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「東京在住米国人市民ランナー」が大阪マラソンで2時間7分14秒 イーサン選手のトレーニング
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2月22日の大阪マラソンで、米国籍で東京陸協所属のイーサン・シューリー選手(27歳)が2時間7分14秒の14位と大健闘。自己記録を4分16秒更新し、アメリカ歴代7位の好記録ともあってアメリカでも大きな話題になりました。「ランニングのために日本に来た訳じゃないんです。日本が好きだから来たんです」と話し、現在は専門学校に通う“市民ランナー”がどのように今回の記録を出したのかインタビューしました。
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Q大阪マラソン(14位、2時間7分14秒 PB)の振り返りをお願いします。事前の目標や、実際のレース展開はどうでしたか?
A: 昨年11月に参加した神戸マラソンの結果が良かった(2位、2時間11分30秒)ので、大阪では先頭集団で走って良いタイムを狙うのが目標でした。過去のレース記録を調べてハーフまでの想定ペースを割り出し、後半もほぼその想定通りに走ることができました 。ただ、後半の下り坂で脚へのダメージが大きく、脚が攣るなどかなりきつかったです 。幸い、最後の5kmを実業団の選手たちと一緒に走れたおかげで、2時間7分という良いタイムでまとめられました。練習が非常に上手くいっていたので、全てが順調なら2時間6分台も出せると思っていました。
Q現在はどのような生活環境で練習をこなしているのですか?
A: 今で日本に住んで3年です。最初の1年半は兵庫県庁で国際交流員としてフルタイムで働きながら走っていました。昨年の3月に撮影関係の仕事への転職を見据えて県庁を退職し、4月から専門学校に通う学生になりました。今は代々木公園の近くに住んでいます。授業は月曜から金曜まであり、日によって9時から18時までと長丁場になることもあります 。練習はスケジュールに合わせて、朝と夜にダブル(二部練)を行っていますが、月曜日は完全にランオフ(休み)にしています 。週3回ポイント練習があり、そのうち日曜日には一番長いロングランを行い、週1日の休みがあってもトータルで週200〜240kmを走破しています 。睡眠時間はできれば8時間を目標にしていますね 。
Q過去の競技歴と、日本で再び本格的に走り始めたきっかけを教えてください。
A: アメリカでの高校時代は大きな大会に出てタイムも良かったのですが、ケガが多く、高校最後のシーズンは走れませんでした。その後、青山学院大学のように陸上が強いBYU(ブリガムヤング大学)に入り1年半ほどチームで練習しましたが、やはりケガで辞めてしまいました。日本に来る前は3年ほど本格的な練習から離れていました。 しかし、ウルトラマラソンに興味を持ち「速いペースの練習をしなければケガをしないのでは」と考えて練習を再開しました。2023年秋の「LAKE BIWA 100」(レース距離170km、累積標高10,500mD+)に出場したものの100km地点でリタイアとなり、それが悔しくてモチベーションが上がりました 。その後スピード練習を再開したところ、2024年に大阪のローカルな5kmレースで15分を切り、フィニッシュ時に運営から「本当に折り返したのか?」と疑われるほどでした。これを機に本気でマラソンに取り組み始め、2024年12月の奈良マラソンで2位(2時間20分51秒)に入ることができました 。
Q現在のトレーニングの内容や、指導者について教えてください。
A: ペースの合うランナーが少ないため、きついインターバルも含めて普段は一人で練習しています 。拠点は代々木公園や皇居ですが、東京は信号や人が多くて少し気を使いますね 。現在は、私のBYU在学時のアシスタントコーチだったアイザック・ウッド氏にメニューを作ってもらっていて、アメリカからリモート指導を受けています。例えばロングランの日には、最初の30kmを3分30秒/km程度の長く保てるペースで走り、最後の5kmを一気にハーフマラソンのペース(3分00秒〜2分55秒/km)まで引き上げてフィニッシュするという厳しい練習をやっています。常にケガをする寸前の限界ギリギリまで追い込んでいるので、大阪マラソン前も疲労困憊でエネルギーがない状態が続きましたが、それを乗り越えられたのが良かったです。
Qアメリカのトッププロ(コナー・マンツ選手ら)との練習経験について教えてください。
A: 昨年2カ月ほどアメリカのユタ州(大学時代に住んだ準高地)に戻り、マラソン自己ベスト2時間4分43秒(北米記録)を持つコナー・マンツ選手(パリオリンピック男子マラソン8位)やクレイトン・ヤング選手(同9位)と一緒にロングランなどのトレーニングをする機会がありました。現在のBYU監督のエド・アイストーンさん(元オリンピックアメリカ代表)も自転車で伴走してくれました。彼らから直接教わるというより、彼らを観察することで多くを学びました。ウォーミングアップのやり方や補給のタイミングなど、彼らが練習をまるで実際のレースのような感覚で取り組んでいる姿勢に大きな刺激を受けました。特にランニング中の栄養補給の重要性は、この経験を通して強く意識するようになりました
Q レース中の補給戦略にこだわりはありますか?
