忙しい日常の中、月間走行距離が100km前後でマラソンが速くなっているランナーたちのコツを聞きました。
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ふくい桜マラソンに初回からゲストランナーとして出場し続けているYouTuber「福井のカズさん」こと勝村和央さん(42歳)。仕事と育児をしながら、月120km前後の走行距離で、昨年の富山マラソンでは3時間21分22秒をマークした。
学生時代は高校生で初めて50m走で10秒を切ったぐらい走るのが苦手でした。10年以上前にホノルルマラソンと大阪マラソンを走ったことがあったのですが、ちゃんと走り出したのは初回(2024年)のふくい桜マラソンにゲストランナーとして参加することになってからです。せっかくなのできちんとした記録を残したいと練習し、3時間40分で完走。同じ年の金沢マラソンで初サブ3.5を達成し、25年11月の富山マラソンでは3時間21分22秒まで縮まりました。
練習は2年前からほとんど変わらず、週2~3回10km前後を走っています。動画の撮影・編集以外にも打ち合わせがあったり、プロジェクタースクリーンの製造会社代表もしているので午後6時前後までは仕事に集中。その後は9~5歳の子ども3人に食事をつくったり、世話をしたりするのでなかなか走る時間がつくれないんです。ただ、中4日は空けないようにして早起きしたり、夜ちょっと抜け出して走ったりします。
その分、1回1回のトレーニングではジョグはせずに、マラソンより速いゼエゼエいうペースで走ります。自然にタイムが速くなり、現在はキロ4分35秒ぐらい。たまにインターバル走をしたり、月1~2回20km走ったりしますが、10kmぐらいのペース走が練習の中心です。
その他の特徴としては、年6回ぐらいフルマラソンを走っています。初回のふくい桜マラソンの際に一緒にランニングを頑張るウェブ上のコミュニティ「チームメロス」を作ったので、そのメンバーたちに会うために全国のマラソンに出場するようになりました。レース中にライブ配信もしていてけっこうな人数が見てくれるので、面白い内容にするためにほぼ全レースを本気で走っています。マラソンをたくさん走っていることと、動画配信で緊張感を持っているから、この走行距離でも後半も大きく失速しないんじゃないかと思います。
あと、週1回は筋トレしていて、ベンチプレスを100kg以上挙げられるので、グリコーゲンをたくさん蓄えられるのではないかと思っています(笑)。
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徳倉達也さん(51歳・3時間12分29秒・月100km)
研修医時代に同僚と地元のレースに出るために走り出し、2003年の初マラソンは4時間42分。15年に初サブフォー、19年に初サブ3.5をして、今年の別府大分マラソンでは3時間12分29秒の自己ベストを出せました。今は愛知県岡崎市の三河病院で院長をしており、平日は帰宅が午後9時頃になるので、走れるのは休日(金曜日と日曜日)で、月7日前後。本当はもっと走行距離を増やせるといいのですが、昨年の年間走行距離は1292kmでした。自分でポイントだと考えているのが、走る時はほぼ毎回ハイキング用の起伏のある不整地で練習していることです。1回14km前後で、妻と一緒に走る時はキロ6~7分、1人で走る時は4分30秒~5分で最後3kmをビルドアップと、メリハリがついているのかもしれません。走る距離が少ない分、隙間時間にレースのシミュレーション(コース分析やペース配分、補給計画)は徹底的に実施。精神科医という職業柄、レース中にキツくなった際のメンタル管理も得意で、それも失速しづらい要因だと思います。
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小松亜紀子さん(49歳・3時間34分4秒・月80km)
建築関係の仕事をしています。平日は残業も多く早めに帰れる日が少ないので、走るのは週2日。1日は平日夜に300mトラックで900m×8本や3900mビルドアップ×2セットなどのスピード走、週末どちらかに20kmペース走(キロ5分程度)をしています。また、MDCなど中距離のレースや駅伝などフルマラソン以外にも年10回程度出場しています。練習のバランスが良く、良くも悪くも無理をしていないことで、この走行距離でもこのタイムが出せているのかもしれません。
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古関美弘さん(62歳・3時間48分30秒・月100km)
会社で法務の仕事をしています。走れるのは妻と夕食を食べた後になることや、加齢によって疲労が抜けづらくなったことから普段は平日2日4~6km、日曜に10~15kmという練習になっています。マラソン2カ月前からは日曜になるべくハーフマラソンを走るようにしています(または15~20kmペース走)。ハーフを何度も走ることでレース感やペース感がつかめたり、中間点までは余裕で走れるという自信と安心感が持てるようになります。30km過ぎからの落ち込みは精神力と補給で最小限に抑えます。
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畝川弘毅さん(34歳・2時間58分40秒・月135km)
子どもが小さいため自分の時間を多く取れず、走るのは週3日が基本です。その分1回1回負荷を高めるため、週2回行う12~16kmジョグ(キロ4分30秒~5分)では、ラスト数百mを4分を切るペースまで上げる「流し」を入れています。さらに週1回はキロ4分10秒で12kmペース走をしています。昨年夏から流しの工夫を始め、3月のソウルマラソンでサブスリーできました。多忙でもランニングは心身のリフレッシュに欠かせない時間です。
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川上善正さん(46歳・3時間37分8秒・月90km)
