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フルマラソンシーズン真っ盛りの今、今週末・来週末以降もレースを控えている方が多いと思いますが、レース中「脚つり・痙攣」に悩むランナーは多いのではないでしょうか。そんな方に参考にしていただきたい、研究者の髙山史徳さんが示す解決法をご紹介します。
「記録を狙うレースで35kmあたりで必ずつる」という、サブフォーを目標に走る小島茂さん(56歳)の悩みに対し、研究者の髙山史徳さんが解決法を考えました。
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髙山 痙攣の原因については主に「脱水や電解質(主にナトリウム)の損失」「筋肉につながる運動神経の異常収縮(神経筋コントロール不全)」の2つの説があります。ただ、どちらかの説で完全に説明できるわけではなく、近年では様々な要因が複雑に絡む多因子理論が、有力になっています。ひとつ興味深い研究があります。56kmレースを完走したランナーを対象にした研究(※1)で、つった人とつらなかった人を比べたものです。その結果とは、脚つりを発症したランナーは「①過去につった経験がある」「②レース直前(3日前以内)の練習量が多い傾向にある」「③レース前のクレアチンキナーゼ(CK)(※2)が高い傾向にある」「④レース前半のペースが速い」「⑤運動前にストレッチを実施している人が多い」というものです。
小島 私、この中で①はもちろん、②と④もあてはまります。
髙山 ということは、筋ダメージが残った状態でスタートしている、かつレース序盤から筋への負荷が高いことで、筋肉をコントロールする運動神経に過剰な負担がかかり、脚つりにつながっている可能性がありそうです。他にも、発症者・未発症者間で血液中のナトリウム濃度や(脱水に関係する)体重の減少などの項目に差はないが、発症したランナーはレース後のCKが高いなど(※3)、筋へのダメージと脚つりが関係しているデータも多いです。
小島 よくレースに向けて練習量を落としていくと聞くのですが、エリート選手の話であって、サブフォーを狙う私のレベルであれば必要ないと思っていました。
髙山 脚つり対策としてもですが、タイムを狙うのであれば絶対やった方がいいです。テーパリングの効果は、市民ランナーであっても得られます。また、体力はそう簡単に落ちない一方、筋肉のダメージは意外と残りやすいという面もあります。ところで小島さんは筋トレをしていますか。「脚つり未発症者は筋トレの実施率が高い傾向にある」(※3)という結果がでています。
小島 筋トレは大嫌いなんです。筋肉痛が怖くて……。
髙山 レースではどれくらいのペースで走っていますか。
小島 最近はサブフォーが目標で、最初は5分20秒ぐらいです。
髙山 5分20秒だとゴールタイム3時間45分のペースですね。それは速すぎると思います。レース当日、ウォーミングアップはしますか。
小島 ジョギングの後、100mを2、3本、息を上げてダッシュします。
髙山 アップによって、レース前から筋への負担を高めてしまっているのと、最初から速いペースで走れてしまう、というのも要因としてありそうです。まとめると、小島さんは、①テーパリングをしていない、②直前にたっぷりウォーミングアップをしている、③前半のペースが速い。これらは、筋肉やそれをコントロールする運動神経に過剰な負担をかけることにつながっていて、これが35㎞あたりでの脚つりを起こしていると考えられます。一度「テーパリングをしてみる」「ウォーミングアップを減らす」「最初5分40秒(またはもう少し遅い)ペースで入る」を試してみてください。
※1 Schwellnus et al. (2011) Br J Sports Med, 45, 1132–1136.
※2 CK は体内で産生される酵素で筋肉の炎症や損傷などの問題を検出するのに役立つ
※3 Martínez-Navarro et al. (2022). J Strength Cond Res, 36, 1629–1635.
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