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(左)キャンサーソリューションズ株式会社 代表取締役社長 桜井なおみさん(54歳)、
(右)ノバルティス ファーマ株式会社 オンコロジーメディカルフェアーズ統括部 固形腫瘍メディカルフランチャイズ部 シニアメディカルアドバイザー 河田忠之さん(42歳)(写真/小野口健太) |
元がん患者の桜井なおみさんに、製薬会社社員の河田忠之さんがインタビュー。
テーマは「治療生活とランニング」。二人ともオンコランナーズのランニング仲間だ。
河田 桜井さんの治療について伺うのは初めてですが、がんが見つかったのはいつでしたか?
桜井 2004年7月、会社の検診で乳房に腫瘍が見つかりました。エコー検査を受けているときに医師の顔色がどんどん変わっていって、「問題ない」と言われたのですが、それでも気になって……。細胞検査の結果、告げられたのは、乳がんの中でも全体の約3%と言われる「粘液がん」。その病院の治療実績では5年生存率が50%と言われました。父もすい臓がん患者、叔母も40歳の時に乳がんで亡くなっていたので、自分も「死ぬんだ」と思いました。当時はアテネオリンピックの開催年で「次のオリンピックは見られないかもしれない」と。
河田 それからどのような生活を?
桜井 乳房を全摘出した後に抗がん剤の投与が始まって髪が抜けて、さらにホルモン治療の影響で10kg太りました。当時はマスターズ水泳の大会にも出るほど水泳が好きだったのですが、胸がなくなっていたので、プールの更衣室で水着に着替えるのを誰かに見られるのが嫌で……。髪の毛もなかったので、自宅を出る時から水泳キャップ、その上に帽子をかぶってジム通いをしていました。
河田 この時、ランニングはまだしていなかったのですか?
桜井 走り始めたのは2007年、がんが再発してからです。この時は大胸筋も摘出、スイム中に腕を力強く引くことができなくなって、水泳のタイムが著しく落ち、泳ぐことが楽しくなくなりました。当時、都市整備の仕事をしていたのですが、(筋力が落ちているので)朝から仕事をすると午後3時くらいには握力がなくなって、マウスを持つことができなくなって……仕事も辞めました。
河田 生活が一変してしまったわけですね。
桜井 パソコン作業については補助の器具を使ったり、左手を使えばよい、と挑戦したりしたのですが結局ダメでした。当時は、仕事も趣味も手放して、まさに人生のどん底。
その時に始めたのがランニングです。体脂肪が乳がんの再発リスクを高めることはデータでも明らかになっているので「痩せなきゃ」という気持ちもありました。
河田 走り始めてからの生活はいかがでしたか?
桜井 今でも覚えているのが、治療が終わって病院の外に出た時にキンモクセイの香りがしたことです。「治療で気を配る余裕がなかったけど、自分たちは自然の中で生きているんだ」と。走り始めてからは季節の移り変わりや暑さ、寒さといった自然を感じられました。これはプールの中を泳ぐ水泳にはない世界。最初は1km走るだけで精一杯だったのですが、段々と走れる距離が延びていきました。
河田 それが今となっては100kmを超えるウルトラマラソンを制限時間内で完走するほどのランナー、驚かされます。
桜井 がんになると「治療のことで頭がいっぱいになるのですが、治療だけではなくて、日常生活もある」んです。大切にしたいことがあるときは、医師に伝えた方がいいですね。医師も治療の方針を考えやすくなると思います。がんになっても何かが「できる」と思えることが大事だと、私は考えています。
走ることを生活に取り入れながら「がん」と戦うオンコランナーズのメンバーを「月刊ランナーズ」で紹介。今回、河田忠之さんが桜井なおみさんにインタビューした全内容は「月刊ランナーズ7月号」に掲載しています。
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