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レース前のコンディショニング。トレーニングや食事はどうすればいい?(PART1)

2021年12月23日

Question
本命レースをベストコンディションで迎えるために、トレーニングや食事で気をつけることは?

Answer
本番に向けて練習量を抑えても、糖質やたんぱく質の摂取量はキープ!


回答者:深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)


コンディションは「本番に向けてベストに整えていく」もの

―――今回はコンディショニングについて教えてください。私の場合、一応本番1カ月前に30km走だけはするようにしていますが、気づくと本番間近になってしまって。「前日はグリコーゲンローディングだ!」とパスタ三昧の食事をしてみるものの……結局ガス欠になるし、タイムも伸びないし、よかれと思ってやっていることが成果に結びついているのか、よく分からないんです。

深野先生(以下F):もしかすると、どの対策もトレーニングも、場当たり的なものになってしまっているのかもしれませんね。それぞれ、なんのためにこのトレーニングや対策をするのか、もう少しはっきり役割をイメージする必要がありそうです。

目標レースを決めたら、ただやみくもに走るのではなく、目標を達成するための力を身につけるためにトレーニングを【期分け】して、それぞれの目的に応じて練習内容も変化させていきます。

――「期分け」ですか? よく聞く、本番が近づいてきたら練習時間を減らして身体に疲れを残さない、とかですか?

F:そうですね! それはレース前の“調整期”と言って、これまでの練習の総仕上げの段階です。ただし、まずはレースに向けて基礎体力作りや持久力・スピード・スピード持久力等を身につけていく “トレーニング期”にどれだけしっかりと練習が積めているかどうかが一番大事。調整期はレース前の最後の調整段階で、体力(走力)はできるだけ維持しながら、疲労を減らしてベストな状態で本番に臨めるように準備をしていく期間。大きく分けると、次のような流れを意識する必要があります。

*****

★トレーニング期……【準備期】基礎体力や量の練習(持久力を高める)を積む→【移行期】質の高い練習(スピード)、さらに量×質の練習を積む(より本番に近い実践練習)
 ↓
★調整期(試合期)……【ピーキング】レースに向けてのコンディション調整
 ↓
◎レース本番!
 ↓
★回復期(休養期)

*****

つまり、トレーニング期に目標を達成するだけの力を身につける練習が行えている、ということがまず大前提で、さらに最も力を発揮したい本番に向けて、コンディションのピークを合わせることが調整期のポイントです。

レース前の調整期は約1~2週間前からスタート。基本的にはこの期間は徐々に練習量を落としていきますが、それと合わせてレース当日に合わせた身体のリズムの調整を。本番のスタート時間から換算して、起床時間や朝食を摂る時間を事前にチェックします。レース1週間前を目安に、その生活リズムに合わせていくとよいでしょう。


本番に向けて練習量を抑えても、糖質やたんぱく質の摂取量はキープ!

F:続いて、食事です。コンディションの維持のためには、まずレース1~2週間前の段階から、食事や補食を意識しましょう。
“調整期”ならではのポイントもありますが、レース前の調整期の食事も基本的にはいつも通りの、食べ慣れているもので栄養バランスの良い食事(基本の食事=主食・主菜・副菜・汁物<+果物、牛乳・乳製品>が揃っている)をとるようにします。

レース直前に急に食事を変えるのではなく、トレーニング期から練習量に見合ったエネルギーや栄養素を、バランスよくとる「習慣」が身についていること、それがいちばん重要といえるかもしれません。

――(ズシーン……!)付け焼刃は通用しないということですね。でも栄養バランスに気をつけてちゃんと食べよう、って頭で分かってはいるものの、レースが近づくと、緊張してきてそもそもの食欲が落ちちゃうんですよね。

F:緊張や不安から、食欲が低下して食事量が減ってしてしまうと、疲労の回復が遅れたり、免疫機能が低下して風邪などの感染症にかかるリスクが高くなってしまうことも。

――レース前に体調を崩してしまったら、仕方ないとはいえ…やはり練習してきた分、悔しい気持ちになります…

F:もし食欲が落ちてしまい食事だけでは必要なエネルギーや栄養素が足りないようなら、補食を活用したり、量を分割して食べたり、消化のいいものにすることをお勧めします。
逆に過食気味になってお腹を壊したり、体重が想定外に増えたり、身体が重くなるランナーも多いですよ。

――ドキッ。実はレース前日にパスタを大量に食べたとき、身体は重くなるわ、消化不良を起こすわで結果が散々だったことが……

F:本番に向けて練習量を減らしたら、必要なエネルギー量も変化していることを意識したいですね。体重をチェックして、急激に増加したり、減少していないかどうか確認を。練習量に合わせて調整しながら基本的には糖質やたんぱく質の摂取量は必要量を十分に摂取し、消化に時間がかかりやすい脂質を控えめに。

食材を脂質の少ないものにしたり、調理法を工夫してエネルギー量も調整していきましょう。代謝に必要なビタミンB群(特にビタミンB1)や、免疫機能を強化するビタミンA・C・Eも積極的に摂取するといいですね。

