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TV主導の「与えられる喜び」とは異なる 多様な人々が、多様な目的で走る面白さを伝えたかった③

2025年11月01日

大会運営のコンピューター化
 
1994年、日本陸上競技連盟から話をもちかけられて参加者1万人以上規模の京都国際ハーフマラソンの立ち上げを担った。これが「後の都市型マラソン開催につながった」と振り返る。

――コンセプトを明確にした大会を創り主催する中で、都市型マラソンの広まりの流れが出てきたと思います。その流れとどのように携わってきたのでしょうか?
橋本 最初は「京都国際ハーフマラソン」の運営です。京都は明治時代に奠都1100年を祝って平安神宮を建立。94年に1200年を迎えるから記念の大会をやりたいと、まず日本陸連から相談を受けた。「参加者数は1万2000人、フルマラソンは無理でもハーフでできないか」――「できますよ」と。

京都で話を聞いたら「国内外のトップ選手を招待し、テレビの生中継もする」と話が大きい。大手代理店も話を聞きつけて(運営受託に)手を挙げてきた。それまで国内のエリート大会を運営していたのは彼らです。私自身「これはえらいことになった」と思いました。ただ、その年はランナーズ創刊20年の節目。都市型マラソン開催へのモヤモヤもあったから、やってやろうという気持ちが強かったんです。

この規模の大会を開催するには様々な関係者との合意形成が不可欠です。そこでこだわったのが「大会運営のコンピューター化」。運営マニュアルからコース地図に至るまで、様々な情報をコンピューターでデータ化することによって情報を一元化しました。思っていた以上に大変でしたけど。

大会3カ月前を切ってからはコンピューターを全部、京都に移して作業に取り組みました。

当初は男性社員だけ連れて行こうとしたら、下条が女性を連れて行けと言ったのを覚えています。「こういう時は女がいい」と。どういう気持ちで言ったかは分かりません。ホテルの和室宴会場を借り切って、3交代2交代3交代。確かに女性はよく働いてくれました。

結果的に採算は赤字でしたね。それでも、当日は天候もよく、人気だったロザ・モタ※6も走ってくれ、無事に終わりました。

日本陸連はランナーズのことを理解してくれました。このことが後に長野、東京、大阪といった都市型マラソンの運営に携わって、エリートと市民の融合の扉を少しずつでも開けることにつながったと思っています。京都国際ハーフは日本のマラソンの分岐点だったのではないかな。


1994年の京都国際ハーフをランナーズ誌面で紹介
1994年の京都国際ハーフをランナーズ誌面で紹介

ランニングの世界は多様性
95年に日本で初めてチップによる記録計測システムを導入。これによりマラソン大会運営の質が格段に上がった。

――言うまでもありませんが、マラソン大会は「正しい距離」と「正確な記録」なしには成り立ちません。その意味でチップによる記録計測を導入したことは日本のマラソン界に大きな影響を及ぼしました。チップ導入の背景はどのようなものだったのでしょうか?
橋本 それまではゼッケンに印字したバーコードでランナーの記録を管理していましたが、風でゼッケンからもぎ取ったバーコードが飛ぶと記録が分からなくなるなどの課題もありました。ある時、「牛にタグをつけることで牧場の出入りを管理している」という記事を見て、これをマラソン大会で使えないかと思って調べると、オランダの会社が開発したチップがロッテルダムマラソンで採用されていることを知りました。

即座に社員に「すぐ行って見てきてくれ」です。週明けには国際電話で「社長、このシステムは使えますよ」と言うので「だったら、その担当者をすぐ日本に連れて来てくれ」と。

ロッテルダムの大会から2週間も経たないうちに話を聞いて契約を交わして、その後、AIMS(国際マラソン・ディスタンスレース協会※7)の会長だった帖佐寛章さん※8
を「(AIMS加盟大会の)記録計測に必ず役に立つから」と説得してAIMS大会の公式チップになりました。

記録計測専門の会社を立ち上げたのは92年、ランネットを開設したのはYahoo! JAPAN 開設の翌年となる97年……早かったと思います。株式会社ランナーズ(2009年に現在のアールビーズに社名変更)は企業のカテゴリーとしては出版社とされていましたけど、しばらくしてからはそうではなくなった。これは会社のカテゴリーとか気にせず、自分たちの目的に沿った改善を率直に採り入れてきたから。ランニングの世界は、まさに多様性。だからできたような気もします。


コンピューターの自動記録計測によりマラソン大会運営の質は格段に上がった
コンピューターの自動記録計測によりマラソン大会運営の質は格段に上がった

※6…ポルトガルの女子マラソン選手。オリンピックはソウル(1988年)金メダル、ロサンゼルス(1984年)銅メダル。東京国際女子マラソンと大阪国際女子マラソン優勝の経験を持つ
※7…1982年に発足。120以上の国と地域にわたる450以上の長距離レースで構成される会員制組織
※8…日本選手権800m、1500mで優勝経験を持ち、日本陸上競技連盟理事・強化委員長、日本陸上競技連盟専務理事、日本陸上競技連盟副会長などを歴任





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