2025年6月Dead Cow Gully Backyard Ultra、広大なレース会場の入り口(写真/野田倖史郎KoshiroNoda)
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「1時間で6.7km走る」ことを身体の限界まで繰り返す、バックヤードウルトラという競技をご存知でしょうか。近年国内外ウルトラランナーの間で人気が高まりつつあります。この競技に魅せられて脱サラ、大会に参加するだけでなく自身でも大会を企画、さらには普及活動も行っている水野倫太郎さんがその魅力について綴る連載です。
オーストラリア、クイーンズランド州の州都ブリスベンから北西へ約3時間、最寄りの町Nanango(ナナンゴ)からさらに北へ10分ほど。広大な牧草地帯にDead Cow Gully(「死んだ牛の谷」)と名付けられた土地があります。その名は、付近の小川沿いで足を滑らせた一頭の不運な牛に由来します。名前とは裏腹に、普段は牛たちが牧草を食み、カンガルーが姿を見せるのどかな牧場の一角。年に1度、バックヤードウルトラの聖地に姿を変えるのです。
Dead Cow Gully Backyard Ultraは、地元の牧場主Timothy Walshがレースディレクターを務め、2025年には、現在の世界記録119LAP(約798km)が生まれた土地として一躍有名になりました。
この大会にはじめて足を踏み入れた日本人は、沖縄出身のウルトラランナー川満武徳(たけのり)選手。2024年のことです。彼は、Dead Cow Gullyはもちろん、オーストラリア自体にも、縁もゆかりもない中で、在豪日本人コミュニティにサポートクルーを募り、クラウドファンディングで資金を集め、映像クルーを伴い彼の地に渡りました。彼の挑戦は、『Beyond the Despair』という映像作品に形を変え、日本のバックヤードコミュニティに少なからぬ影響を残しました。
何を隠そう私も、影響を受けた一人。
2025年、川満武徳選手、小松広人選手、そして水野倫太郎。バックヤードウルトラに魅せられた3人の日本人ランナーで再びDead Cow Gullyに挑みました。
そして『As Far As Possible(=私たちはどこまでいけるのか?)』をテーマに、映像化プロジェクトを立ち上げました。
バックヤードウルトラに、個人個人ではなく、チームとして取り組むことで、お互いを引き上げ合い、それぞれの自己ベストを更新できるのではないか? そんな仮説を証明する挑戦。その過程を映像にすることで、バックヤードウルトラの魅力をより多くの方々に伝えたいという想いがありました。
3名のランナーに加え、2名のサポートクルー、2名の映像クルー。2024年に川満さんに手を差し伸べたゴールドコースト在住・ジュンさんも合流し、8名の日本人での挑戦になりました。
2025年6月Dead Cow Gully Backyard Ultraに挑む3名の日本人ランナー。右から、川満武徳、水野倫太郎、小松広人(写真/野田倖史郎KoshiroNoda)
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奇しくも2025年のDead Cow Gullyは、2年に1度のMasters大会として、世界の強豪ランナーが集結するタイミングでもありました。結果として、3名の日本人ランナーは、狙い通り、自己ベストをそれぞれ更新し、さらには、世界記録の目撃者ともなったのです。
この模様は、プロジェクトと同名の映像作品『As Far As Possible』としてYouTubeにて公開されています。
2024年、川満武徳が道を拓き、2025年、共鳴したメンバーたちによるチームでの挑戦につながりました。それぞれの自己ベストと一つの映像作品という十分すぎる結果を残しましたが、日本人とDead Cow Gullyの縁はそこでは終わりませんでした。
2026年、小松広人選手と水野倫太郎は彼の地への再訪を決めました。さらに、10日間走日本記録保持者・吉沢協平選手も参戦することに。
「私たちはどこまで行けるのか?」この問いは次なる物語へと続きます。(続)
<プロフィール>
みずの・みちたろう
プロウルトラランナー。1995年生まれ。神奈川県秦野市在住。バックヤードウルトラを主戦場に、2024年、2025年、日本代表として世界選手権に出場。自己ベストは 94LAP/約630km。
活動の軸は、走ること・伝えること・つくること。『走るはつなぐ』『共走』をテーマに、「丹沢ループス」「バックヤードウルトラ神奈川大会」等のイベント企画やバックヤードウルトラのドキュメンタリー上映会・ポッドキャスト配信にも精力的に取り組む。2026年は海外バックヤードを転戦予定。
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