ランナーズonline Premium

ロンドンで人類初の2時間切りが誕生!「驚異的ペースアップの裏側」④

2026年5月01日

「遺伝子の違いという言葉で終わらせていいものか……」
識者が語る2時間切りの偉業

瀬古利彦さんや吉田響選手ら、国内外の方々に「2時間切り」についてのコメントを頂きました。


写真/ロイター/アフロ
写真/ロイター/アフロ

「キプチョゲの走りが刺激を与え、新しい扉が開かれた」
2019年にキプチョゲ選手が2時間切りを果たした「IOS1:59(※)」で共同プロジェクトの一端を担ったウィーン・シティ・マラソンのアンドレアス・マイアー氏

セバスチャン・サウェによる1時間59分30秒の記録に、私たちは大いに感激しています。そしてセバスチャンとロンドンマラソンの成功を心から祝福します。
史上初の2時間切りマラソン「IOS1:59チャレンジ」を主催できたことは、たとえ非公式であっても、私たちのチームとウィーンにとって、いつまでも心に残る出来事です。エリウド・キプチョゲの走りは、世界中の何百万人もの人々に感動を与え、何が可能かを示しました。かつて多くの人が不可能だと考えていた記録に挑み、それを更新するよう、エリートランナーたちに刺激を与えました。公式レースにおいても、2時間の壁はいずれ破られることは明らかでした。そして今、その瞬間が訪れ、新しく刺激的な展開への扉が開かれたのです。
※グローバル・スポーツ(エリウド・キプチョゲのエージェント)、INEOS、ロンドン・マラソン、ウィーン・シティ・マラソンの共同プロジェクトとして開催


「地鳴りのような歓声が記録を後押しした」
ロンドンマラソン参加ランナー石田知世巳さん(39歳、英国在住)

昨年に続き2回目のロンドンマラソンを走りました。ロンドンのコースは小刻みなアップダウンが何カ所かありますが、180度ターンがないのは走りやすい点だと思います。
当日のコンディションは、スタート時で10℃を少し下回るくらいでしたが、快晴で気温が15℃くらいまで上がりました。風はありませんでした。途中、32㎞付近を走るトップ選手たちとすれ違い、2人が競り合いながら走ってくる姿を目撃しました。その時の、沿道両側からの地鳴りのような歓声は本当にすごかったです。
ロンドンマラソンは、途切れることのない応援、街全体がお祭りのようにマラソン一色となる一体感がすごいです。私自身、まるでオリンピックを走っているような錯覚を覚えました。そういった熱狂的な雰囲気も歴史的記録を後押ししたのではないかと思います。私自身は3時間12分1秒でした。


「陸上競技の記録更新は人間の勝利を示すもの」
AIMS(国際マラソン・ディスタンスレース協会)会長、
バレンシアマラソン会長パコ・ボラオ氏

スポーツにはある基本原則があります。陸上競技においてはこの原則が特に重要な価値を持つと言えます。なぜでしょうか? それはおそらく、陸上競技が人間同士の争いではなく、人間と「自然」との戦いを本質としているからです。
ここで「自然」とは、私たちが暮らす地球全体といった、最も広い意味での自然を指しています。
陸上競技の記録は、人間同士の争いではなく人間の挑戦を物語り、敗者について語るのではなく、時間、距離、高さに対する人間の勝利を示すものです。人間の能力を、可能な限り速く、遠く、高く拡張しようとする営みなのです。それ以上でもなく、それ以下でもありません。
今回のロンドンマラソンでの偉業において特に注目すべきは、2人の選手が2時間切りを達成したことです。これは単なる快挙ではなく、極めて異例な歴史的出来事といえるでしょう。


「マラソンはハーフのように最初から突っ走る競技になった」
藤原新さん(スズキアスリートクラブ男子マラソン監督)

2時間切りの要因は糖質摂取とシューズという2つの進化が大きいと思います。グリコーゲンの枯渇ギリギリを攻めていくのが以前のマラソンだとすると、今は糖質を補給しながらハーフマラソンのように最初から突っ走る競技になっています。私は現役時代、レース中に糖質は一切とらず、脂質代謝を使うことに集中していましたが、今は高糖質のドリンクで1時間あたり100gから120g摂取できるようになりました。

シューズについては練習の段階から恩恵を受けていると思います。サウェ選手の練習量は週240㎞だそうですが、薄底時代は走行距離が増えすぎると脚が防御力を高める適応になってスピードを失う場合もありました。それがクッション性の高いシューズを使うことで効果的に距離を踏めるようになりました。
今は1時間57分ぐらいが人間の限界かもしれませんが、テクノロジーが進化すればもっと伸ばせるはずです。〝サブツー〟がどんどん生まれる未来がやってくるかもしれませんね。


