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フルマラソン レース中の「困った」を解決②

2024年11月01日



困った②:脚つり・痙攣


重要なのはレース前の疲労抜き

フルマラソン後半、立ち止まって脚を伸ばしている人をよく見かけます。「記録を狙うレースで必ずつる」という小島茂さん(56歳)の悩みに研究者の高山史徳さんが解決法を考えました。


痙攣の原因は様々な要因が複雑に絡む

高山:痙攣の原因については主に「脱水や電解質(主にナトリウム)の損失」「筋肉につながる運動神経の異常収縮(神経筋コントロール不全)」の2つの説があります。ただ、どちらかの説で完全に説明できるわけではなく、近年では様々な要因が複雑に絡む多因子理論が、有力になっています。ひとつ興味深い研究があります。56kmレースを完走したランナーを対象にした研究(※1 Schwellnus et al. (2011) Br J Sports Med, 45, 1132-1136.)で、つった人とつらなかった人を比べたものです。その結果とは、脚つりを発症したランナーは「①過去につった経験がある」「②レース直前(3日前以内)の練習量が多い傾向にある」「③レース前のクレアチンキナーゼ (CK)(※2 CKは体内で産生される酵素で筋肉の炎症や損傷などの問題を検出するのに役立つ)が高い傾向にある」「④レース前半のペースが速い」「⑤運動前にストレッチを実施している人が多い」というものです。
小島:私、この中ではもちろん、①②ともあてはまります。
高山:ということは、筋ダメージが残った状態でスタートしている、かつレース序盤から筋への負荷が高いことで、筋肉をコントロールする運動神経に過剰な負担がかかり、脚つりにつながっている可能性がありそうです。他にも、発症者・未発症者間で血液中のナトリウム濃度や(脱水に関係する)体重の減少などの項目に差はないが、発症したランナーはレース後のCKが高いなど(※3 Martinez-Navarro et al. (2022). J Strength Cond Res, 36, 1629-1635.)、筋へのダメージと脚つりが関係しているデータも多いです。
小島:よくレースに向けて練習量を落としていくと聞くのですが、エリート選手の話であって、サブフォーを狙う私のレベルであれば必要ないと思っていました。大会直前の金曜、土曜は休みますが、それまで練習量を落とすことなく走っています。
高山:レース数週間前から練習量を減らして疲労を抜き本番を走る調整をテーパリングといいますが、脚つり対策としてもですが、タイムを狙うのであれば絶対やった方がいいです。
小島:体力が落ちるんじゃないかと心配です。
高山:テーパリングの効果は、市民ランナーであっても得られます。また、体力はそう簡単に落ちない一方、筋肉のダメージは意外と残りやすいという面もあります。ところで小島さんは筋トレをしていますか。「脚つり未発症者は筋トレの実施率が高い傾向にある」(※3)という結果がでています。
小島:筋トレは大嫌いです。筋肉痛が怖くて………………。
高山:そんなに頑張らなくていいですよ。過度な筋肉痛が起きるまでやると、走るトレーニングに影響するので、筋トレはむしろ頑張らない方がいいというのが私の持論です。例えば6回できる重さだったら、3回でやめていい。そうすると、ダメージもあまり残りません。もちろん、レース直前はより慎重に、しなくてOKです。レースでは、どれくらいのペースで走っていますか。
小島:最近はサブフォーが目標で、最初は5分20秒ぐらいです。自分としては抑えているつもりです。
高山:5分20秒だとゴールタイム3時間45分のペースですね。それは速すぎると思います。最後はキロ6分くらいに落ちていますか。
小島:もっと落ちています。
高山:もったいないですね。ちなみにレース当日、ウォーミングアップはしますか。
小島:ジョギングの後、100mを2、3本、息を上げてダッシュします。
高山:アップによって、レース前から筋への負担を高めてしまっているのと、最初から速いペースで走れてしまう、というのも要因としてありそうです。
小島:アップしないと落ち着かないんです。
高山:距離を減らす、もしくはダッシュをしないだけでもいいと思います。まとめると、小島さんは、①テーパリングをしていない、②直前にたっぷりウォーミングアップをしている、③前半のペースが速い。これらは、筋肉やそれをコントロールする運動神経に過剰な負担をかけることにつながっていて、これが35kmあたりでの脚つりを起こしていると考えられます。一度「テーパリングをしてみる」「ウォーミングアップを減らす」「最初5分40秒(またはもう少し遅い)ペースで入る」を試してみてください。
小島:全て逆のことをやっていたので、お話を聞いてすごく納得しました。
高山:小島さんは、脚つり対策について、ある意味伸びしろの宝庫です。それでもつってしまうようであれば、また違うアプローチをしましょう。


高山さんの解決策
筋肉やそれをコントロールする運動神経に過剰な負担をかけないために
・テーパリングをする(レースに向けて練習量を減らしていく)
・レース当日のウォーミングアップを減らす
・前半レースペースを守る(オーバーペースにならない)



レース中の対処法

レース中に脚つりが起こった時にできる対処法をご紹介。

① 「腱」の機能を回復させるストレッチ:腱をピンと張ることで腱の機能が回復し、痙攣の緩和につながります。
ふくらはぎがつったら、道路の縁石などの段差を利用してアキレス腱を伸ばす/ハムストリングスがつったら、ガードレールなどを利用してひざ周りの腱を伸ばす

② 安全ピンで「つつく」:脚つりや痙攣を起こした箇所の皮膚を広い範囲で、10~20回、チョンチョンと安全ピンでつつく。刺すのではなく、つつくのがポイント。刺激による反応に連携して皮膚と筋膜の間にスペースが生じ、溜まった疲労物質を流す余裕が生まれる。その結果緊張が緩み、張りつめた状態が緩和される。(※2012年4月号、14年3月号より一部編集して掲載)



■指導/たかやま・ふみのり:研究業・アスリートのサポートなどに携わる。フルマラソン自己ベスト2時間46分15秒





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