かつてランニングは「あたまの働きを悪くする」とも言われていた。
1980年に本誌は「走るとあたまがよくなる!?」を特集。ランニングと脳の関係はどのように研究されていったのか、本誌の記事をもとに振り返ります。
1980年4月号の誌面
|
本誌が最初に脳とランニングについて取り上げたのは1980年4月号の特集「走るとあたまがよくなる!?」。 当時は運動が脳に良くないという通説があった。「激しい運動中に発生する乳酸が筋肉にたまると動かなくなることから、それは大脳に悪影響を与えるに違いない」 「運動をするとブドウ糖、ビタミン、酸素を大量に消費するから、あたまの働きを悪くする」 などと本にも書かれていたという。
それに対し、本誌ではランニング後に頭がスカッと冴えてくるランナーの体験を足がかりに、「記憶力を良くすることはできるか」「老人ボケは防止できるか」「仕事の能率を高められるか」といった幅広い意味での「あたま」を取り上げ、各テーマの事例報告や体験談をもとにランニングのメリットを提唱している。
その中で、中野区立第九中学校での実験では、安静時よりも軽い運動を交えたほうが乱数記憶再現テストの成績が良いという結果を紹介。 さらに、アメリカでは企業がフィットネス運動を推奨し、就業時間内にトレーニングの時間を与えて業務効率がアップしたケースにも触れた。
脳とランニングとの関係に強い関心を示したのが、京都大学霊長類研究所で所長を務めていた脳研究者の久保田競(きそう)先生だ。 1982年4月号に登場した久保田先生は、もともとランナーではなかった。 テレビに映った自分の姿を見て、「太りすぎて、知的活動をしている人の顔には見えなかった」と衝撃を受けたことがキッカケで走り始めた。 最初は200mで止まってしまったが、走り続けるうちに体重が減り始めた。
体重の減少はランニングを習慣化したことによる脳内物質(セロトニン)の増加が食欲を抑えるためだと考えた久保田先生は、「どうしてこんな風になるんだろう」と考え続けながら走ったという。 自身の身体に起きている変化を脳科学者の目で観察し、その体験は『ランニングと脳』という一冊の本にまとめられた。久保田先生は本誌のインタビューで、「走っている人に役立つように、走っていない人が走り始めるように願いを込めて書いた」と語っている。
ランニング中に起こる独特の感覚「ランナーズ・ハイ」にも注目した。久保田先生の場合は20分ほど走ると紫色の玉が見え、その後に非常に気持ちの良い状態が訪れたという。ランニング中は脳が通常以上に働いているのではないか――。久保田先生はそう考えたが、その仕組みは当時まだ解明できなかった。
1980年4月号の誌面
|
それから20年後の2002年5月号。本誌は「ついに実証された! ジョギングで頭が良くなる」を特集した。前年、久保田先生らは米国の脳研究学会「ソサイエティ・フォー・ニューロサイエンス(SFN)」で、「軽いジョギングによって前頭連合野のテスト成績が向上した」と発表。世界中から約3万人の研究者が集まり、約1万2000件の研究発表が行われる中、注目すべき研究として紹介された。研究では、12週間にわたって軽いジョギングを続けたグループで、ワーキングメモリーを使う課題の正答率が約65%から95%へ向上した。一方、ジョギングをしなかったグループは約70%にとどまった。 また、ジョギングをやめると成績は低下した。
ワーキングメモリーとは、人が会話をしながら考える、複数の情報を整理する、仕事の段取りを組むといった場面で使われる能力とされる。久保田先生は「人間が物事を計画的に、順序立てて行っていく上で、とても大事な記憶」と説明している。本誌が問いかけた「走るとあたまがよくなる!?」は、20年後に「前頭連合野」や「ワーキングメモリー」という言葉で世界中を注目させることとなった。
※こちらから記事検索ができます。

ランナーズ9月号 7月22日発売!
脳のリミッターをはずして速くなる!
「僕は脳のリミッターをはずすことができるから、力を出し切れる」。1月のニューイヤー駅伝で22人を抜いたプロランナー・吉田響選手はそう語ります。「失速の原因は脳がブレーキをかけること」という理論を度々取り上げてきた本誌は今回、吉田響選手に「吉田流・脳のリミッターのはずし方」を徹底インタビュー。ランナーの実体験から、ランナーが脳のリミッターをはずして持てる力を最大限に発揮する方法を学びます。
ジョグジョグが聞く、教えて! あなたのMy Run, My Peace
純烈・後上翔太
50周年記念キャラクター・ジョグジョグが、走ることの魅力を探る連載第7回。今回は、歌謡コーラスグループ・純烈のメンバーとして、全国各地の温浴施設でも数多くのステージに立ってきた後上翔太さん(39歳)。「お風呂とマラソンの相性は最高。銭湯×ランニングの親善大使になりたい」と語る後上さんのランニングライフを聞きました。
夏を制する黄金タイムは?
朝ラン vs 夜ラン
これからの時期、日差しの強い昼間走ることは、とてもではないが難しい‥‥‥。では、いつ走るかというと、候補となるのは必然的に「朝」と「夜」の2つ。本企画では、朝ラン派と夜ラン派が実践談を通してそれぞれの利点を紹介。さらに、練習効果を倍増させる方法や、「朝起きてすぐに走り出しても大丈夫?」「夜にスピードを上げて走ると、その後なかなか眠れない」などのお悩みに専門家が答えます。
本誌購入は年会費7,800円「ランナーズ+メンバーズ」がお勧め!
「ランナーズ+メンバーズ」は毎月最新号が自宅に届く(定期購読)だけでなく、「デジタルで最新号&2011年1月号以降が読み放題」「TATTAサタデーランが年間走り放題」「会員限定動画&コラム閲覧可」のサブスクリプションサービス! 年会費7,800円の超お得なプランです。
※こちらから記事検索ができます。