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【学問の道はRUNに通ず】科学で解説! 世界で戦うトレーニング「ファルトレク」

2022年4月20日


2022年1月号より月刊ランナーズに連載している同志社大学スポーツ健康科学部教授石井好二郎先生による連載「学問の道RUNに通ず」。
第5回(5月号掲載)では、駅伝をトレーニングの面から検証しました。


日本は、なぜ一定ペースのトレーニングをメインにしているのか

現在、日本では持続走やペース走といった一定のペースで走るトレーニングがメインに行われています。国際大会ではペースが目まぐるしく変化し、対応する必要があります。なぜ一定ペースのトレーニングをメインにしているのか指導者に尋ねたところ、「駅伝で怖いのはブレーキです。ペース感覚を身につけて、調子の悪い時もまとめられるようにする意味があります」と答えてくれました。
話は遡りますが、2008年の北京五輪での不振を受けて、日本陸連は長距離・ロード特別委員会を設置しました。私もメンバーで、当時の専務理事であった澤木啓祐先生より意見を求められた時、「日本のトレーニングやレースは世界のスピード変化に対応していません。ファルトレクをもっと導入すべきです」と話しました。澤木先生はこの意見を気に入り、日本のトップにも導入することを考えられていたのですが、11年に組織再編が行われ、長距離・ロード特別委員会は解散、ファルトレク導入も幻と終わりました。


世界で戦うトレーニング「ファルトレク」

ファルトレクとはスウェーデン語で英語ではスピードプレイと呼ばれます。地形など自然環境を利用し、高強度と低強度のランニングを交互にくり返すトレーニングですが、インターバル走のように、その組み合わせは系統的ではありません。なお、ニュージーランドの著名なコーチであったアーサー・リディアード(※)は、平坦な場所でも短距離走や中距離走を組み入れるファルトレクを考案しています。
ファルトレクのようなトレーニングを行うとどのような効果があるのでしょうか? 強度が高くなるほど速筋線維の動員が増加します。その時、エネルギー産生工場であるミトコンドリアでエネルギーが作られますが、速筋線維にはミトコンドリアが少ないため乳酸が産生されます。乳酸を細胞外に放出するトランスポーター(運び屋)としてMCT4というたんぱく質があります。MCT4より放出された乳酸は、遅筋線維や心筋にあるMCT1から取り込まれエネルギーとして利用されます。この乳酸の循環を乳酸シャトルと呼びます(図)。速筋線維のミトコンドリアやMCT4は、高強度のトレーニングにより増加するため、ファルトレクは速筋線維でのエネルギー産生、乳酸の放出、そして遅筋線維でのMCT1、エネルギー産生のすべての量を増加させます。これによりペースの変化に対して対応する能力が向上するのです。

※1964年東京五輪800m、1500m金メダルのピーター・スネルなどを育成したニュージーランドの名指導者。2004年に亡くなった。


石井好二郎先生

石井好二郎先生
同志社大学スポーツ健康科学部教授。東京五輪女子1500m8位の田中希実選手のゼミ担当教授。日本体力医学会・日本肥満学会・日本抗加齢医学会・日本サルコペニア・フレイル学会等の理事・評議員を務める。専門は運動処方。1964年3月生まれ。



現在発売中のランナーズ5月号では石井先生の研究室ゼミ生であり、東京五輪1500m 8位の田中希実選手の飛躍の遠因がファルトレクであったことも掲載しています。

ランナーズ6月号 4月22日発売!


ジョギング中に1kmだけスピードアップ
「毎週1秒」速くなって、秋冬マラソンで快走しよう

「スピード走が重要なのは分かっているけれど、継続できない……」。
こういったランナーに向けて、ランナーズ6月号では「普段のジョギングより1kmだけわずかにスピードアップし、毎週1秒速くなることを目指す」を提案しています。
このトレーニングを続けることがなぜ秋冬マラソンでの目標達成につながるのか、詳しい理論やアレンジ法をご紹介します。

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3月17日に開催されたイタリアのローママラソンは主催者曰く「世界一多いペースメーカー」を配置しているのが特徴でした。ペースメーカーはどんな人たちが行っているのか、またペースメーカーが率いる集団で走る際にタイム短縮につながるテクニックなど、様々な角度から考察しました。

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