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北海道マラソンを2時間29分52秒で優勝した山口選手(写真/釜石由起)
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8月28日(日)に3年ぶりとなる北海道マラソンが開催。リニューアルされたコースに1万8290人が出走、1万6524人が完走しました。
男子は東京国際大学のルカ・ムセンビ選手(21歳)が2時間10分49秒で優勝。女子は主婦ランナーの山口遥選手(35歳)が2時間29分52秒で制し、パリオリンピック選考会のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の切符を手にしました。
山口選手は玉川大学出身で、卒業後は市民ランナーとしてランニングを継続。2010年の初マラソンは3時間0分13秒でしたが、徐々に記録を伸ばし、2020年の大阪国際女子マラソンでは2時間26分35秒で7位になるなど日本トップクラスのランナーに成長しました。今年3月、山口選手を指導する安田享平コーチにインタビューし、ランナーズ6月号に掲載した内容を紹介します。
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山口選手の加入当時を市民ランニングクラブAC・KITAの安田コーチは懐かしそうに回顧する。
「駅伝メンバーに入ったことがないとはいえ、強豪の玉川大学の出身で、トラックのタイムはウチにいないレベル。3000mを10分切った選手が入ってくることはなかったので、こちらにしたらとてつもないスーパースターですよ」
マラソンは最初から2時間40分くらいで走れるだろうと思っていた。しかし、2010年つくばでの初マラソンで3時間を切れず、期待を裏切った。「私自身、かなり落胆しました」
何が欠けているのか、駅伝に出してみて、すぐに分かったという。「追い込まれたときの頑張りが利かない。市民ランナーの先輩たちの方がよっぽど根性がある。期待されたら、それを背負って、もがくことが大事なのに、それが全くなかった」
大学時代のトレーニングが足りず、基盤ができていないのも明白だった。「根本的に練習をしてこなかったんだなと思いましたよ」
AC・KITA入り後の練習は山口選手の学生時代より質量とも上回るという。ほぼ毎週行う30km、40kmの距離走(現在の設定はキロ4分30秒)では最後の2、3kmだけペースアップさせる。「2時間以上動いた後にキロ3分20秒を切るところまで上げられるようになったので、体力が付いたんでしょう」
トラックでは2020年に5000mで15分34秒04、2021年に1万mで32分9秒44の自己ベストを出した。
「私の指導経験上、トラックの記録は1年後にマラソンに反映されるので、楽しみ」と安田コーチは話す。「20代でがつがつやってこなかったので、まだまだいける。本当は彼女のように競技に集中できる環境があれば、女子の場合30~40代でも記録を伸ばすことは可能なんです」
山口選手は筋トレも体幹トレーニングも栄養管理もせず、レースでスペシャルドリンクも置いていない。厚底シューズも敬遠している(※編集部注・北海道マラソンでは厚底シューズを着用)。安田コーチは「上を目指すにはやった方がいいでしょう。まあ、それだけやるべきことが多いので、伸びる余地がある」と捉えている。
「この先にあるのは日の丸。オリンピックとかの次元に入ってきた」。意識するのはマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)への出場だ。「何となくではなく、しっかり狙いを定めて取りにいかせたい」
安田コーチは新日鉄君津製鉄所(現日本製鉄)に一般社員として入社後、市民ランナーとして走っていたが、その実力が認められ、実業団選手(古豪の新日鉄八幡)に引き上げられた希有な存在だ。元日の全日本実業団対抗駅伝への出場経験もある。
だから、高次元に至った山口選手と自身の軌跡を重ね合わせて、こう語る。「うらやましいですよ。彼女は普通ではありえないところまできている」
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