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RUNNET TRAIL

トレラン・レースリポート

  • ウルトラトレイル・マウントフジ(通称:UTMF)

開催日: 2015年9月25日(金)~27日(日)
開催地: 山梨県・静岡県
UTMF(約170.3km): 出走者数1,368人、完走者数567人/STY(約80km): 出走者数976人、完走者数856人

写真提供/NPO法人 富士トレイルランナーズ倶楽部

完走率41.5%! 全長170km超の最難関レースに
トレイル歴3年の女性バイオリン講師が挑戦!

関門との闘い&まさかの嘔吐で早くもピンチ

スタートしてから約46km地点、ウォーターステーションの「麓」には両親が来てくれました。トレランを知らない母は「ゆっくり休んでいきなよ~」。この言葉に油断し1時間10分滞在。直後の天子山地は案の定渋滞。流れに合わせますが計画時間よりだいぶ遅れ、焦りだします。
雨の影響で上りも下りも泥々の斜面。ツルツル滑って登れない人、派手に転ぶ人、苦戦している人がほとんどでした。
そんな中でも私が良かったのは、沢登りと雪山の経験でした。泥地は苦ではなかったし、足を取られることもなく、転ばずにすみました。
長者ヶ岳で休憩予定でしたが、時間が押していたので休まず下山。ベンチで休んでいた人たちがみんな無言で静かだったのが不気味でした。

ロードに入ると周りに誰もいなくなり、走っても走っても誰にも会わず不安になりました。やっと歩いている人を見つけましたが、声をかけても無反応。「わっ、この人疲れ果ててる!」
その後もこういう人がたくさんいました。
そろそろ関門のある約70km地点の「富士宮」エイドに着くんじゃないかと思った矢先、「あと5kmでーす」というスタッフの声。えっ、関門時間(26日土曜日・午前5時)ギリギリになってしまう!エイドに入ってもすぐ出なきゃならない。やばい!

そこから走って走って(と言ってもゆっくりですが)、必死に進み続けました。長い。みんな走っていません。疲れているのか、制限時間内の通過を諦めているのか。
夜が明ける。富士山のシルエットがきれいに見える。そんな薄闇に重い脚どりの影がポツリポツリ。なんだか戦地みたい。ここにいる人たちは、なんとかギリギリで生き残っているという感じでした。
まだ半分にも到達していないのに、関門にひっかかるわけにはいかない。遠い。なかなか着かない。きつい。

富士宮エイドに駆け込んだ瞬間に仲間が迎えてくれ、安堵で放心状態になりました。
「キツかった~ヤバかった~みんな走れてないよ…」と思わず涙。
結局、関門は1時間延長されましたが、1時間延長したところで大差がない気がしました。渋滞していたし、まだまだ沢山の人が山にいる。下山してからもエイドまでの道のりは長い。後に約700人がここでリタイアと聞きました。
静かで重い空気のエイド。お汁粉やうどんを食べていましたが、なんだか気持ちが悪くなってきました。まだ半分も来てないのにこの先大丈夫だろうか…。

不安を抱えつつ、とにかく出発。すると5分経たない内に突如嘔吐!びっくりしました。今までレースで吐いたことはなかったのでパニックになりました。それも何度も。一緒に涙が溢れてきました。こんなところで? もうダメ? さっきの関門を乗り切ったのに、頑張ったのに、みんな応援してくれているのに、絶対完走したいのに!!
泣きながらとぼとぼ歩いているとまた嘔吐は続く。私モリモリ食べられるのが取り柄だったのにな。
でも吐き切ったらスッキリしたようで、水筒の白湯をちびちび舐めるうちに落ち着いてきました。レース中、復活した話も聞いたことあるし、富士宮まで頑張りすぎたんだ、と思い込んでみます。歩ける。大丈夫。絶対完走するんだから。母に電話してエネルギーゼリーとお粥と温かいスープの準備をお願いしました。
幸いその後走れるようになり、約90km地点の「富士山こどもの国」で15分横になると、顔色もマシになり、約98km地点の「富士山資料館」で母のお粥を食べて完全復活しました。

足元が悪く、上りも下りも苦戦するランナーが多かった。ときにはこんな渋滞も
足元が悪く、上りも下りも苦戦するランナーが多かった。
ときにはこんな渋滞も

46.5km地点のウォーターステーション「麓」には、多くのサポーターが選手を待ち構えている
46.5km地点のウォーターステーション「麓」には、
多くのサポーターが選手を待ち構えている

水分、補給食、そしてカメラのフラッシュ! 仲間の温かいサポートが力をくれる
水分、補給食、そしてカメラのフラッシュ! 
仲間の温かいサポートが力をくれる

渡辺さんのサポートにはご両親も。お母さん手作りのお粥が復活の力に!!
渡辺さんのサポートにはご両親も。
お母さん手作りのお粥が復活の力に!!


仮眠のはずが……

135km地点の「山中湖きらら」に着いたのはスタートからすでに32時間半が経過した26日土曜の夜9時半。特に眠気はなかったけれど15分仮眠をとっておきました。140km地点の石割山で、前を歩く女性がふらふらしています。「眠くて…」と言うので「じゃあ一緒に行きましょう」と話しながら歩きました。しばらくすると「おかげで目が覚めました。ありがとう」と言ってくれ、大会中のこういうのいいな、と思いました。

レース終盤、最大の難関・標高1597mの杓子山に向かう渋滞で止まっていると私にも睡魔が!どうしようもなく眠い!立っていると危ないのでしゃがんでウトウトしながら渋滞を待ちました。長かった。渋滞を過ぎても眠気は酷く、歩いていると寝てしまう。
サポートのみんなには申し訳ないけれど、156km地点、最後のエイドステーションの「富士小学校」でもう一度仮眠を取らせてもらおうと決めて、突っ走りました。エイドに着く頃には夜が明けてきたので眠気は少し薄れてきましたが、快適なゴールのために仮眠をとることに。ところが、そのまま爆睡。アラームでも、サポート役で待機してくれていた石井さんからの電話でも起きず(編集部注:仮眠所には選手以外は入れない)、石井さんに頼まれたスタッフさんが起こしてくれました。
この仮眠はとてもスッキリしました。石井さんからは「制限時間内の完走に間に合わなくなるから早く出なさい!」と追い立てられながらもうどんを頂き、いよいよゴールに向けて出発です。

エイドステーションでは、こんなスタッフの笑顔に救われる
エイドステーションでは、こんなスタッフの笑顔に
救われる

仲間の手厚いサポートのおかげで快適にレースができた
仲間の手厚いサポートのおかげで快適にレースができた

こんなにドロだらけの選手も! すさまじいレースの様子が想像できる
こんなにドロだらけの選手も!
すさまじいレースの様子が想像できる
ほとんど見られなかった富士山、ときに奇跡的に顔をだすことも!(写真は優勝したリトアニアのジェディミナス・グリニウス)
ほとんど見られなかった富士山、ときに奇跡的に
顔をだすことも!(写真は優勝したリトアニアの
ジェディミナス・グリニウス)
この大会の魅力はやっぱりこれ! 「富士山ぐるり1周」を実感できる瞬間
この大会の魅力はやっぱりこれ! 「富士山ぐるり1周」を実感できる瞬間

→→→感動のフィニッシュ!! 本人もビックリの通算エイド滞在時間は?




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