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ランナーズonline

鏑木毅 55歳からの挑戦「深夜の森で見知らぬランナーに誘われ生涯忘れられない絶景に出会った」

2026年10月13日

※本記事は『ランナーズ2026年10月号』掲載内容になります。(全1ページ/1ページ目)

7月3日~4日 ケベック・メガトレイル(134㎞、カナダ)

プロトレイルランナーの鏑木毅さん(57歳)が、55歳から始めた還暦でのグランカナリア・ワールドトレイルメジャーズ
全大会制覇を目指す挑戦記。7戦目は7月にカナダで開催されたケベック・メガトレイルです。


ケベック・メガトレイル

写真/大会事務局、World Trail Majors


還暦までに、ワールドトレイルメジャーズを走破することを目指している私の挑戦も7戦目に入った。今回の舞台はカナダのケベック・メガトレイル(距離134㎞、獲得標高6000m)。
ケベック州は日本の4倍以上という広大な面積を誇り、公用語がフランス語という北米では極めて珍しい地だ。実際訪れるとヨーロッパの街並みの州都ケベックシティなど、北米とは思えない趣がある。
レースは世界有数の水量を誇るセント・ローレンス川沿いの小さな街ベイサンポールを午後8時にスタートする。欧米のロングトレイルレースでは、運営上のリスク回避として選手の身体が元気なうちに最初の夜を越してもらうために、このように夜間スタートの大会が多い。
ケベックと日本の時差は13時間あり、私はスタート直前まで寝ていたこともあるが、日本時間では朝9時に相当するためか夜間の眠気はなく、序盤は快調に進んだ。
いつも思うことだが、欧米でのロングレースではむしろ時差ぼけ状態の方が有利に働くと思い、レース直前に現地に入ることが多い。今回も2日前の現地入りがここまでは功を奏した。
コースの舞台となる山々は、セント・ローレンス川北側に約2000㎞にわたり横たわるローレンシャン山地の一部、ベイサンポールからボープレまでのワンウェイの134㎞。この山地を縦断する「メープル街道」は世界一の紅葉が堪能できることでも有名で、コースも落葉広葉樹の美しい森を進む。


「日本から来てこの景色を見ず帰るわけにはいかないだろう」

深夜の森で、「日本から来たの?」と私のゼッケンの日の丸をみて声をかけてきた男性ランナーがいた。それをキッカケに彼と時折会話をしながら進んだ。
明け方、森が明るくなりはじめたころ突然、前を行くその彼がコースを外れ、そして後ろを振り向き私を手招きした。訝しく思ったが彼についていくと、突然視界が開け、朝焼けに輝くセント・ローレンス川の絶景が眼前に広がった。
「日本から来てこの景色を見ないで帰るわけにはいかないだろう」と彼は笑った。彼のおかげで、生涯忘れられない絶景に出会えた。
その後会うことはなかったが、彼は無事に完走できたのだろうか。






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