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ランナーの質問箱「走っているのにやせない⁉ その理由は…」(後編)

2021年5月14日

Question
ダイエット目的で走り始めたのに、なかなか体重が減らず困っています

Answer
食事以外で変えられるところ、減らせるところから手を付けましょう


回答者:深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)


――前回、食事を制限するダイエットを始めると、必要なエネルギーや栄養素が不足しやすく、体脂肪より筋肉が落ちやすくなるというお話がありました。ただ、ランニングだけでなく食事をコントロールしないと減量は難しいですよね?

深野先生(以下、F):減量するとなると、すぐにご飯の量を減らす、おかずの量を減らすなど、食事量を減らすことを考える方が多いのですが、そのような食事制限は長続きしませんし、辛い、苦しい、集中力が続かない、疲れが取れないなどと感じてしまいがちです。食事の量を減らす前に、食事以外で変えられるところや減らすべき箇所がないかどうかをチェックしてみてください。まずは食事をしっかりとること。その上で減らすべきところを減らしていきます。今回はそのステップをご紹介しましょう。


チェック1 太りやすい時間帯に食事をしていないか

仕事を終えてから走り、そのあとに夕食をとる場合、時間が21時以降だったり、夜遅い食事なのに空腹でついにボリュームが多くなってしまったり、脂質の多い食事になっていませんか?

夜遅い食事は血糖値が上がりやすく、食べたものが体脂肪として蓄積されやすくなります。さらに22時~深夜2時にかけての時間帯は脂肪の合成が盛んになります。夕食はできるだけ早めに済ませるようにしましょう。

走った後の夕食がどうしても遅くなってしまう場合、走る前におにぎりなどで補食を摂り、ランニング後の食事ではおにぎり分をマイナスして、高たんぱく質・低脂質の食事にするなど工夫してみましょう。また、夕食後の間食や果物を摂っている場合も太りやすいので、食べる時間帯を日中や運動の前後等にずらすとよいでしょう。


チェック2 食事以外で減らせるものはないか

食事量をコントロールする前に、食事のほかに摂取しているもので減らせるものはないか確認してみましょう。
たとえば…間食、飲酒、缶コーヒーやジュースといった甘い飲み物など(スポーツドリンクも含む)。
まずはここから減らす、あるいは種類を変える。チョコレート1かけらは約30kcal。仕事の合間につまんでいて気づいた頃には10個食べていたら…あっという間に300kcal(!)にもなってしまいます。(ごはん1膳〈150g〉が約250kcalなので、それ以上に…)必要な摂取エネルギー以上になっていないかどうかもチェックしましょう。間食は全体のエネルギーの10%以内ならOKです。


チェック3 食事の量は適切か?

体重が増え続けているなら、食事量が多い可能性もあります。体重を維持している状態なら食事の量は問題ないといえますが(栄養バランスは別として)、食事を減らしているのに痩せない場合は、エネルギーや栄養素の不足で、身体が省エネ状態(少ないエネルギーで活動できる身体)になっている可能性もあります。

週2回、30分程度のジョギングはしているが、残りの生活は座位中心という人もいるのでは? 「走っているからたくさん食べても大丈夫」と考えていると、消費する以上のエネルギーを食事から摂取してしまい、やせない可能性もあります。
生活の中で歩くこともあり、軽めの運動をしている場合(身体活動レベルⅡ)で同年代の男性で2,700kcal、女性なら2,050kcalが摂取エネルギーの目安。


チェック4 食事のバランスを整える

必要なエネルギーや栄養素はしっかりとりましょう。そのほうが筋肉量を減らさずに体脂肪を減らしていくことができます。食事で必要量が摂れると満足感が得られ、間食等への欲求も減るでしょう。

理想の食事のバランスは、摂取エネルギーのバランスを炭水化物50~65%、たんぱく質13~20%、脂質20~30%です(18歳~49歳の場合、たんぱく質については、50~64歳は14~20%、65歳以降は15~20%)。

太りそう…と主食や主菜を減らすと、エネルギー不足になったり、身体の材料となるたんぱく質が不足し、かえって筋肉量を減らしてしまいます。また「牛丼」のみなど、主食と主菜に偏った食事は、燃焼のために必要なビタミンやミネラルが不足しがち。定食形式で食事をとることで理想のバランスに近づけることができます。


基本の食事の形に落とし込むことが重要(主食、主菜、副菜、汁物、果物、乳製品)※果物や乳製品は活動量による。健康増進やダイエットのためのランニングで、週2回30分~60分程度の活動量であれば1日1~2回程度でよい。

基本の食事の形に落とし込むことが重要(主食、主菜、副菜、汁物、果物、乳製品)
※果物や乳製品は活動量による。健康増進やダイエットのためのランニングで、週2回30分~60分程度の活動量であれば1日1~2回程度でよい。


チェック5 食材の選び方を工夫(とりすぎている場合は脂質を減らす)

●たとえば主食を選ぶときは…
胚芽米や全粒粉のパンなど未精製のものや食物繊維を多く含む雑穀米などを選べば、血糖値をゆるやかに上昇させられるので体脂肪として蓄積されづらい。また、糖質の代謝に必要なビタミンB群も摂取できます。

●たとえば主菜を選ぶときは…
特に夜遅くにとる食事では脂質の少ない部位を選ぶなどの工夫も。
(赤身肉を選ぶ、鶏皮を取り除く、豚ロースの脂身をカットする、大豆製品や白身魚など低脂質・高たんぱく質のものをチョイスする等)

※そのほか調理法もチェック
脂質が多くなりやすいのは、やはり揚げ物。昼食でとれば太りづらいのですが、夕食でとったり頻度が多いとやはり摂取する脂質の量は多くなります。週2回程度を目安にしてみましょう。
また調理法では、揚げる>炒める>焼く>煮る>蒸す・ゆでる といった順に脂質を抑えられやすくなります。

一度に全て取り組もうとすると大変ですが、食事以外で変えられるところや減らすべき箇所がないかどうか、特に夕食の時間帯や間食・甘い飲み物等の見直しといったところからスタートしてみてください。


――1日3食の量を減らす前に、これだけやるべきことがあるんですね! 無理なくできそうな気がしてきました。

F:食後の走るタイミングによっても効果が違ってきます。まず、食後すぐに走るのは、消化不良や腹痛の原因になりますのでNG。
食事して30~60分後は血糖がエネルギーとして優先的に利用されます。血糖のコントロールや食べたものを体脂肪として蓄えないという意味ではよい時間帯です。
食事の2~3時間後は体脂肪が分解されているタイミングなので、この時間帯にランニングをすると体脂肪が燃焼しやすくなります。
食後5~7時間以上経って、空腹を感じながらのランニングは、筋タンパク質の分解を促進してしまい、筋肉量の減少→基礎代謝の低下にもつながるので、補食としておにぎりやバナナなどを摂ってから走り、そのあとの食事で調整するようにしてみましょう。


――今まで食べる量を減らしてランニングすればやせるとしか考えていませんでしたが、無理なく効率的にできる方法があるのですね。もっと早く知りたかったです(笑)。ありがとうございました。

前編はこちら


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※参考文献
時間栄養学 時計遺伝子と食事のリズム 香川靖雄編著 女性栄養大学出版部
日本人の食事摂取基準2020
改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』 国立健康・栄養研究所



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