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脳のリミッターをはずして速くなる!⑧

2026年7月01日

脳×アンチエイジング
走ると脳は若返る 健康寿命にも好影響

「脳を鍛えるドリル」やゲームが人気を集めた2000年代半ば、本誌は走ることが認知症予防や脳の健康維持に役立つ可能性を紹介した。


2006年3月号
2006年3月号

「最近、人の名前が出てこない」「物忘れが増えた」。そんな悩みを持つ中高年ランナーに向けて、前頁にも登場した久保田競先生を取材した。久保田先生は脳の中でも物事を考えたり判断したり、記憶したりする「前頭連合野」に注目。2006年3月号では、認知症やアルツハイマー病の予防にはこの前頭連合野を活発に使うことが大切だと説明した。

その前頭連合野を鍛える身近な方法として挙げたのがランニングだった。久保田先生らの研究では時速9km(キロ6分40秒前後)の比較的ゆっくりしたランニングによって、歩行時よりも前頭連合野の活動が高まることが示された。走っている時は信号や車、人とのすれ違い、進む方向などを無意識に判断しており、実は脳を頻繁に使っているためだという。
同じく若返りをテーマにした2007年8月号の特集では、認知症予防との関係を示す研究も掲載された。65歳以上の1740人を対象にした調査では、週3回以上運動する人は、そうでない人に比べて認知症やアルツハイマー病の発症率が低かった。60歳以上を対象にしたウォーキング研究では、6カ月間の継続によって脳容量が向上したことも報告されている。

この2回の特集の中で、久保田先生はただ走るだけでも脳への効果は期待できるとしながら、より前頭連合野を活性化させる方法を提唱。 「今日はどこまで走るか」「どのコースを走るか」を考えながら走ることのほか、音楽を聴きながら走ったり、昔の出来事を思い出すことも刺激になるという。

クロスカントリー走やインターバル走も前頭連合野を活性化させる。不整地では路面状況や進行方向を判断する場面が増え、インターバル走ではペースの切り替えが求められる。いずれも単調な運動になりにくく、脳を使う機会が多い。走行距離や時間を記録することも推奨。目標を設定し、結果を振り返り、次の目標を考える。その過程でも前頭連合野が働くからだ。時代とともに運動と脳の関係は解明が進み、ランニングは脳の健康にも役立つ運動として紹介されるようになった。


脳×メンタル
レースで力を発揮する 「勝負脳」を鍛える7カ条

脳の研究が進むにつれて脳科学の知見がスポーツの分野に応用されるようになる。
本誌はスポーツ界で話題となっていた「勝負脳」をランナー向けに提案した。


2009年9月号の誌面
2009年9月号の誌面

2009年9月号では脳神経外科医・林成之先生が提唱した「勝負脳」を特集。08年北京オリンピックで2大会連続2冠の北島康介選手ら競泳日本代表にアドバイスを送った林先生を取材し、市民ランナー向けに「勝負脳7カ条」を提唱した。林先生は、「人間の脳には楽なほうを選ぼうとする働きがあり、そうした状態が習慣化すると全力を出すのは難しい」と説明した。

03年世界陸上女子マラソン銅メダリストの千葉真子さん、当時日本経済新聞記者の吉田誠一さんとの座談会も掲載し、そこで林先生が語ったのが「相手のリズムで走っては勝てない」という考え方。人間の脳には周囲とリズムを合わせようとする「統一・一貫性」の性質があり、レース中も相手のペースへ無意識に同調しがちだという。勝負の場面では自分のリズムを保つことが重要だとした。

「勝負脳7カ条」と関連の深い事例も解説された。レース中の判断について、千葉さんが「コーチから30kmで仕掛けろと言われていたが、自分では25kmだと感じた場合はどうするべきか」と尋ねると、林先生は「自分の意思で決定しないと100%の力を発揮できない」と語った。

さらには、否定的な考え方が脳の働きを妨げるとも説明。レース中に「しまった」「ダメだ」と考えた瞬間、脳内の「自己報酬神経群」が運動機能と連動しなくなるという。
一方で、吉田さんと千葉さんは「ダメだと感じても、我慢していれば力が戻る場合もある」と指摘。 林先生は「苦しい状況を好きになっておくのが大切。『ここからだ』と思えるかどうかで脳の働きはずいぶん変わってくる」と、苦しい状況を好意的に受け止めることも勝負脳を鍛える方法として紹介した。


【勝負脳7カ条】

其の一 前向きな思考の素直な明るい性格になる
其の二 ネガティブな否定語を使わない
其の三 具体的に実行することをイメージする。「頑張ります!」だけではNG
其の四 トレーニングでも全力を出し、常に100%の集中力を発揮する
其の五 正しい姿勢を意識する
其の六 試合前、練習量は落としても、テンションは落とさない
其の七 自分自身でやってやる、という意識を持つ






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