カーディーラーの管理職をしており、仕事の日は帰宅が遅いので走るのは休みの日(火水)のみです。どちらの日も日中に10kmペース走(キロ5分30秒前後)をすることが多いです。走る頻度は少ないですが、その分5日休んでからの2日間は絶好調で効率よく走れていると感じます。マラソンシーズンは月1回フルマラソンを走っており、目的に応じて本気で走ったり練習(ロング走)にしたりしています。なお、日曜日にレースがある場合は夕方ごろから仕事に行っています。
月間100km前後の走行距離ではどこまで速くなれるのか、速くなるために必要なことは? 本誌おなじみのコーチ陣に聞きました。
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「多くのランナーは走行距離を気にし過ぎではないかと思います。月100~150kmでも内容次第でマラソンに必要な能力の大部分は鍛えられると考えています。限られた時間の中でハードに追い込むのです」
こう語るのは、サブスリー鍼灸師の柳秀雄コーチ。
指導する中に、月100km前後でも60歳前後でサブフォーをしている男女が何人もいるという。
「仕事をしているランナーには平日は走れても1日だけ、あとは週末という人も多いです。そういう人には、以下のようなメニューをお勧めしています。
◎
水曜日 1km×5本や400m×12本など合計5km前後のスピード走(本気で出し切る)
◎
土曜日 8~12kmペース走または9kmか12kmの3段階ビルドアップ(3段階目は攻める)
◎
日曜日 20km前後のLSD
これで高速、中速、低速の全てがカバーできます。日曜のLSDは隔週にした場合走行距離は120km前後になります。こうして様々な刺激を与えれば効率的に速くなれます」月間100km前後にはメリットもあるそう。「練習は元気な状態でやった方が力になる。このスケジュールだと休みが多くなり、水曜と土曜はスピードが出しやすい。日曜はスタミナを鍛える練習なので疲労があってもOKです」
このトレーニングでどこまで速くなることが可能なのか。「サブ3.5まではいけると思います。サブスリーは絶対的なスピードが必要になるので、さらなる工夫が求められます」
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club MY☆STAR代表の岩本能史コーチは「マラソンで速くなりたいなら本当は月250kmが必要だと思っていますが、多くの人は忙しくてそんなに走れていないし、月100kmで速くなっている人がいるのも事実です」
では岩本コーチの考える月100kmで速くなるランナーは?
「総走行距離におけるポイント練習の比率が高い人だと思います(=ジョギングが少ない)。例えば、素質が同じで月間走行距離200kmのうちポイント練習が100kmの人と月間走行距離120kmのうちポイント練習が100kmの人は、かなり走力が近くなると考えます」
「とはいえ、一般的にはポイント練習の比率が高すぎると故障します。故障しないのは、過去に何かスポーツに打ち込んでいたり、素質があったりして筋肉(速筋)がある人。こういう人は着地衝撃に強いので少ない距離で負荷を高めても速くなり、サブスリーをしている人もいます」
一般的なランナーの場合は難しいのだろうか。
「そこに近づくには筋トレで速筋を鍛えることです。お勧めはジャンピングランジ。数分あればできるので、走る頻度を増やせない人も実施可能です。ジョギング後に流しを数本することも速筋の刺激につながります。こうした取り組みをすれば、ポイント練習の比率が高くても故障しづらくなり、少ない走行距離で速くなることが可能です」
最後にポイントとして、「4日以上間を空けないこと」を挙げる。「走らない日が4日以上続くと汗腺や血管、筋肉などランナー体質の基礎になる部分が衰え始めてしまい、次の練習の効果が薄くなってしまうと思います。週末ランナーの人はたとえ3㎞でもいいから平日1回は走ったり、積極的に歩いたり階段を使う日を設けてほしいです」
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天理大学准教授で、自身も21年度の全日本マラソンランキング39歳の部1位になった岩山海渡先生は、市民ランナーを見てきた経験などから「ジョギングを中心に月100km走れればサブフォー前後までは記録を伸ばせるのではないか」と語る。
「ただし、1カ月だけ100km走るのではなく、毎月コンスタントに100kmを超える、というような走り方が必要だと思います。そうすれば徐々に走力がアップし、4時間切りも見えてくるのではないでしょうか」
その上で、1カ月100kmの走り方を提案する。
「マラソンのスタミナをつけるにはトレーニングでエネルギーを枯渇させた状態を経験しておくことが有効です。例えば週の走行距離が25kmとして、5kmを5日間走る場合ではエネルギー枯渇は生まれにくく、マラソンの失速耐性はあまりつきません。一方で、一度に25㎞を走るが残り6日は走らない場合、1回の負荷は大きいものの休息時間が長すぎてトレーニング効果が得られにくくなります。これらを踏まえて私がお勧めするのは、週3日以上走る日を確保して、その中でメリハリをつけることです。例えば水曜日に5km、土曜日に5km、日曜日に15kmなど、走らない日を少なくし、かつ週1日は少し長めの距離に挑戦します。また、同じ距離を走る場合であれば、朝ランに取り組むと走り始めからグリコーゲンが少ないので、効率的にエネルギーの枯渇状態を経験できます。
ただし、お仕事の都合でまとまった時間が確保できない場合もあると思いますので、最終的にはライフスタイルとの兼ね合いになります。週4日走っているけど1日30分しか走れないのであれば、うち1日はキツいと感じるくらいスピードを上げてみてはいかがでしょうか。同じ時間でも距離は延びますし、メリハリもついてきます」
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ランナーの6割以上は月150km以下
一般財団法人アールビーズスポーツ財団が実施し、6535人が回答した「ランナー世論調査2025」では、1カ月の平均走行距離は150km以下が全体の63%、100km以下も41%だった。月150km走ることは一般のランナーにとって簡単ではないことが分かる。
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