル練習を補強するエクササイズになります。

石井さんの年齢と走行距離を考えると、慢性的な疲労が溜まっているとは考えにくく、レースに向け練習量を落とす時期が早すぎる可能性があります。走行量を落とす時期が早すぎると、筋肉が過度に緩み、体重が増える原因にもなります。また日頃からスピード走を行っていない場合は、レース3日前の刺激走は疲労を残す可能性があります。直前はジョグに流しを加える程度でよいかもしれません。


夏から秋は月間走行300〜400㎞を継続
➡休養日がなく疲労が抜けていない


ランナーカルテ


基本的に毎日走り、走らない日はほとんどありません。夏〜秋は月間300〜400㎞になります。通勤で約3㎞歩き、仕事の合間には片足立ちの体幹トレーニングをしています。良いと思ったことはすぐに取り入れるようにしています。

レース前も走る回数は減らしません。少しでも走らないと落ち着かないんです。本番前夜は緊張で何度も目が覚めますが、朝は睡眠不足という感覚はなく、むしろ気持ちが高ぶってギラギラしています(笑)。前日の食事は普段と同じ。レース当日の朝食はおにぎり1個と味噌汁かスープです。

筋トレも行い走行距離も足りているはずなのに、なぜ毎回のように25〜30㎞からペースダウンしてしまうのでしょうか。

【コーチの分析&アドバイス】
直井さんは本当に走るのが好きなのだと思います。基本的に毎日走り、月間300㎞以上。それ以外にもたくさん歩き、体幹トレーニングもする。ここまで来ると、直井さんの失速の落とし穴はまず「休養ができていない」です。

強くなるために必要な3つの基本は「運動・栄養・休養」です。走ることだけがトレーニングではありません。休養も立派なトレーニングです。「走らないと落ち着かない」気持ちも分かりますが、「速くなるために休む」という考えに変えてみてほしいです。最近は高機能ウォッチで回復指標も見られるので、休む目安として使ってみてください。30㎞で身体が動かなくなるのは、普段の運動量が多く、慢性的に疲労が抜けていないことが関係している可能性があります。

もう一つ気になるのが前日・当日朝の食事です。この内容ではレースを走り切る燃料が足りず、後半にエネルギー切れを起こしているかもしれません。

大会前だけ急に休むのではなく、普段から回復できるサイクルを作る。〝ギラギラをキラキラに〞変える気持ちで、身体も頭も休ませてください。


心拍数を参考にしながらレース出走
➡過度な数値チェックは心理的障壁になり得る


ランナーカルテ


以前は体感を重視していましたが、最近は練習でもレースでも高機能GPSウォッチの心拍数を確認し、身体の感覚と照らし合わせながら走っています。今年のふくい桜マラソンでは、序盤から心拍が普段より高く暑さも感じていましたが、体感では「走れる」と、目標ペースを維持。ところが30㎞あたりから脚が重くなり、失速しました。今思えば、心拍の変化を見て早めにペースを落とすべきだったと思います。それから半年後のベルリンマラソンでは心拍数を参考にペースを上げ過ぎないことを意識しましたが、38㎞頃から大きくペースが落ちました。

少ない練習量で最大の効果を狙うことを重視しており、乳酸閾値やAI分析も参考にしながら日々のトレーニングに取り組んでいます。

【コーチの分析&アドバイス】
高野さんは、速くなるために最新ツールを積極的に取り入れていて、とても意識が高い方なのだと感じます。ただ、レース中に心拍数を意識し過ぎると、高い数値を見て「今日はきつい」とネガティブになったり、ペースを落とす理由になったりして、心理的障壁の一因になっていないか、というのが私の見解です。

レース中の心拍数を目安としてチェックするのは良いと思いますが、神経質になりすぎないよう気を付けてください。個人的には、走り終わってから結果を分析するために使うことをお勧めします。

30㎞以降に脚が重くなり、心拍が下がらないのにペースを保てなかったことから、筋力不足の可能性も考えられます。筋トレを取り入れることも考えてみてはいかがでしょうか。筋トレは「少ない走行距離で最大の効果を狙う」という考えにも合致します。


「失速の落とし穴」を全て回避できたら?
サブフォー達成への理想のストーリー


「失速の落とし穴」を避けてレース本番を迎えたら走りはどう変わるのか? 山口さんの理想のレースを覗いてみよう(編集部作成によるフィクションです)。


イラスト

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1カ月前 
森田コーチの助言を受け、取り組みを全面的に見直した。30㎞走は3カ月前から月1回、ジョグ感覚で実施。回を重ねるごとに距離に慣れた感覚があり、最後の30㎞走の後も数日で疲労が抜けた。ジョグの後に流しを入れることも習慣化。スピードを出すと大きなフォームで走れ、爽快な気持ちになる。腕振りのフォームも以前と変わったような感覚をつかみつつある。

ランニングに関する情報収集は変わらず続けているが、レース3カ月前を切ってからは新しい手法に飛びつくことはせず、気になった情報はとりあえず保存だけして一旦忘れることにする。今は「これでいく」と決めたものを信じて本番に臨むのみ。

前日
今回のレースも遠征。せっかくなので前日、少し観光。最小限の荷物をリュックに入れ、靴紐をしっかり締め、背筋を伸ばし歩く。今日は走らず、この観光ウォークでほどよく身体を動かす。

当日
いよいよ当日。これまでより少し早起きし、スタート4時間前におにぎりとバナナをしっかりとる。会場で30分前にジェルを補給し、いよいよスタート。

この3カ月の取り組みを信じて集中していると、あっという間にハーフ通過。30㎞を過ぎても、みぞおちの不快感はない。35㎞、「失速」という言葉が頭をよぎりかけたが、すぐさま捨て去る。「我に返れ!」――森田コーチの言葉を思い出すと、思考は一気にポジティブに。一歩も歩かずにフィニッシュゲートをくぐると、タイマーは3時間58分台を指していた。






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