![]() 今月で監督を退任する大八木弘明氏と新監督に就任する藤田敦史氏。
駒澤大学陸上競技部「道環寮」前にて(写真/北川外志廣) |
3月5日(日)に開催された東京マラソン2023。
日本人1位となった山下一貴選手(三菱重工)、2位の其田健也選手(JR東日本)は共に駒澤大学出身。
大学時代、2人を指導したのは同校を28年率いる大八木弘明監督(64歳)。
同校は今年の箱根駅伝で8度目の総合優勝を果たし、大学駅伝三冠を達成。
箱根駅伝の優勝記者会見で大八木監督は今年3月での勇退を発表しました。
現在発売のランナーズ4月号では、大八木監督のインタビュー記事を掲載。
今回はその中から「箱根から世界へ」の先端を走る大八木監督の指導方法について紹介します。
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――駒大を “平成の常勝軍団” に育てられました。しかし2009年から12年間優勝から遠ざかり、シード落ちも経験しています。
大八木 「30年近い歳月ですから、色々と変わりました。時代というより目標が変わり、トレーニングが変わった。(箱根は)ウチは私が最後に走った1986年の総合4位が最高で、予選会から出場の繰り返しだった。箱根で勝つために呼ばれましたから、初めはとにかく20kmの(レースを走れる)選手を作るため練習量をこなした。3年目から結果が出て優勝(出雲駅伝)できましたが、学生スポーツの難しさというか面白さで、チームは変わるんです。藤田は私がコーチに就任した年に入学し、マラソンを走らせたら面白いと思っていました。今度、勝つようになるとトラックでも勝負できる選手が入ってきた。将来、オリンピックや世界選手権のトラック競技で日の丸を背負えるかもしれない選手たちですから、箱根を目指したスタミナトレーニングだけとはいきません。大学チームとして箱根が最大のイベントで20kmのロードを走る練習を積まないといけないけれども、トラックのスピード練習も必要になってくる。こうした伝統校と違う悩みは、その後の東洋大や青山学院にも共通して言えることでしょう。駒大には前例がなかったので切り替えが難しかった」
――藤田敦史はマラソンの日本最高記録を作って世界選手権に出場し、中村匠吾は東京オリンピック代表、田澤廉が在学中に世界選手権代表と、駒大は「箱根から世界へ」の先端を走ってきました。
大八木 「指導方法も変えました。私が一方的に与えるのではなく、二者択一のメニューを出して選手に選ばせ、自己責任で考えさせるようにしました。その辺は時代の変化で、我々の時代とは違います。それと、特に長距離選手は自分で作り上げる部分が大きいから、刺激は大事です。今回の優勝も、本調子でなかったとはいえ田澤の存在は大きかった。世界選手権の代表選手が同じグラウンドで練習していますから。漠然と世界を目指せと言わなくとも、目の前に世界で戦う選手がいますから。今回は下級生だけでなく、同じ4年生も刺激を受けた。田澤がユージーン(世界選手権)から帰ってから、オレだっていつまでもやれないということを4年生に話したんです。そうしたら、勝って卒業したい、三冠を取りましょうって、私以上に4年生が言い出した。正直、私たち世代に三冠という言葉はあまり馴染みがないんです。箱根のためという意識が強い。私が三冠でうれしかったのは、皆さんが祝ってくれる “三冠” とちょっと違うかもしれない。理想的なチームで理想的な結果が出たことがすごくうれしい、指導者としてですね」
(聞き手/武田薫)
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福島県立会津工業高校卒業後、小森印刷(現小森コーポレーション)に入社。24歳で駒澤大学2部に進学し昼は川崎市役所で働きながら箱根駅伝に3度出場(うち2回区間賞獲得)。卒業後、ヤクルトに入社し陸上競技部コーチ兼選手となる。1995年に母校・駒澤大学陸上競技部コーチに就任。2002年に助監督、2004年に監督に就任。1995~2022年度までに学生三大駅伝(出雲・全日本・箱根)通算27勝。1958年生まれ、福島県出身。
現在発売中のランナーズ4月号では、名将が今後、何を目指すのかを語っています。
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