「日本記録と2㎞近い差。すごいというよりショック」
瀬古利彦さん(DeNAフェロー)

これまでのアフリカ系ランナーの走りを見てもいつか2時間を切るんじゃないかと思っていましたが、実際に切られてしまうと、すごいというよりもショックですね。大迫選手の日本記録でさえ2㎞近い差がある。この差はなかなか埋めようにも埋められない。遺伝子の違いという言葉などで終わらせていいものか、日本のランナーはどうしたらいいのだろうと思いました。優勝したサウェ選手は私がテレビ解説した昨年のベルリンマラソンで20℃以上の中、2時間2分で優勝していたので、涼しいレースなら2時間を切るだろうと考えていました。そして、2位のケジェルチャ選手は初マラソンで2時間切りですから、2度3度とマラソンを走ったらどうなるんだろうと思います。

彼らは走力があるのもそうですが、走りを見ると最新のシューズを使いこなしていると思います。まるで宙に浮いているようです。ただ、私からすると自分の肉体を使って勝負するのがマラソンだと思っているので、すごいと思う反面そこから遠ざかっているようで、少し寂しい思いもありますね。


「ハーフの日本記録は59分27秒。58分台は当たり前にならないと」
吉田響選手(サンベルクス所属・プロランナー)

記録を知った時は「やっぱり出た」という気持ちと「世界との差がまた開いてしまったので早く追いつかないと」と思いました。特に後半ハーフが59分1秒で上がっているところにスピード化を感じました。ハーフの日本記録も59分27秒に留まっているのではなく、58分台が当たり前にならないといけないです。自分自身はニューイヤー駅伝のハーフ通過が58分台でしたが、どんな条件でもそのぐらいで走れるように定着させていきたいと思っています。

世界では1時間58分台で走る選手が出てきてもおかしくないくらい水準が上がっています。一方で日本のマラソンのタイムは思うように伸びていないのが現状です。ただ、一人がその状況を打破したら他の選手たちも続くと思うので、まずは自分がその1人として2時間3分台を出し、世界と戦うスタートラインに立ちたいと考えています。
初マラソンの大阪は課題と収穫があったので、それを次のマラソンに活かしていきます。






※こちらから記事検索ができます。

ランナーズ9月号 7月22日発売!


脳のリミッターをはずして速くなる!

「僕は脳のリミッターをはずすことができるから、力を出し切れる」。1月のニューイヤー駅伝で22人を抜いたプロランナー・吉田響選手はそう語ります。「失速の原因は脳がブレーキをかけること」という理論を度々取り上げてきた本誌は今回、吉田響選手に「吉田流・脳のリミッターのはずし方」を徹底インタビュー。ランナーの実体験から、ランナーが脳のリミッターをはずして持てる力を最大限に発揮する方法を学びます。

ジョグジョグが聞く、教えて! あなたのMy Run, My Peace
純烈・後上翔太

50周年記念キャラクター・ジョグジョグが、走ることの魅力を探る連載第7回。今回は、歌謡コーラスグループ・純烈のメンバーとして、全国各地の温浴施設でも数多くのステージに立ってきた後上翔太さん(39歳)。「お風呂とマラソンの相性は最高。銭湯×ランニングの親善大使になりたい」と語る後上さんのランニングライフを聞きました。

夏を制する黄金タイムは?
朝ラン vs 夜ラン

これからの時期、日差しの強い昼間走ることは、とてもではないが難しい‥‥‥。では、いつ走るかというと、候補となるのは必然的に「朝」と「夜」の2つ。本企画では、朝ラン派と夜ラン派が実践談を通してそれぞれの利点を紹介。さらに、練習効果を倍増させる方法や、「朝起きてすぐに走り出しても大丈夫?」「夜にスピードを上げて走ると、その後なかなか眠れない」などのお悩みに専門家が答えます。



本誌購入は年会費7,800円「ランナーズ+メンバーズ」がお勧め!

「ランナーズ+メンバーズ」は毎月最新号が自宅に届く(定期購読)だけでなく、「デジタルで最新号&2011年1月号以降が読み放題」「TATTAサタデーランが年間走り放題」「会員限定動画&コラム閲覧可」のサブスクリプションサービス! 年会費7,800円の超お得なプランです。



※こちらから記事検索ができます。

「ランナーズonline」 一覧に戻る