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有森裕子さん、川内優輝さんをはじめ豪華ゲストが勢ぞろい! 10km付近では有森さんにハイタッチしていただけた
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みなさんこんにちは。まず結論から申し上げます。目標としていた4月21日のかすみがうらマラソンでは3時間30分切り達成ならず、無念のフリーライター・岩谷隆志です。
結果は4時間11分36秒。自己ベスト更新はおろかサブフォーさえも逃す大惨敗でした。「こんなの初めてじゃないか」くらいのマラソンでの挫折感、敗北感。今はその余韻に浸っているところです。余韻に浸っているというのもおかしな言い方と思われるかもしれませんが、意外にも心は晴れやかです。自分なりに精一杯やった上での結果ですから悔いはありません。
マラソンに今回ほど真剣に向き合った経験は、正直今までありませんでした。還暦過ぎにして、RUNNETで公言の上、このようなチャレンジさせていただいたこと自体、感謝に堪えません。大谷翔平選手じゃないけれど、ひりひりする2~4月を過ごすことができました。
さて、今回のレース戦略はというと、去年11月のつくばマラソンで14年ぶりの自己ベスト(3時間39分34秒)を出した時と同じようなネガティブスプリットで走ること。
つくばでは、最初の5kmは混雑して走りにくくても、焦らずウォームアップのつもりで5分30秒ペースでゆっくりと入る。その後30kmまでは、楽に走れる範囲内で少しずつペースアップしていく。そして30kmを過ぎたらいよいよ覚醒。ここからやっと本気で走り始め、ラスト5kmは全力で出し切るという走り方でした。
この戦略が功を奏したのか、予想以上にラストがペースアップでき、3時間43分20秒の自己ベストを1秒でも更新できたら御の字……と思っていたところ、4分近く短縮し、まさかの40分切りという結果が出せたのです。
この成功体験を、今回のチャレンジでも再現したい。つくばの時よりややレースペースをアップさせ(5分10秒以内)自己ベストを連続更新。終盤の大幅ペースアップであわよくば3時間30分切り達成!と目論んでいました。
レース前の2週間は前回ここでお話ししたように、ランナーズ2024年1月号に掲載された「本番1週間前の猛練習で、フルマラソン快走!?」を参考にしました。一発逆転を狙っての猛練習として、インターバル走やビルドアップ走など追い込む練習を連日こなしてきました。コロナ感染明けということもあり、追い込み切れない場面もありましたが、5km計測走では大会を含めて手術後ベストの23分28秒で走るなど、調子も悪くはありませんでした。本番3日前からは走らずに休養に充て、さてこの期間でどれだけ超回復するものか。本番でどれだけ走れるか楽しみ。そんな期待感さえ持ってレースに臨んだわけです。
スタート直後は余裕の笑顔、まだ元気いっぱい。
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ところが蓋を開けてみると、つくばの時とは何かが違っていました。
スタート直後は、走りにくくてもゆっくり走るはずだったのに、なぜか焦っていました。つくば以降、練習もまあまあ積んできて、走力アップしているという自負があったせいでしょうか。思い通りのペースが出せなくて苛立ち、前に少しスペースが空いたと思うとペースを上げ、そしてまた混雑でペースダウンという繰り返し。5kmを過ぎた頃、いよいよ混雑も解消し走りやすくなったと思った途端、気がつくとなんと15秒以上もペースアップしてしまうという愚行……。今思えばこれが致命傷でした。ペースの上げ下げは禁物という基本の基を守れなかったのです。
ネガティブスプリットで徐々に上げていくはずが、15kmを過ぎたころには徐々にペースダウン。330の夢はもちろん自己ベスト更新も遠のく中、それじゃあせめて350切り……と思うも、そのペースも保てなくなり、じゃあせめてサブフォーを……と思っても身体が動かなくなって大失速。いよいよ歩きも入って途中棄権の文字までよぎる始末でした。
なんとかたどり着けたフィニッシュ地点。笑顔も消え、へろへろの状態
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私はこれまで60回以上フルマラソンを完走していますが、実はただ一度だけ途中棄権をしたのが、このかすみがうらマラソンでした。その時は足首の関節が痛くなり、これ以上走ったら選手生命に関わる(!?)という判断のもと途中棄権。しかし、今回は「身体がきつい!」というだけで、幸い選手生命に関わる類のものではありませんでした。気力が続くかどうかだけの問題でした。
この時私は、村上春樹氏が著書『走ることについて語るときに僕の語ること』で、あるマラソンランナーがレース中に反芻するマントラ(言葉)が興味深い、と言っていたのを思い出していました。そのマントラとは「Pain is inevitable, but suffering is optional.痛みは避けがたいが、苦しみはオプショナル(こちら次第)」。これは、走っていて「きつい、もう駄目だ」と思ったとして、「きつい」というのは避けようのない事実だけれど、「もう駄目」かどうかはあくまで本人の裁量に委ねられているということ。「この言葉は、マラソンという競技のいちばん大事な部分を簡潔に要約している」と村上氏。どんどんペースダウンしていく私は、まさにこの状況でした。
「もう駄目」と言うのか? 言わないのか? ……「言わない!」。
私はそう自問自答して、再び走り出しました。とりあえず、きつくても身体を動かし続けよう、そうすればいつかはゴールにたどり着くはず。ペースダウンしてからは、それは長い道のりでしたが、なんとか4時間超えで完走。足首手術復帰後のワースト記録となってしまいました。
冒頭でも書いたように、意外にも心は晴れやかです。大惨敗の中でも「マラソンという競技のいちばん大事な部分」にも向き合うことができ、「もう駄目」と言わず完走できたことについては、少しだけ自分をほめてもいいのかなと。今回のチャレンジは決して失敗ではなく、貴重な経験ととらえ、次に必ず活かせるはずと思いました。
コロナ感染による練習不足や、レース当日の暑い気象条件など、想定外のことも起こり残念な面も多々ありましたが、私はもう前を向いています。秋の大会での330達成に向けてエントリー日のチェックに余念がありません。
この連載で取り組んだトレーニングメニューは、結果に結びつかなかったものの効果は実感できているので、今後も引き続き継続していきたいと思います。暑い夏を走り込み、今回の貴重な経験をもとに走力アップし、この場で再びリベンジ連載ができるようトレーニングに励みたいと思います。皆さま、ありがとうございました。To Be Continued!
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岩谷隆志/いわやたかし(61)
フリーランス・ライター兼コピーライター時々デザイナー。ひょんなことからランナーズ2023年3月号「『生涯ベストは47歳までに狙うべし』に一言申したい!」の記事を担当。万年サブフォーを行ったり来たりだった還暦ランナーが、この執筆を機に一念発起! 2023年11月に自己ベストを14年ぶりに更新(3時間39分34秒/つくばマラソン)。次の目標は3時間30分切り。
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