ニュース・記事
ランナーズonline
シューズ1足で4500km! いいのわたるさんが豪州横断で戦ったもの
|
菅笠を片手にナラボー平原を走る |
2023年6月から「世界五大陸走破」に挑戦しているいいのわたるさん(46歳)が、次の「アフリカ大陸編」に向けたクラウドファンディングを11月4日まで実施しています。昨年は、北米と南米に続く第3ステージであるオーストラリア大陸4500kmを4カ月かけて横断しました。その旅の様子を綴ったランナーズ7月号掲載のレポートを掲載します。
前人未到の五大陸走破を目指す『Trans Atlas Running』も3章目のオーストラリア大陸に突入しました。距離4500km。他の大陸が全て1万km以上であることに比べると、中休み(?)的な存在ではありますが、それでも1日70km走って休みを入れると4カ月かかります。
ん? 4カ月? 観光ビザが最長90日だから……足りないじゃん! 前回、南米ペルーで同じことが起きて、一度別の国に移動して、戻ってくればリセットされ、また90日滞在できる……なんて話を聞き、呑気に構えていたらそんなことはなかったので今回はヒヤヒヤ。現地の方に情報をもらいながら2025年8月にスタートしました。
南半球なので冬~春の季節になります。選んだコースは西オーストラリアを代表する大都市のパースから海岸線ルートを通って東のシドニーまでです。初日は知り合った現地の方々と一緒に走ったものの、大雨で7kmにて終了。1日70kmの目標がのっけから崩れ、しかも風邪を引き、鼻水が止まらずじまい。いずれ思うように進まない壁が来るだろうとは予想していましたが、初日だったとは……。
逆に、一度この壁を越えれば気持ちも平坦になるとポジティブに思い、脚だけはまだまだ元気なので翌日からは遅くても確実に70kmを続けられるペースで走り、パースの背中にさよならを言っていよいよ一人旅が始まりました。
オーストラリア大陸はその広大な国土の0.5%にのみ人口の多くが住んでいるため、シティーボーイ(笑)の自分にとっては、この上なく人が恋しくなります。大陸の西側は荒涼としているナラボー平原が東西1200kmも広がり、まるで茶色の世界が2カ月続きました。
ほぼ全域で乾燥しているため、数年前に虹の橋を渡ったカンガルーたちが土に還らずミイラ化しているのを数kmごとに見かけます。まるでバイオハザード(※ゾンビや生物兵器と戦うホラーアクションゲーム)の世界です。厄介なのはそれに群がるハエ。唯一の天敵は鳥なのですが、ハエの繁殖の方が圧倒的に上回っており、走っていても終始追いかけてきて目や鼻など水分のあるところを目がけて入り込んできます。『フライネット』と呼ばれる養蜂場で使うような顔を覆うネットが必須で、ネットを被って菅笠持って70km走っているアジア人なんて客観的に見たらさぞかし滑稽でしょう。
カンガルーと追いかけっこ
幸いなことに、今回の大陸は治安が比較的良く、大きなトラブルはありませんでした。道中はワーキングホリデーで来ている宿のスタッフにご馳走してもらったり、長距離ドライバーに食べ物をいただいたり、途中で遭遇したチャリ旅人と同じ宿に泊まって意気投合したりと、良い経験が多かったです。
一番印象に残ったのは、道中車でキャンプ旅をしていた50代くらいの紳士との一期一会の出会いです。数週間後にとある宿に泊まろうとチェックインをした際、先を進んでいたその紳士が、僕が泊まるであろうことを想定して(旅人の宿は大抵決まっている)、食事代を置いていってくれたのです! 当然、僕が到着する頃にはずっと先に進んでしまっていたため、目一杯の感謝のメールを送りました。あんな粋な紳士のように自分もなっているか過去を振り返りながら、いよいよオーストラリアの東側に入ってきました。
東側は緑豊かで、生きた動物をよく見かけます。カンガルーやエミューと追いかけっこしたり(全然追いつけない)、ベビーワラビーにエサをあげたら手をつかまれて離してくれなかったりと、オーストラリアならではの体験もしてきました。
この辺りになってくると山も多くなり、起伏ある道が続きます。そして、この大陸で最高峰のコジオスコ山(標高2228m)も通過しました。無事に大陸横断を果たした後、この山周辺で行われる100マイルのトレイルレースに自分へのご褒美として出てきました(もちろんその時は車で行きました)。
今回のゴールであるシドニーでは、近年ランニングブームを迎えているようで、いくつものランニングコミュニティがあり、その中の日本人チームと知り合い、20名ほどのメンバーとともにラストランをしてオペラハウスでフィニッシュ。トータル100日間4500kmの旅となりました。今回は苦しみながらもなんとか1足のシューズのみで達成。カーボンプレートが削れ、底に穴が開いてまるで軽量化ミニ四駆(古い!)のようになってしまいました。
まだまだ引き出しはたくさんありますが、今回はここまで。次のアフリカ大陸に向けて準備をして10月にあちこちでトークイベントを開催しますので、お時間がありましたらぜひお越しください!そうそう、ビザ期限切れのハナシ。結局ニュージーランドに一旦移動して戻ってきたら、90日滞在が復活しました。国やイミグレ審査官によるので、読者の皆さんが渡航される際はぜひ大使館などにご確認ください。
|
|---|
飯野 航さん
自動車設計技師としてドイツ駐在中だった30歳の時、ダイエットのために走り始める。2014年、15年チャレンジ富士五湖、17年BadWater135など国内外のウルトラマラソンで優勝。現在はスポーツウエアや和菓子事業を手掛ける会社に所属。1979年生まれ、東京都出身。
アメリカ大陸編のレポートはこちら
⇒ いいのわたるの「北米縦断記」前編 600km走ったアラスカで出会ったものは?
⇒ いいのわたるの「北米縦断記」後編 毎日70~80km走ると人間はどうなる?
⇒ いいのわたるの壮絶体験 標高3000m以上を毎日70km! ホテルで失神した南米1万1000km走破
※こちらから記事検索ができます。

ランナーズ11月号 9月24日発売!
神野大地コーチ(元・山の神)が教える
「マラソン、勝負の2カ月間」
「マラソンで結果を出すには2カ月前からが勝負」と語るのは、「3代目山の神」として知られ、実業団MABP マーヴェリックの選手兼監督を務めながら市民ランナーの指導も行う神野大地さん。11月〜12月のフルマラソンに出場するランナーに向け、本命レースでベストな走りを引き出すトレーニング法を伝授します。
走り込みの秋到来! 100kmでマラソン完走・200kmでサブフォー
「マラソンを完走するなら月間300km」という定説に対し、本誌がこれまでに度々提案しているのが「月間100kmでフル完走、200kmでサブフォー」。今後の走り込みのヒントとなる理論を紹介します。
ランニングも “韓流ブーム” 到来の予感!
EXPOとエンターテインメントを融合したランニングイベントや、カフェバーやサウナを備えたランニングステーションなど、韓国では今、ランニングブームが加速。日本にも訪れるかもしれない “次のランニングトレンド” を現地からルポします。
本誌購入は年会費7,800円「ランナーズ+メンバーズ」がお勧め!
「ランナーズ+メンバーズ」は毎月最新号が自宅に届く(定期購読)だけでなく、「デジタルで最新号&2011年1月号以降が読み放題」「TATTAサタデーランが年間走り放題」「会員限定動画&コラム閲覧可」のサブスクリプションサービス! 年会費7,800円の超お得なプランです。


