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レース前のコンディショニング。トレーニングや食事はどうすればいい?(PART2)

2022年1月14日

Question
本命レースをベストコンディションで迎えるために、トレーニングや食事で気をつけることは?

Answer
グリコーゲンをしっかり身体に蓄えてレースに臨むことが大事。ただし、 グリコーゲンローディングには注意が必要です。


回答者:深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)


「トレーニング期」に持久的な、質の高いトレーニングが必要なわけ

――前回(PART1)は、アミノ酸やたんぱく質は糖質と一緒に摂取すると良いとうかがいました。筋肉の回復だけでなく、運動時にエネルギーとして消費したグリコーゲンの回復にも効果的なんですよね! 糖質というと、やっぱりレース前はパスタ……?

深野先生(以下F):身体により多くのグリコーゲンを蓄える方法としておなじみの「グリコーゲンローディング」ですね。
フルマラソンのような長時間にわたるレースで、パフォーマンスを発揮するには、身体の中に蓄えられる量の少ない、筋肉や肝臓の『グリコーゲン』の枯渇をいかに防ぐか、ということが大事でしたよね。
「脂肪」を燃やして効率的に走りたい!(PART1)も参考に。

ただし、まずは “トレーニング期”にしっかりとトレーニングを積めているか、ということが一番大切なんですよ。

――どきっ…。レース前にグリコーゲンを蓄えることばかりに目が向いていました。

F:持久的なトレーニングを継続して行うことで、筋肉への血糖の取り込み能力や、グリコーゲンの合成能力が高まります。また、脂質(体脂肪)を効率よく使うことができるようになり、運動中にグリコーゲンを節約できるようになります。まずは「トレーニング期」に持久的な、質の高いトレーニングをしっかりと実践して、グリコーゲンが枯渇しにくい(グリコーゲンを効率よく貯蓄できる/運動中にグリコーゲンを節約できる)身体を作っておく、ということが重要ですね。

そして、そのような長時間、また強度の高いトレーニングをこなしていくためには、普段の食事からしっかりと糖質を摂取してグリコーゲンを身体の中に蓄えた状態で練習に臨むこと(必要な場合は練習中にも糖質補給)。練習でエネルギーとしてグリコーゲンを消費したら、食事や、食事で摂り切れていなかったら補食で練習に見合った必要な量の糖質を摂る。トレーニングで消費したグリコーゲンを十分に回復して、次の練習に備えることが大切です。


●トレーニング期の1日の糖質摂取量の目安は以下のように推奨されています

・1日約1時間程度のトレーニング 5~7g/kg体重
・1日1~3時間程度の中~高強度のトレーニング 6~10g/kg体重
・1日少なくとも4~5時間の中~高強度のトレーンニング 8~12g/kg体重
(※アメリカスポーツ医学会のガイドラインより)


体重60kgの人なら、1~2時間程度のトレーニングを行う場合は360~600g必要、になります。(全てごはんに置き換えると1杯150gとして、6~11杯分!)

――つまりはトレーニングを十分積んでおけば、身体へのグリコーゲンの取り込み能力が高まるってことですね! 慌ててパスタを食べるじゃダメか(笑)。やっぱり練習ありきかぁ~。

F:その通り。もちろん、基本の食事(主食・主菜・副菜・汁物(+果物、牛乳・乳製品))を揃えたうえで、特に糖質をエネルギーに変えるためのビタミンB1(豚肉、鮭、豆腐、納豆、枝豆、グリンピースなど)も意識して摂るのをお忘れなく。さらに、ビタミンB1は、にらや玉ねぎ、長ねぎ、にんにくなどに含まれる“アリシン”と一緒にとると効率よく吸収されるので、組み合わせて摂取するのがおすすめです!

――では、レース直前の糖質摂取……“グリコーゲンローディング”はどうしたらいいですか?

F:グリコーゲンローディングは、練習量を徐々に減少させながらレースの6~4日前は通常の食事で、レース3日前に高糖質の食事(8~12g/kg体重)をとる方法(改良法)と、特にトレーニングを十分に積んだ人では筋肉への血糖の取り込み能力や、グリコーゲンの合成能力が高いため、レース前1~2日前に高糖質食(8~12g/kg体重)に切り替えても十分にグリコーゲン貯蔵量を増やせると言われています(最新法)。

ただし、ただ糖質量を増やせばいいというわけではなく、練習量に合わせて摂取エネルギーを調整しながらも、たんぱく質量は維持したうえで、ビタミンやミネラルなども不足のないようにしていく必要があります。

また、どのランナーにも有効というわけではないんです。たとえば、グリコーゲン1gには、約3gの水分が含まれます。つまりグリコーゲンが300g増えたら、約900gの水分も増加する(=合計1,200gの増加)ということ。身体に加わる重みのこともイメージしなければなりません。

――水分もそんなに!? 本番に向けて練習量を落とす時期だけに、消費エネルギーも減っているから……ただやみくもに食べていたら体重が急増する、なんてこともありそうですね。

F:体調を崩したり、体重が思いのほか増えてしまうモトになるので、いきなり本命レースの前に行うのは避けたほうが無難ですね。

――大事なレース前にいきなり行うより、事前に試して、どの程度やるのがちょうどいいか見極めるのがベターですね!

F:そうですね。たとえば30km走のようなレースシミュレーションのトレーニングをする際は、それを試すのに絶好のチャンス。練習日をレース当日に見立ててグリコーゲンローディングを取り入れ、自分のパフォーマンスがどうなるか、身体に合っているか、取り入れたほうがよいのか、どれくらい取り入れるのかなど、試して確認しておきましょう。

(PART3に続く)

PART1はこちら



《参考書籍・WEBサイト》
・糖質を上手に摂ると、理想とするパフォーマンスをより長く続けることができる!その方法とは?
https://sports-science.ajinomoto.co.jp/thm05_carbohydrate-supply/

・『アラニン・プロリン配合糖質ミックス』は、糖質のエネルギー利用をサポート。
 持久力が維持されます
https://sports-science.ajinomoto.co.jp/knw05_alanine/

・スポーツ栄養学最新理論 寺田新 編著(市村出版)
・エッセンシャルスポーツ栄養学 日本スポーツ栄養学会監修(市村出版)
・スポーツ栄養学ハンドブック ダン・べナードット(著)/寺田新(訳)(東京大学出版会)
・理論と実践 スポーツ栄養学 鈴木志保子 著(日本文芸社)
・トコトンやさしいアミノ酸の本(日刊工業新聞社)




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