![]() (写真/軍記ひろし)
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月刊ランナーズでは常識を覆す結果を出しているランナーを紹介する「脱常識ランナー」を連載しています。
現在発売中のランナーズ7月号では昨年8月に83歳で迎えた100kmトレイルレース「奥信濃100」を完走(15時間25分11秒)した月岡金男さん(埼玉)を紹介しています。
左手首に着けているのはホームセンターで買ったごく普通のアナログ時計。
「時間さえ分かればいいんだから、これで十分」。84歳のトレイルランナー、月岡金男さんは過酷な山岳レースでもこれで間に合わせています。
「ラップタイムも距離も分からなくていいんです。行くところまで行くだけなんだから」。この1980円の時計が、ナチュラルに走る行為に没入する月岡さんの姿勢を象徴しています。
生まれ育ったのは長野県の最北端に位置する栄村。8m近い積雪を記録したこともある豪雪地帯で、冬はスキーで通学しました。7人兄弟の3番目。両親は農業を営んでいたが、それだけでは食べていけず、炭焼、和紙づくり、養蚕を手がけていました。学校から帰ったら、その手伝いをする毎日で、炭焼小屋まで山を登り、炭俵を背負って下りたといいます。
「中学を卒業するとすぐに口減らしの意味もあって、外に出された」。集団就職で名古屋の菓子屋に勤めたのを皮切りに、様々な職を経験しました。タクシー運転手をしていた大阪での20代後半にランニングをしていた時期は4勤3休。
「時間を潰すには走るのが一番だったんですよ」東京に出て溶接工として務めた後、独立して建設会社を設立しました。工場やマンションの排水をトイレの洗浄などで再利用するための浄化槽の製作、設置事業を営みました。東京の国立競技場や埼玉スタジアム、東京拘置所の地下にも月岡さんが手がけた浄化槽があります。
ただし、経営が順調だったわけではなく、起業3年目に不渡りを出し、当時としては莫大な1500万円の借金を抱え込みました。資金繰りが行き詰りましたが、友人の支援で倒産を免れました。
苦難を伴う働きづめの人生が、60歳になり、ようやく余裕が生まれました。
そこから本格的に走り始め、5km、10kmのレースを重ねていきました。
初マラソンは2007年の第1回東京マラソン。69歳での挑戦を4時間50分48秒(ネットタイム)の完走で飾りました。
ただ、42kmでは飽き足らず、2008年のOSJおんたけウルトラトレイル100kmにエントリー。
「制限時間が20時間なら走り切れるだろうと思ったんですよ」。
大会最高齢、70歳でのトレイル初挑戦も「それほどきついとは思わなかった」そうで、17時間30分49秒で完走しました。
それ以来、トレラン出場は日本山岳耐久レース(ハセツネ)、マウンテントレイルin野沢温泉など50回を超えます。完走はしていないが、世界最高峰の大会、ウルトラ・トレイル・デュ・モンブラン(UTMB、160km)にも3度、足を運びました。昨年は83歳にして奥信濃100(※)を15時間25分11秒で走破しています。
「上りは歩いて息抜きをして、下りで飛ばす。岩や木の根があっても怖いと思ったことはない。下りが好きでね。2晩くらい寝ないで走っても平気。なぜか夜間のほうが目が利く」そんな話を聞いていると、月岡さんと、山野を駆けていた古代の狩猟採集民の姿が重なります。
何世代にもわたって受け継がれてきた遺伝子が体内で騒ぎ、月岡さんを突き動かすのではないかと想像してしまいます。
※長野県木島平村で8月28日~29日にかけて開催された100kmのトレイルレース
(取材・文/吉田誠一)
![]() レースでも着ける1980円のアナログ時計
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現在発売中のランナーズ7月号では月岡さんのトレーニング方法、そして84歳で1位(5時間47分47秒)を獲得しているフルマラソン1歳刻みランキングも発表しています。
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