私が外部コーチとしてサンベルクス陸上部に関わり始めたのは2014年7月です。陸上部は4月に発足したものの、最初の3カ月はなかなか体制が固まらなかったようです。選手たちは慣れない仕事をフルタイム勤務でこなした上で練習をしていたので、身も心も疲弊していました。そこで、限られた時間でも効率的に力を伸ばすメニューを組みました。意識改革のため、市民ランナーが仕事を終えて練習に励んでいる姿を見せに行ったこともあります。
1年目はいきなりニューイヤー駅伝の出場権獲得は厳しいと考え、東日本実業団駅伝で同業他社に勝つという目標を掲げてモチベーションを高めました。2年目は日清食品で活躍した北村聡が移籍してきて、選手たちが「このチームは変わる」と感じ取ってくれました。あれがターニングポイントです。「絶対にニューイヤー駅伝に連れていくから、信じてついてきてほしい」と鼓舞し続けた結果、初出場を果たしました。実は発足1、2年目は選手のスカウト活動をしていません。競技を続けたくても実業団から誘われなかった選手たちが会社の説明会に来て、一般社員と同じルートで入社してきました。人間性を重視した採用です。この初期のメンバーが仕事にも競技にも真剣に向き合うサンベルクス陸上部の精神風土を築いてくれました。
創部1年目からチームに関わってきた田中正直総監督
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サンベルクスは陸上部の選手を自己記録によって6段階にランク付けし、基本給に反映させている。基準タイムは採用時からオープンにして「あなたの1万mのベストは28分30秒なのでこのランクです。在学中に28分10秒を切ったら、このランクで受け入れます」などと伝えている。選手としては一番低いランクの選手でも、新卒1年目の基本給は一般社員より大幅に上積みされている。鈴木専務によると「他の実業団チームと比べても高い額」だという。基本給+賞与とは別に、大会への出走、駅伝の区間順位による出来高給(インセンティブ)がある。たとえば東日本実業団対抗駅伝の場合、上位12チームがニューイヤー駅伝の出場権を得るので、選手の区間順位も12位を基準とし、それとの差から出来高給を計算する。金額は年によって変動・調整する。また、マラソンなど個人種目の成績もインセンティブがある。地上波テレビ中継の視聴率によって大会がランク付けしてあり、東京マラソンのような視聴率の高い大会で好成績を残すと出来高給が高くなる。一方、社業での昇進もあるため、基本給は選手としてのランクと仕事での評価を比較し、高いほうを採用する。現在も社業での評価が上回っている管理職の選手がいる。
サンベルクス陸上部・社員選手の待遇モデル(模式図)
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選手たちが社業と競技をどのように両立しているのか、部署の異なる2人に勤務日の過ごし方を聞いた。
足立中央店に勤務して肉のスライスや品出しをしている
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起床は午前5時です。今は寮の近くに住んでいるので、数㎞走ってから動きづくりとストレッチをして、全体集合後に6時半まで10~12㎞を走ります。朝食は寮で済ませるか、弁当にしてもらって自宅で食べます。
8時に車か自転車で足立中央店に出勤し、10時の開店までに5、6人で肉のスライス、ラップ掛け、値付けをし、売り場に並べます。開店後は売れ行きを見て商品を補充します。立ちっぱなしではなく、品出しなどで歩くのでいい運動になる感覚で、競技への影響はありません。
13時に仕事を終えると、自宅に帰って昼食。2時間ほどゆっくり過ごしてから12~16㎞を走ります。寮で誰かと合流することもありますが、夕方のジョグは基本的には一人です。勤務がない月、金にポイント練習が入ります。水曜日は外部コーチとプライオメトリックトレーニングに取り組み、月に1度は気分転換のため母校の駿河台大学(埼玉県飯能市)に足を運び、後輩と起伏のあるコースを走ります。
18時~19時頃に練習を終えたら夕食をとり、22時半までに寝ます。勤務も練習も休みの日曜日は、一緒に暮らすパートナーと映画鑑賞や旅行でリフレッシュしています。
月間走行距離は700~800㎞で、仕事もしながらいかに練習時間をつくるか、工夫しながら自分に合った方法を探っています。サンベルクスを選んだのは選手の自主性を重んじてくれるからで、悩んだら上岡監督に相談しています。
職場には親や祖父母世代の人たちがいて、孫のように応援してくれます。陸上部が活動できるのは、皆さんが頑張って商品を売ってくれるから。自分でもモノを売っているからこそ、お金を稼ぐことの大変さを実感できます。競技に専念するより、働くほうがいいと思います。今後の目標はニューイヤー駅伝の優勝とマラソンでの日本代表。社業ではもっと会社に貢献できる人材になりたいです。
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2017年に入社し、グロサリー部、営業企画部を経て、25年春から経営企画部所属となりました。グロサリー部の月次予算策定などに携わっています。
午前4時20分に起きたら20分間読書をします。今は一人暮らしなので、4時50分に自宅を出て10㎞走り、5時45分の寮での全体集合後に5㎞走ります。朝食はご飯、みそ汁、ゆで卵、サラダ、フルーツが定番で、自分で用意します。
6時50分から30分ほど読書をします。知見を広げるためにビジネス本、教養本、小説などを読みます。合宿時以外は火水木土の午前8時から13時までが勤務で、昼食後は16時30分からジョグ。夕食は19時前後で、プログラミングの練習などをしてから21時過ぎに寝ます。
趣味は読書、絵画、写真、コーヒーの焙煎などです。休日はつい没頭してしまうので、アラームで時間を管理します。
入社2~3年目から引退後のことを考えるようになりました。自分に合った仕事を見出してもらえて、やりがいを感じています。2月から陸上部主将になりました。目標はニューイヤー駅伝の表彰台。小売業界最高が97、98年のダイエーの3位なので、それを超えたいです。
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