――体重の大幅な増減は体調を崩すモトですね。本番が近づいたら体重チェックは欠かさない方が良さそうです。 

F:それからレース前の“調整期”に特に意識したいのは、筋肉の疲労をとり、筋肉のコンディションを整えること。トレーニング期に練習を積めているランナーほど、疲労は蓄積されているものです。

また、レース前に練習量を減らしても、練習を行わないわけではありません。むしろレース前の“調整期”では練習量(時間や距離)を徐々に減らすものの、運動の強度や頻度は変えずに行い、当日に走るペース感覚やスピード感など“よいイメージ”をもってレース当日を迎えることも重要。(ただし本番直前には強度の高いトレーニングになりすぎないよう注意)

練習を行ったら、ダメージを受けた筋肉の修復を促し、疲労をできるだけ早く回復させ、筋肉のコンディションを整えた状態でレース当日を迎えられるように調整していくことが大切です。

――筋肉のコンディションを整える…ですね!ポイントはありますか?

F:レース本番はもちろんですが、トレーニングの前後(始める30分前、終了後30分以内)に“アミノ酸”を上手に利用して筋肉のコンディションをキープしたいですね。補食やサプリメントをうまく活用することがポイントです!

練習前(30分前)には、筋肉で特にエネルギー源として利用される“BCAA”(バリン・ロイシン・イソロイシン)を含む必須アミノ酸を摂取して、筋肉のコンディションをキープ。レースをイメージしながら質の高い練習を最後まで行いましょう。

練習後には筋肉の合成を促すシグナルとなる“ロイシン”がより多く含まれている必須アミノ酸の補給で、筋肉のタンパク質の合成を促して、筋肉のダメージからすみやかな回復を促します。
(※練習前にも補給することで、運動中に減っていく筋タンパク質の合成促進に働きます)

また、食事からは筋肉のタンパク質を合成する材料となる“必須アミノ酸”を1日3回の食事からまんべんなく(1食につきたんぱく質量で約20~30g)摂取する必要があります。
(※ランナーの場合、体重1kgあたり約1.2~1.4gのたんぱく質が1日の摂取量の目安。体重60㎏の人なら1日に必要なたんぱく質量の目安は72~84g)
特に筋肉のタンパク質合成のシグナルとなる“ロイシン”を十分に摂取したうえで、必須アミノ酸を補給することが、筋肉のダメージからの素早い回復には重要です。

“ロイシン”を多く含み、かつ必須アミノ酸をバランスよく含む良質なたんぱく質(肉や魚、卵、大豆・大豆食品、牛乳・乳製品)を食事や補食からしっかりと摂りましょう!
ただし、脂質が少ない部位を選んだり(豚ロース肉よりも豚もも肉、鶏もも肉よりも鶏むね肉を選ぶ等)、調理法(揚げものよりも焼く・ゆでる等)、消化しやすい形状(塊肉よりも赤身のひき肉にする等)などを工夫してたんぱく質はしっかりとりながら、脂質を控えてエネルギーを調整したり、消化吸収しやすい形で摂取していくのがポイントです。

――筋肉のコンディションを整える…レース前の重要なポイントですね!

F:アミノ酸やたんぱく質は糖質と一緒に摂取するとうまく筋肉に取り込むことができると言われています。(アミノ酸ならスポーツドリンクや100%果汁ジュースと一緒に摂取する、肉や魚など(たんぱく質)はごはんなど(糖質)と一緒に摂取する、等)筋肉の回復だけでなく、運動時にエネルギーとして消費したグリコーゲンの回復にも効果的とされていますよ。

――グリコーゲンも大切ですもんね! だからグリコーゲンローディングでパスタを…

F:そう、そのグリコーゲンローディングですが、誰もが闇雲に炭水化物を摂ればいいというわけではないし、“アミノ酸”を有効に活用する方法もあるのです。次回、その正しい理解や方法をお伝えしますね!

PART2はこちら



《参考文献》
・『ロイシン高配合必須アミノ酸ミックス』は、運動中の筋肉のコンディションをキープ!
運動後の疲労回復もサポート
https://sports-science.ajinomoto.co.jp/knw0104_leucine-mix/

・カラダの大半をつくっているアミノ酸と筋肉の関係とは?
運動中に筋肉は減ってしまう!
https://sports-science.ajinomoto.co.jp/thm01_aminoacids-muscle/

・理想とするパフォーマンスを発揮するには筋肉を「早めに回復する」ことが大切。
では具体的に何をすればいいか?
https://sports-science.ajinomoto.co.jp/thm04_quick-recovery/

「ピーキングのためのテーパリング」河村直紀(NAP Limited)
「スポーツ栄養学最新理論」寺田新編著(市村出版)
「理論と実践 スポーツ栄養学」鈴木志保子著(日本文芸社)
「トコトンやさしいアミノ酸の本」(日刊工業新聞社)




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