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毎日70~80km走ると人間はどうなる? いいのわたるの「北米縦断記」後編

2024年8月23日
カナダの山中は7月でも雪が残る
カナダの山中は7月でも雪が残る

2023年6月から「走って世界五大陸縦断」に挑戦しているいいのわたるさん(44歳)が第1ステージである北アメリカ大陸1万4000kmを完走。その様子をレポートしてくれました。ランナーズ2024年8月号に掲載した「後編」の全文を転載します。

⇒ 前編はこちら


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意気揚々と走り始めた五大陸の旅。いきなりアラスカで白昼の野宿を余儀なくされたわけですが、3週間かけて何とかカナダとの国境に到着しました。

と思ったらそこは国境ではなくただアメリカ(アラスカ)を出国しただけ。カナダに入るにはさらに30km走らなければならず、ココはその緩衝地帯のようです。

日本は陸路に国境を持たないからイメージしづらいなぁとぼやきつつ4時間走って今度こそカナダ国境。不愛想な入国審査官にパスポートチェック、サポートカーの登録検査をしてもらい、無事カナダに入国。この後、メキシコや中米など9つの国境をバンバン越えていくのですが、国によって揃える書類が違って毎回大変でした。しかも、スペイン語になるわけで、知恵熱を出しながら毎度3時間を要しました。

さて、カナダに入って景色は緑豊かになり、木の実も育つからか動物をよく見かけるようになります。巨大な角を持つムース、図鑑でしか見たことのないグリズリー、可愛すぎて力が抜けてしまうビーバーなどなど。特にブラックベアとの遭遇は多く、1日に複数会うこともあります。危険なイメージが強いですが、ある程度の距離感があれば熊から逃げてくれます。走っていると車にひかれて天に召された熊を見かけるので、おそらく人間を警戒しているのかもしれません。一度だけ1m近くまで寄られたことがありましたが、身体から熊の気に入る香りでも放っていたのでしょうか?

自然や動物が豊かになればヒトもそこに根付いて村が発展します。といっても広大な土地であるため、醤油がないからお隣の家に行くとなっても(昭和かっ!)車で10分ほど走らねばなりません。道中、地元の人と知り合って「野宿じゃかわいそうだから」と家に泊めてもらえることがあるのですが、皆さん家の敷地を全部周ったことはないそうです。


熊は毎日のように遭遇
熊は毎日のように遭遇

そんな一期一会を経験しながらカナダも南部に入り、ようやく発展した町や都市を通過してアメリカ本土に入国します。こちらには何度か来たことがあるため、なかなか経験できない道を通りたいと思い、北の国境から南の国境までトレイルでつなぐ「PacificCrestTrail(PCT)」を通ってきました。距離は4000km以上ありますが、山火事や通行止めを回避したためすべてをトレイルでつなぐことはできませんでした。また、1000km先にトレイルレースがあるという情報を聞きつけ、何とか間に合うようコースを変更してレース前日にギリギリ到着。スタートラインですでに疲労困憊ながら100マイルレースを完走し、5位入賞というおまけまでついてきました。なんだかすっかりハチャメチャな珍道中となってきました。

毎日70~80kmを走り続けて5カ月が経過。はじめの1週間は筋肉痛があったものの、人間の順応性というのは素晴らしく、行動が『習慣化』されると身体が徐々に慣れてきて走り続けられるようになります。もちろんパフォーマンスは下がるため、回復についてはいつも意識をするようにしています。食事も回復の一つなのですが、このチャレンジはクラウドファンディングによって支えられているため、食費を抑えるべく週の半分は主にインスタントラーメン生活です。

ただ、道中走っていると車で通りがかった人が時々、飲み物やフルーツを与えてくれます。なかには現金をくれる人まで。仮に僕が日本で車を運転している時に外国人が走っていたら何かをあげることができるのだろうか? いや、恥じらいがあってなかなか行動には移せないだろう、おそらくこういうところが世間体や恥を気にする日本人と諸外国の違いなのだろうと思いました。

そんな素敵な人たちとの出会いがある一方で、警察に捕まって手錠をかけられ拘置所に連れて行かれそうになったり、まるでゾンビのような挙動をする薬漬けの人たちが徘徊する場所で転がっている注射器を避けながら走ったりなど、いろいろな経験を得てきました。これを読まれている方々のご要望があればまた別の機会に伝えたいと思います。


136日間で約6300kmを走ったシューズ。道中では2回交換したという
136日間で約6300kmを走ったシューズ。道中では2回交換したという

ともあれスタートして9カ月が経った2024年3月。1万4000kmを走って無事に中米最後の国パナマに到着。五大陸のうちたった1つが終わっただけなので「やったーっ!」と倒れ込んだり感動で泣くようなことはなく、ホッと一息のみ。世界旅は始まったばかりで、ゲームで言えばレベル15くらいでしょうか。

まだまだハードルの高い環境や人がこの先に待っています。モチベーションを切らさないためにも日々投稿しているSNSを是非ご覧いただきコメントをください。6月には次のステージである南米をスタートしています。応援よろしくお願いします!



飯野 航さん
自動車設計技師としてドイツ駐在中だった30歳の時、ダイエットのために走り始める。2014年、15年チャレンジ富士五湖、17年BadWater135など国内外のウルトラマラソンで優勝。現在はスポーツウエアや和菓子事業を手掛ける会社に所属。1979年生まれ、東京都出身。






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