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世界トップ選手が実践「ノルウェー・モデル(二重閾値走)」提唱者が真髄を語る
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トレーニングの合間に乳酸値を測るノルウェーランナー |
東京2020五輪1500m、昨夏のパリ五輪5000mで金メダルを獲得したノルウェーのヤコブ・インゲブリクトセン選手が実践し結果を出したことで知られるようになった「ノルウェー・モデル(二重閾値走)」。長距離走のパフォーマンスを決める3要素は「最大酸素摂取量」「ランニングエコノミー」「乳酸性閾値(LT値)」ですが、中でも加齢しても高められる要素と言われるLT値をより効果的に改善するトレーニングとして今注目されています。
LT値の改善効果が得られる「閾値トレーニング」は、日本ではハーフマラソン〜フルマラソンペースで20〜40分持続して走るトレーニングという認識が一般的ですが、ノルウェー・モデルでの閾値トレーニングは、従来よりやや遅いペースで、6分×5本などの「分割走」を行うのが特徴。かつ、それを週2回、1日に2回(午前と午後)実施することで、疲労を軽減しながらトレーニング量を増やすことを可能にし、追い込まなくてもパフォーマンスが飛躍的に高まるとされています。このモデルの真髄について、現地ジャーナリストが提唱者にインタビューしました。
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- ノルウェー・モデル提唱者
マリウス・バッケン(47歳)
1978年、ノルウェー生まれ。長距離選手としてシドニー、アテネ五輪出場、世界選手権3度出場。5000m の自己ベスト13分6秒39(ローマ04)は2019年にヤコブ・インゲブリクトセンに破られるまでノルウェー記録。オスロ大学社会学部卒、英語学士号・政治学士号取得、オスロ大学医学部卒業。現在は医師として勤務
取材・文/スヴェン・キランダー
(フリーランス・スポーツジャーナリスト、マラソン2時間25分28秒)
ノルウェー・モデルとは、ヤコブ・インゲブリクトセンや23年世界陸上1500m銅メダリストのナルヴェ・ギリェ・ノルドースといったノルウェーの長距離ランナーを成功に導いたトレーニング哲学であり、その背景にある原則が、今ほとんどすべてのノルウェー中・長距離ランナーのトレーニングに取り入れられ世界的に広まっています。この記事では、このトレーニング法の提唱者であるマリウス・バッケン氏にインタビューし、どのような考えに基づくものなのかを説きたいと思います。現地では乳酸値を測定し管理しながら実践されていますが、「測定ができないから取り組めない」と悲観しないでください。大切なのは、「(速度が速くなりすぎないよう)コントロールすること」「ボリュームはスピードに勝る」です。
ノルウェー・モデル誕生の経緯
――このトレーニング法はノルウェー代表としてオリンピックや世界選手権に出場された自身の競技生活の中で生み出されたそうですね。初期の頃は全く異なるトレーニングを行っていましたが、そこから新しいアプローチを求めたいきさつを教えていただけますか?
「私は1990年代に伸び悩みました。当時は『レースでパフォーマンスを発揮するためにはレースペースでトレーニングしなければならない』という考えに基づいて、レースペースで多くの練習を行うことに重点が置かれていました。しかしそれでは私の走力を向上させることはできませんでした。この伸び悩みが、新しい手法を探求する原動力となり、コーチらと協力して体系的でデータに基づいたトレーニング法を模索し始めました。私は医師として、科学的アプローチを用いることに慣れているのです」
――どのような科学的アプローチを行ったのでしょうか?
「私自身の身体で一定期間に5500回以上の乳酸テストを行いました。このテストを通じて、私はLTを高めることの重要性を発見しました。それまで一般的に言われていた閾値トレーニングに適した乳酸値は、4ミリモル(ミリモルは乳酸濃度の単位、一般的にハーフマラソンペース相当とされる)前後でしたが、これはアマチュアランナーの研究に基づくことが多く、エリートランナーにとっては実際には高すぎることが分かりました。乳酸値を3ミリモル以下(一般的にフルマラソンペース前後か少し遅いペースとされる)に下げることで、私ははるかに良い結果を得ただけでなく、疲労することなく閾値トレーニングをたくさん行うことができたのです。この発見は、『閾値トレーニングでは十分な刺激を得られない』という従来の論争を真っ向から否定するもので、トレーニング哲学の根本的な転換を示すものでした」
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「ノルウェーモデル」は多くのノルウェー市民ランナーにも取り入れられている |
二重閾値走の誕生
――ノルウェー・モデルの最も特徴的な要素のひとつに、二重閾値走(ダブル・スレッショルド)があります。どのようにしてこの方法に至ったのですか?
「1週間のトレーニングサイクルの中で、閾値トレーニングの効果を最大化するためにはどのパターンが最も効果的か、3つのアプローチをテストしました。比較テストを通じて、私は『1日に数回の閾値トレーニングを行う。閾値トレーニングを行った後は少なくとも1日軽い練習日を挟む』というアプローチに優れた効果を見出しました。そして99年以降、1日2回(朝と夕方)閾値トレーニングを行う日を週2回設けることで閾値トレーニングの量を最大化する二重閾値走を実践するようになりました」
――ノルウェー・モデルが従来の方法より効果的なのはなぜですか?
「このモデルは、LTを最大まで引き上げるように設計されています。それにより、速いスピードを長時間持続する能力が向上するのです。これは5kmや10kmのレースでパフォーマンスを発揮するために最も重要な要素です。従来より遅いペースでの閾値トレーニングにより、より強度の高い練習に比べて筋肉への負担を大幅に軽減しながら、より多くの閾値トレーニングを行うことができます。これにより、オーバートレーニングや筋疲労のリスクが軽減されるのです」
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今月20日発売のランナーズ8月号では、インタビュー全文のほか、ノルウェー人エリートランナーの1週間のトレーニング例も掲載しています。
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