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パリ五輪マラソンコースを試走! 後半の上りは「箱根以上」!?

2024年8月07日
スタート地点であるパリ市庁舎
スタート地点であるパリ市庁舎

パリ五輪のマラソンコースを読売新聞の近藤雄二編集委員が実際に試走。ランナーズ9月号の寄稿レポートを全文転載します。


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いよいよパリ五輪が開幕します。思い起こせば、3年前の東京大会はコロナ禍の無観客。前代未聞の非常時に参加した選手たちには、気の毒な経験をさせました。通常開催が戻る今大会では、大観衆の熱い声援の前で、最高のパフォーマンスを発揮してもらいたいものですね。

さて、皆さんの注目競技は何でしょうか。ランナーズ読者の皆さんなら、やっぱりマラソンは気になりますよね。実は私、読売新聞の企画で5月に全コースを走ってきたのです。そこで、ランナーズ読者の皆さんにもコースの特徴を紹介し、レースを展望してみようと思います。

今回のマラソンコースは1789年のフランス革命で、食糧不足に怒ったパリの女性たちを中心とした市民が、国王ルイ16世が住むベルサイユ宮殿までの片道約20kmを歩き、国王をパリに連行した「ベルサイユ行進」に着想を得て設定されました。

今年のパリ五輪は、史上初めて男女の選手数が同数となることで注目されています。女性が輝く歴史の節目にふさわしい着想です。しかし、パリ市街とベルサイユ宮殿の間には森があります。行きの20km付近と帰りの29km付近に山越えが待ち受け、「五輪史上最も過酷」と呼ばれる難コースとなりました。

スタートから5kmまでは、市内の観光名所を巡ります。5km手前にあるルーブル美術館入り口となるガラスのピラミッド前は、でこぼこの石畳となっていました。5km地点までに大小14のコーナーがあって、序盤はクレバーなコース取りが求められます。

上り始めるのは15km付近。20km過ぎの標高183mの最高点まで、上りと平地を繰り返しながら150mほど上ります。19km付近からの一直線の坂は、精神的にきついものがあります。最高点の後は下り。一気に加速する急な傾斜の後、徐々にならだかになり、23km付近のベルサイユ宮殿に達します。そこで左に2度曲がるとパリへの帰路。以降も5kmほど下り基調が続き、この辺りはハイペース必至です。

2度目の上りは28km手前から。短い急坂の後、いったん平地になって、最大勾配13.5%の坂が壁のように迫ります。箱根駅伝5区の急坂が7~8%なので、とんでもない激坂です。まさに心臓破り。選手たちの苦悶の表情が思い浮かびます。

29km付近で標高172mの頂上に達し、続いて最大勾配13.4%の激下り。恐怖すら感じる坂を、五輪選手はどんなスピードで下るのでしょうか。3kmほどの下りの後、残り約10kmはほぼ平坦。速さより強さ、切れ味よりタフさがカギとなる難コースです。一つペース配分を間違うと、終盤の失速を招きます。観る側にとっては、番狂わせや波乱が起きやすい、ワクワク、ドキドキのレースが期待できそうです。


中盤から後半にかけては2つの大きな上り坂がある
中盤から後半にかけては2つの大きな上り坂がある
レース終盤はエッフェル塔の脇を通過
レース終盤はエッフェル塔の脇を通過

日本勢は男子に小山直城(Honda)、赤﨑暁(九電工)、大迫傑(Nike)、女子に鈴木優花(第一生命グループ)、一山麻緒(資生堂)、前田穂南(天満屋)の6選手が出場します。

昨年、コースを試走した小山選手は「力勝負では海外選手に負けてしまうかもしれないが、アップダウンや暑さの要素があるので、日本人にも十分可能性がある」と語っています。

小山、鈴木両選手には、なんと言っても一発勝負のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を勝ちきった「勝負力」があります。赤崎選手は起伏の多い今年の青梅マラソンで優勝し、さらに日本選手権1万mで7位入賞と、スピード面でも進化を遂げています。

大迫、一山両選手は、いずれも東京五輪で入賞を果たした経験が強みとなるはずです。そして、前田選手は、アテネ五輪金メダルの野口みずき選手の日本記録を、19年ぶりに更新した揺るぎない実力があります。起伏をしっかり走り込み、厳しいアップダウンを味方にできれば、小山選手が語ったように、日本勢がアフリカ勢を打ち破る可能性も十分あるでしょう。

ただ、やはり本命はアフリカ勢。男子には、ケニアから五輪3連覇を狙うエリウド・キプチョゲ選手、今年の東京マラソンを制したベンソン・キプルト選手らが出場予定。エチオピアからは2時間1分台のシサイ・レンマ選手、42歳のケネニサ・ベケレ選手らが名を連ねました。女子は、2時間11分53秒の世界記録を持つエチオピアのティギスト・アセファ選手を筆頭に、ケニアからは前回金メダルのペレス・ジェプチルチル選手、銀メダルのブリジット・コスゲイ選手も代表に決まっています(※)。

※ブリジット・コスゲイ選手は7月にケガのため代表辞退を発表



五輪史上最も過酷なコースが、本命有利に働くのか、波乱要素となるのか。4年に1度の大一番が待ち遠しいですね。読売オンライン では、私の走った動画も見られますので、激坂にご興味のある方はぜひご覧ください。


こんどう・ゆうじ
読売新聞編集委員。早稲田大学の人間科学部の一期生として入学。在学中に箱根駅伝出場。新卒で読売新聞入社。2012年ロンドン五輪は大会前から現地に赴任し取材を行った。1968年生まれ、千葉県出身。



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