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ランナーズonline

標高3000m以上を毎日70km! ホテルで失神した南米1万1000km走破、いいのわたるの壮絶体験

2025年9月02日

ペルーのアンデス山脈で世界遺産のマチュピチュを望む(写真は本人提供)

ペルーのアンデス山脈で世界遺産のマチュピチュを望む(写真は本人提供)


2023年6月から「走って世界五大陸縦断」に挑戦しているいいのわたるさん(45歳)が、昨年6月から第2ステージである南米大陸1万1000kmを走破。その様子を現在発売中のランナーズ10月号に寄稿してくれたので転載します。


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いいのわたるが戻ってきました! ……って、はい、ボクのこと覚えていないですよね。「あぁ、昨年の月刊ランナーズで読んだような読んでないような」と思い出した方、記憶力素晴らしいです! 約1年ぶりの登場です。

誰も果たせたことのない五大陸走破(TransAtlasRunning)を目標に、2023年アラスカを出発して中米パナマまで北アメリカ大陸1万4000kmを縦断しました(本誌24年7~8月号に掲載)。そして24年は第2章。6月から1年ほどかけてコロンビアからアルゼンチンまで南アメリカ大陸1万1000kmを走ってきたのでその様子をレポートします。北米と南米を合わせて2万5000km。日本の長さを当てはめると約10個分になります。

南アメリカ大陸はなんといってもアンデス山脈。標高3000~4000mを毎日70km走るもんだから、そりゃヒィヒィハァハァ酸欠になりながら進みます。走り終わった後、ラッキーにもホテルがある時は泊まるのですが、レセプションは全てスペイン語スタッフ。頭をフル回転して話をするもんで酸素が足りなくなり、人生初の失神をして石の床に頭を強く打ちつけ、舌を噛んで口内炎だらけになったこともあります(その間、付き添いのドライバーには放置されました)。

前半コロンビア、エクアドルでは、そんな高山に徐々に慣れていきながらも珍しい食べ物にも遭遇します。例えば世界三大フルーツの一つ「チェリモヤ」。見た目は小さいメロンの表面がボコボコになった感じ。きっと野菜なのだろうと手をつけなかったのですが、食べてみて見た目との差にビックリ。熟しきった柿の食感にトロピカルな味が口に広がります。日本にもあったらぜひ教えてほしいです。

他にはクイと呼ばれるテンジクネズミ。げっ、ネズミ食べるの? と思いましたが、コレ高級食材なんです。お祝いやお祭りで出され、焼き物では北京ダックに近く、外はパリっとしていて中がジューシーです。クイの見た目は可愛いのでちょっと気が引けるのですが。


塩湖のど真ん中を走る

塩湖のど真ん中を走る序盤から様々な食材に出会いながら「さすが南米」と毎日のランに刺激を入れてくれます。気づいたら赤道を越えて南半球のペルーに入国します。

景色はトロピカルな緑から一気に土色の土漠エリアに入ります。路側帯も狭く、時々ダートを走るのですが、ある日ずいぶん走りやすいダートだなと快適に走っていると警備員らしき人が「お前何やってんだ!」と怒鳴ってきて、自分がナスカの地上絵のすぐ近くを走っていることに気づき、めっちゃ焦りました。平謝りしました。

ペルーを越えるとウユニ塩湖で有名なボリビア。12月という良いタイミングで水面が反射する鏡張りの景色を見ることができた上、完全に乾いた真っ白な塩湖のど真ん中を走ることができました。GPSも反応せず、地平線まで続く青と白の世界で道に迷ったことは言うまでもありません。

南米も後半戦になり、細長~いチリと広大なアルゼンチンに入ります。道中50kmも並走してくれる従順な野良犬やゴロゴロ石に同化しているアルマジロ、夜に徘徊するピューマに遭遇しながらパタゴニア地区を走り、暴風の中フィッツ・ロイ(標高3405m)も登ってきました。そして今年4月、パタゴニアの端っこで世界の最果てと呼ばれるウシュアイアに到着して南アメリカの旅は終わりました。

景色や動物、食べ物などはインターネットで調べることができるものの、やはり五感で感じるものは刺激的なものでした。何より、調べても分からないのは『人々との出会い』でした。自分がチンタラ走っている間にトラックドライバーは何往復もして自分を見かけて何か差し入れをしてくれたり、食事をご馳走してくれたり、家に泊めてくれたり、家族と一緒に走りに来たり。治安の悪いところではマフィアに絡まれながらボスに食事に誘われたり、相当裕福であろう人のお家に誘われて旅の話をしたりと、様々な人生を過ごした人々と出会い、こんな考え方もあるのか、あんな発想もあるのかと価値観の振れ幅が大きくなりました。その振れ幅を吸収することが人生の豊かさであると自分は思います。

将来何になりたい、何をしたいと決めるのはとても難しいことです。家族でも同僚でもない人と直接触れ合い、その数が多ければ多いほど自分の方向性が自ずと定まり、人生も豊かになっていくのです。
『走る』ということそのものは単調ですが、それに付随して得られるものはとても大きいと感じながら、自分の旅は第3章オーストラリア大陸に場所を移します。今度はエミューと追いかけっこだっ!



飯野 航さん
自動車設計技師としてドイツ駐在中だった30歳の時、ダイエットのために走り始める。2014年、15年チャレンジ富士五湖、17年BadWater135など国内外のウルトラマラソンで優勝。現在はスポーツウエアや和菓子事業を手掛ける会社に所属。1979年生まれ、東京都出身。




北米編のレポートはこちら
いいのわたるの「北米縦断記」前編  600km走ったアラスカで出会ったものは?
いいのわたるの「北米縦断記」後編 毎日70~80km走ると人間はどうなる?



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