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TV主導の「与えられる喜び」とは異なる 多様な人々が、多様な目的で走る面白さを伝えたかった②

2025年11月01日

手作業だった雑誌発送
 
定期購読者が増えると「雑誌の発送作業」の労力も増大。そんな時に購入したオフィス・コンピューターが雑誌以外の事業を展開するキッカケになった。

――当社は今、メディアのみならずデジタルからイベントまで、ランニングを軸として様々な事業を展開しています。雑誌以外の事業はいかにして始まったのでしょうか?
橋本 定期購読者への雑誌発送作業を外部に委託しなかった、というか資金がなかったわけですが、全てを手作業でやったことが新しい考えをくれました。

雑誌の発送は毎月ですから、何とか手間を省けないかと、コピー機の会社に相談すると、「簡単ですよ」とオフコン(オフィス・コンピューター)を紹介してくれた。一度入力すれば、宛名が印刷されたラベルが次々と出てきて貼るだけ。金融公庫より融資を受けて購入しました。

確かに便利でしたが、オフコンは月に2、3日稼働させるだけ。高い買い物でしたから、何か他に使えないかと考えていた時に思いついたのが「月間走り込み大会※5」です。読者の走行距離を10日に一度、ハガキで送ってもらって入力センターに回し、オフコンを使って、走行距離のランキングを弾き出すんです。

ランニングは距離と記録の「数字の世界」。これがマラソン大会の記録計測事業にも繋がっていきました。


1977年のホノルルマラソンをランナーズ誌面で紹介
1977年のホノルルマラソンをランナーズ誌面で紹介

――1977年に始めたホノルルマラソンツアーも転機だったのではないでしょうか。
橋本 当時は定期購読が2000部程度でも印刷費と発送費で売上金は右から左に無くなった。ただそれでも海外取材の予算だけは削らなかった。そのあたりがカメラマンと編集者かな。現場が一番なんです。

ホノルルマラソンは73年に始まった小さな大会でした。何度もボストンを走った市民ランナーから「一緒にホノルルに行こう」と誘われたのが76年の第4回大会。参加者は2000人くらいだったかな。国内にも勝田や青梅という市民マラソンはありましたが、ホノルルは制限時間がなくて、雰囲気がまるで違った。「この面白さは文字や写真だけでやっても分からない、来年からは実際にランナーを現地に連れていこう」と、帰りの飛行機でそういう話になりました。これがホノルルマラソンツアーに発展しますが、最初は、楽し
いことを伝えたい、という単純な動機ですよ。こういうことがあるから、無理してでも海外に出た。

――海外の大会からインスピレーションを得ていたことが分かります。
橋本 走り出してすぐにボストンやニューヨーク、ホノルルを体験し、海外の大会の雰囲気が私たちの標準になっていたんですね。

国内では瀬古利彦さんや宗兄弟、さらには中山竹通さんなど、エリートマラソンの活気にあふれ、テレビの視聴率も高かった。もちろんそれもマラソンの醍醐味ですが、テレビ主導というか、与えられる喜びとは異なるマラソンの面白さを伝えたかった。「ホノルルに行こう、行けば分かる」と。よもやJALのチャーター便が出るまで盛況になるとは思いませんでしたが。

臨時列車「クロカン特急」
 
初めて大会を主催したのは1986年の東伊豆クロスカントリー大会。以降はサロマ湖100㎞ウルトラマラソンなど、コンセプトが明確な大会を続々と立ち上げた。

――自社で大会を創るようになったキッカケは何でしょうか?
橋本 日本は海外とは違い、競技マラソンと市民マラソンが完全に分かれていました。それを融合して、多様な人たちが多様な目的で走る雰囲気を創出できないかということを考えたんです。海外の大会をそのまま輸入するというより、海外の大会を参考にしながら日本に適した大会を創っていこう、と。ただ、(コース使用許可を出す)自治体や警察にいきなり「大衆マラソンを開催しましょう」と提案したところで、耳を貸してくれるわ
けがない。

最初のキッカケが東伊豆のクロスカントリー大会です(86年)。東急電鉄さんから、クロスカントリーコースを作ったので春先に何か大会が開催できないかという相談を受けたんです。

東京近郊だったらやらなかったでしょうね。伊豆に興味を持ったのは、ホノルルと近いイメージだったからです。観光とランニングを結び付け、それまで日本にあった大会とは違ったことができるかもしれない、と。

伊豆急さんに東京駅から「クロカン列車」という臨時電車を仕立ててもらい、電車の中でゼッケンやスポンサーさんから提供してもらった朝ご飯を配ると、これが好評でした。

次はヤマハさんから話がきて、合歓の郷(三重県)でリゾートマラソンをやることになった。いきなりホノルルまで行けないけれど、伊豆や合歓なら……少しずつそういう考え方が大きくなっていったんです。サロマ湖100㎞ウルトラマラソンを始めたのも同じ頃ですね。


※5…1984年開始。秋冬のフルマラソンに向けたトレーニングを兼ねて10月の走行距離をランキング形式で競うイベント。現在はアプリTATTAを使用するオクトーバー・ラン&ウォークとして継続





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