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「脂肪」を燃やして効率的に走りたい!(PART2) 走り続けるために欠かせない『ミトコンドリア』の働き。どうキープすれば良いの?

2021年11月26日

Question
フルマラソン終盤で毎回ガクッとペースが落ち、ガス欠になりがちです。持久力を高めるにはどうしたらいいでしょうか?

Answer
酸化ストレスの「ミトコンドリア」への影響を打ち消すために「シスチン」をしっかり摂取しておくのが大切。最後までパフォーマンスを維持できる身体作りができる!


回答者:深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)


トレーニング効果と表裏一体で影響を受ける「酸化ストレス」

―――PART1では、持久的なトレーニングをすることによって、エネルギーを作り出す『ミトコンドリア』の働きを高め、脂質(体脂肪)をうまく使ってより効率よくエネルギーを生み出し続けることができる、ということを教えていただきました。レース後半のガス欠対策もできそうです!


深野先生(以下F):そうですね、ミトコンドリアの働きを高めるためにも、持久的なトレーニングを継続するようにしてみましょう。

ある程度走る習慣のある方へのおすすめは、練習メニューを組む際に、ジョギングやLSDなどの低強度の持続的なトレーニング(ラク~少しキツいと感じる強度の運動)と中~高強度のトレーニング(キツイ~かなりキツイ)…例えばジョギングのラストでペースアップする、インターバルトレーニングやペース走、ビルドアップ走、持続的な坂道走など…を組み合わせることです。(これまで運動習慣のなかった方の場合は、まず低強度の持続的なトレーニングを継続することから始めてみましょう!)

――いつものジョギングに、負荷の高いメニューをプラス、かな。それなら実践できそうです!

F:ただし、知っておいていただきたいのが、長時間の運動やハードなトレーニングによる酸化ストレスが『ミトコンドリア』にかかってしまうこと。エネルギーを生み出す力が弱まり、疲労の原因やパフォーマンスの低下にもつながってしまうんです。

――ええっ。それじゃどうしたらいいんですか? トレーニングすることで同時にダメージも負ってしまうなんて…!

F:まずは「酸化ストレス」について、ちゃんと知っておく必要がありますね。

――酸化と言うと「活性酸素」が発生する、ということ……ですよね? あの、老化の原因と言われ、身体を傷つけるという物質……。やだなあ。

F:活性酸素は何も特別なものではなくて、普通に生活したり、呼吸している中でも生成されています。たとえば、普通の呼吸で取り込んだ酸素のうち、1~5%は活性酸素に変換されているんです。実はマイナスなイメージの強い活性酸素ですが…プラスの面もあって、細胞内での情報伝達や免疫機能としても働いています。

また、身体にはその活性酸素に対する防御システムもちゃんとあるんです。それを担っているのが“抗酸化物質”です。(“抗酸化物質”には、体で作られるもの(酵素)と、食事からとりこむもの(ビタミンA・C・Eなど)があり、それぞれがバランスを保ち、協力しながら働いています。活性酸素はその防御システムによって消去されたり、無毒化されています。ただし活性酸素の発生と、それを消去・無毒化する力のバランスがとれていればよいのですが…。

運動時(特に長時間行う場合や、強度が高い場合)には活性酸素が飛躍的に生成されてしまうため、活性酸素を消去・無毒化するバランスが崩れて、「酸化ストレス」が引き起こされてしまうんです。エネルギーを生み出す工場のような役割をしている『ミトコンドリア』は酸化ストレスによりその働きが低下してしまい、作り出されるATPの量が減ってしまうんです…


ミトコンドリアの働きを守ってくれる「シスチン」

――そういうことでしたか! トレーニングでは呼吸も激しくなるし、心臓も忙しく動くし……酸素をたくさん必要とする限り、活性酸素もたくさん生成されるんですね。ランナーである限り活性酸素の悪影響は避けられない…!?

F:はい。ランナーである限り、活性酸素の発生はどうしても避けることができないのです。…ただ、酸化ストレスから『ミトコンドリア』の働きを守るための対策はできます! なかでも注目したいのが、アミノ酸のひとつであるシステインが2つ合わさった「シスチン」です。

「シスチン」は、酸化ストレスから身体を守ってくれる“グルタチオン”という物質を作ります。 “グルタチオン”は抗酸化物質のひとつ。酸化ストレスから『ミトコンドリア』の働きを守ってくれるんです。シスチンを摂取することで運動中に脂質(脂肪酸)の利用を高める効果が期待されたり、運動中の疲労感が軽くなり、良いパフォーマンスをキープできるよう働きかけている可能性も考えられています。

――そうか、つまりシスチンは「ミトコンドリア」の働きを、酸化ストレスのダメージから守ってくれるということですね!

F:その通りです! 長時間、また強度の高いトレーニングではどうしても酸化ストレスにさらされることは避けて通れません。目標レースでしっかり良いパフォーマンスが発揮できるよう、しっかり質の高いトレーニングを継続していく工夫も大切ですね。

特にマラソン大会に向けて長時間のトレーニングや、強度の高いトレーニングを行う場合、運動30分前、運動直後~30分を目安にサプリメントで「シスチン」を補給するのもおすすめです。また、活性酸素に対抗するためには、日々の食事も重要です。さまざまな抗酸化物質を含む食べ物を摂るのが不可欠です。

抗酸化物質として働く栄養素は、ビタミンA(β-カロテン)、C、Eやフラボノイド等があげられます。

具体的には…
・ビタミンA(β-カロテンなど):トマト、パプリカ、にんじん、ほうれん草などの緑黄色野菜
・ビタミンC:パプリカ、水菜などの野菜、キウイ、いちご、グレープフルーツ等柑橘系の果物、じゃがいも等
・ビタミンE:アーモンド、ほうれんそう、さつまいも、アボカド、かぼちゃなど
・フラボノイド類:ベリー類・茶・たまねぎ・ブロッコリー・柑橘系の果物・大豆など

もちろん!大前提として、練習量に見合ったエネルギー量と栄養バランスの整った食事をとることが大事。主食、主菜、副菜、汁もの(果物、牛乳・乳製品)を揃えて、さまざまな食材から栄養素をバランスよく摂りましょう。

――活性酸素を除去してくれる食材を取り入れて、しっかり栄養を摂りたいです! 

F:食事で摂り切れない分は、補食やサプリを上手に活用してみてください。きっとミトコンドリアの質も高まり、レースでもエネルギーを持続させることができますよ。

――ありがとうございます! トレーニングでミトコンドリアを増やし、シスチンや抗酸化物質を含む食べ物でミトコンドリアを酸化ストレスから守る。これでゴールまで走り抜きたいです!

F:はい、しっかりがんばってくださいね!

PART1はこちら



《参考文献》
・アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ
パフォーマンスとエネルギー利用の関係!『シスチン』は脂質をエネルギー源として活用し、疲れを軽くしてくれる
https://sports-science.ajinomoto.co.jp/knw03_cystine/
・新版 乳酸を活かしたスポーツトレーニング 八田秀雄 講談社
・スポーツ栄養学ガイドブック  東京大学出版会




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