調子よく走っていたのに、横っ腹や下腹の痛みで減速してしまった経験のあるランナーも多いのではないでしょうか。ここではお腹まわりのトラブルの原因や対処法について、痛む部位別にサブスリー内科医の北原拓也先生に解説してもらいました。
困ったことにお腹のトラブルを起こしたランナーの多くは、その後も同様のことを起こすといわれています。そのため不運だったと終わらせずに、次回に向けて対策をたてましょう。
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①右わき腹の痛み
・主な原因:お腹の臓器と壁側腹膜(お腹の臓器を包む膜)が擦れて生じる
・対策:満腹で胃腸が張った状態で走らない、腹横筋を鍛えて臓器を安定させる、腰ベルトで腹部臓器が動かないようにする
・痛くなったら・・・・・・:深呼吸、痛い部位を指で押す、身体を伸ばす
いわゆる「横っ腹の痛み」です。右腹が多いですが、左腹にも下腹にも起こることがあります。若い人に多いといわれ、中高年者になると痛みの強度や頻度が減ってくるといわれています。原因としては、お腹の臓器と壁側腹膜(お腹の臓器を包む膜)が擦れて痛みを生じると考えられています。
②胃痛(吐気・胸やけを含む)
・主な原因:胃腸への血流の低下
・対策:普段から食べながら走って胃を鍛える、前日のカーボローディングを控えめに、当日の朝食は早め、脂肪分少なめに
ランニング時に胃腸障害が起こるのは、走っている時は、脚の筋肉への血流が増す一方で、胃腸への血流は4~8割低下すると言われており、胃腸の働きが低下するからです。
レース中に胃のトラブル(胃痛や胸やけ、吐き気)が起こりやすいのは、もともと胃の働きが低下しているところに「飲酒やカーボローディングによる胃腸への負担増加」 「不安や緊張・ストレスによる働きの低下」「鎮痛剤の服用による胃の血流低下」などが加担していると考えられます。
さらに中高年は加齢による胃腸の働きの低下(胃については男性が多いといわれる)もあるので、ランニング中の水分摂取や補食で胃痛や胸やけ、吐き気が起こりやすいと言えます。起こりやすいランナーは、普段から走りながら食べることで脚だけでなく胃腸も鍛えてみてください。レース前日はカーボローディングを控えめにする、当日は朝食を早めに済ませる、そして脂肪分を少な目にするという対策も有効です。鎮痛剤を服用する場合は胃腸への負担の少ないものにして、カフェインは控えましょう。胃薬が有効な場合もあるので、医療機関で相談するのも一策です。
③ 左わき腹~下腹部痛・下痢
・主な原因:胃腸への血流の低下
・対策:発酵食品や整腸剤で腸内環境を整える、普段から食べながら走って腸を鍛える、3~4日前から食物繊維や高FODMAP食を控える、当日は消化の良いものをとる
胃痛と同様に、胃腸への血流の低下が主な原因と言われています。同じく緊張や不安、カーボローディングなどの過食によりトラブルが起きやすくなります。腸のトラブルは中高年、特に女性に多いといわれています。
対策として、日頃から行いたいのは「腸内環境を整えるために発酵食品や整腸剤を摂取する」「食べながらランニングをして腸を鍛える」。レース前は「3~4日前から食物繊維や高FODMAP食を控え、腸の状態を整える」「当日は早めに消化のよいものを摂取」「補食は低FODMAP食、水分はスポーツドリンクなど小腸で吸収されやすいものを選ぶ」ことが有効です。鎮痛剤も種類によって腸への負担があるとされています。
※FODMAPとは消化されにくい炭水化物の総称で、Fermentable(発酵性),Oligosaccharides (オリゴ糖)・Disaccharides (二糖類) Monosaccharides(単糖類)・Polyols (ポリオール)の頭文字をとったもの。消化がされにくいので小腸で吸収されにくく、大腸に到達すると腸内細菌によって発酵されてガスや水分を引き寄せるため、腹痛や膨満感、下痢などの症状を引き起こすことがある。このFODMAPが多い食事を高 FODMAP 食という。
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・高FODMAP食品(避けるべき食品):
パン、さくらんぼ、リンゴ、納豆、きのこ類、玉ねぎ、枝豆、ハム、牛乳、さつまいも、アイス、ウーロン茶
・低FODMAP食品(お勧めの食品):
ごはん、バナナ、ピーマン、たまご、いちご、にんじん、魚介類、牛・豚肉、コーヒー、じゃがいも、カマンベールチーズ、ビール
■指導/きたはら・たくや:内科専門医。日医ジョガーズ公認ランニングドクター。ビアソムリエの資格を持つ。
レースになると毎回、脇腹の痛み、いわゆる「差し込み」が出て減速を余儀なくされることに悩むランナーもいる。この症状について、精神科医の岡本浩之先生と岩本能史コーチに見解を聞きました。
「症状が何度も繰り返して出ると、「また起きるのではないか」という予測不安に襲われることがあります。また疾患がないのに腹痛、下痢などが起きる過敏性腸症候群の可能性や、内臓の血流が下がって痛みが出ることもあります。痛みは起きるものだということを前提に、まずは起きたらどうするかを考えたほうがいいかもしれません。交感神経が活発になっている可能性があるので、深呼吸をしたり、肩を回したり、ストレッチをしたりして交感神経の働きを和らげてみるのも一策です。ごまかしながら走ることで、何とかなった成功体験が自信につながります」(岡本浩之先生)
「実は脇腹痛は初心者によくある悩みで、ほとんどの場合、フルを完走できるようになると痛みが出なくなります。私は何らかの疾患がない場合、ランナーの脇腹痛は脳による偽の危険信号だと考えています。身体がダメになってしまったら、脳も危機なわけですから、脳はストップをかけるはずです。ウルトラマラソンではよく足裏に偽の痛みが出ます。眠気を催す人もいるし、頭が痛くなる人もいます。でも、脳が「ランニングは決して危ないものではないんだ」と学習すると、そのサインは出なくなります。だから私はすべて偽の痛みだと思っています」(岩本能史コーチ)
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