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【連載:バックヤードウルトラ⑭】「毎周仮眠をとる」「靴と靴下を脱ぐ」1時間に6.7kmのシミュレーションから学ぶ。

2026年8月20日

毎月1,2回実施しているバックヤードのシミュレーション練習では、ペースに応じた服装選びを試行錯誤している
毎月1、2回実施しているバックヤードのシミュレーション練習では、ペースに応じた服装選びを試行錯誤している

「1時間で6.7km走る」ことを身体の限界まで繰り返す、バックヤードウルトラという競技をご存知でしょうか。近年国内外ウルトラランナーの間で人気が高まりつつあります。この競技に魅せられて脱サラ、大会に参加するだけでなく自身でも大会を企画、さらには普及活動も行っている水野倫太郎さんがその魅力について綴る連載です。


今回もバックヤードウルトラのトレーニングがテーマです。
この特殊な競技に向けてどんな練習をするのか。とにかく長時間行動を意識したり、「やめたくなった時にやめない練習」に取り組んだり、「ゆっくり走る」「歩く」という選択肢を取り入れたり。試行錯誤する中で、2025年10月のアメリカでの世界選手権以降は、月に1~2回行っている「1時間に6.7kmを走る」バックヤード本番形式の練習の位置づけを変えることにしました。
以前は、バックヤードにおけるペース感覚を養い、長時間行動の耐性をつけることがバックヤード練の目的でした。実戦形式の走り込み、という意味合いが強かったです。

2025年の世界選手権で直面したのは、「引き出し不足」。バックヤードウルトラでは、周回を重ねるごとに身体に生じる変化やトラブルに対して、その都度、適切に対処することはもちろん、予防的に手を打っていく必要があります。レースでの経験がモノを言う部分もありますが、練習からどれだけ想像力を働かせて、自分の中に、いろんなパターンを蓄積しておけるか。そう痛感したことで、定期的に行っていたバックヤード練の主眼を「シミュレーション」に置くようになりました。

たとえば、以下のようなものがあります。
①世界選手権で、靴と靴下を履き続けることで足裏トラブルにつながったという経験から、靴と靴下を脱ぎ履きするシミュレーション。頻度はどれくらいがいいのか。靴下の種類によって違いはあるのか。どのような手順だとスムーズか。そんなことを試行錯誤しています。
②レースで実際に使用する補給食を、練習から使用したり、摂取タイミングも実戦に近づけたりという補給のシミュレーション。特に、2026年3月のポーランド遠征で胃腸トラブルを経験してからは、電解質パウダー入りのドリンクを、1時間に6.7kmを走る中でこまめに少量ずつ口に含み、一定量をしっかり飲むことを身体にすり込んだりもしました。
③数日間走り続けるためには不可欠の睡眠のシミュレーション。眠気を感じる前から、毎周少しでも目をつぶり、脳を休ませる習慣づくり。アイマスクや耳栓など効果的なアイテム選びから眠りに落ちやすい姿勢や呼吸の仕方の練習まで。

もちろん、要素ごとのシミュレーションも意味がありますが、毎月毎月実施する中で、季節ごとの温度や湿度の違い、天候の違いも、引き出しを増やす格好の条件になります。ペース配分やウェア選び、補給の仕方を微調整することで経験値が増していきます。
そんな形で、現在のバックヤード練は、長時間・長距離を走るだけではない意味を持つようになっています。

バックヤードウルトラは、1時間6.7kmを走るというフォーマットに則りさえすれば、ある意味ではフリースタイル。創意工夫次第で試せることは無数にあります。ハムスターが滑車を回すように、単純にグルグルと走り続けているようで、変化のオンパレードでもあるのです。


雪が降る中でも「悪天候のシミュレーション」としてもちろん実施
雪が降る中でも「悪天候のシミュレーション」としてもちろん実施


<プロフィール>
みずの・みちたろう
プロウルトラランナー。1995年生まれ。神奈川県秦野市在住。バックヤードウルトラを主戦場に、2024年、2025年、日本代表として世界選手権に出場。自己ベストは 94LAP/約630km。
活動の軸は、走ること・伝えること・つくること。『走るはつなぐ』『共走』をテーマに、「丹沢ループス」「バックヤードウルトラ神奈川大会」等のイベント企画やバックヤードウルトラのドキュメンタリー上映会・ポッドキャスト配信にも精力的に取り組む。2026年は海外バックヤードを転戦中。
(写真/野田倖史郎)



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