A: 以前は補給についてあまり考えていませんでしたが、今は強く意識しています。神戸マラソンの時はスペシャルドリンクが置けなかったので自分でジェルを6個持って走りましたが、後ろのポケットから取り出すのが面倒で、本当はもう少し補給したかったと感じていました。今回の大阪マラソンでは、最初の30kmまでは5kmごとにジェルを1つ摂り、さらに各エイドステーションでスペシャルドリンクを少しずつ飲むという戦略をとりました。ジェルとスペシャルドリンクの両方を使えたのが非常に良かったです。
Q日本のレースや、独自のランニング文化についてどう感じていますか?
A: 2025年長野マラソン(5位、2時間18分13秒)の時にマイペースで一人で走ろうとしたのですが、ペースが速くなればなるほど単独走がいかにキツいかを思い知りました。そこで、日本の大会で良い結果を出すには、日本の選手たちと同じように前半からハイペースの集団で走らなければならないと気づきました。アメリカにも速い選手はいますが、日本ほど層は厚くありません。今年1月の大阪ハーフマラソンのように、1時間1分台を出せる選手が大量にいるような分厚い集団のおかげで、自分のレベルも引き上げられていると感じます(1時間1分台は彼の大阪ハーフの目標でなかったが、1時間1分2秒の9位と健闘) 。
Q 今後のプロ転向や、オリンピックへのビジョンを聞かせてください。
A: 大阪で2時間7分という結果を出せたことで、アメリカの人たちからInstagramで圧倒されるほど多くのメッセージをもらい、プロになれる手応えを感じています。近いうちに専門学校を辞め、プロランナーとしてフルタイムで競技に集中するつもりです。プロになればリカバリーにしっかり時間を充てられるので、さらに良いトレーニングができるはずです。今後の目標はタイムよりも順位を重視しています。2年後の2028年に開催予定のアメリカでのオリンピックトライアル(ロサンゼルスオリンピックマラソン全米選考会)、に出場し、将来はコナーやクレイトンといったトップ選手たちと勝負して、アメリカ代表としてオリンピックに出たいです。もちろん、日本の文化も日本食も大好きなので、できれば日本を拠点に生活を続けながら競技をしたいとも思っています。
Q 最後に、好きな日本食や普段の食生活について教えてください。
A: 日本食は唐揚げやうどん、ラーメンなど何でも好きですが、特に納豆、寿司、ご飯、魚をよく食べます。毎朝納豆を食べていますし、スーパーのパック寿司から回転寿司まで、寿司は大好きで毎週食べています。普段は節約のために自炊していますが、料理自体はあまり好きではないので地味なメニューが多いです。実は大阪マラソン前には、ご飯がたくさん食べられるという理由で「松屋」に行き、麻婆豆腐??とサーモンの定食を食べました。刺激が強いと言われますが、僕が好きなので問題ありません(笑)
取材・文/河原井司
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