レースの時は、蓄えた糖質をいかに効率よく消費していくかが大切だと思っています。一番エネルギーを使うのは脳なので、脳ができるだけ消費しないようにし、身体の筋肉により多くエネルギーのリソースが使われるよう意識します。 そのため私は、レースではできるだけ「薄目作戦」です。目から余計な情報が極力入らないように、薄目にして、前のランナーの背中だけを意識して、ボーっと走るようにします。
2008年、当時厚生労働省に勤めていて、多忙であまり練習を積むことができずに出場した福岡国際マラソンでは、スタートしてから目の前のランナーの背中をひたすら薄目でボーっと見ながら走っていたら、キツいながらも食らいついて、気づくと38km地点でした。そこからは単独走になりましたが、最後まで粘り2時間30分を切ることができました。満足に練習はできていなかったけれど、自分の実力をうまく引き出せたレースだったと思っています。
11回完走したサロマ湖100kmでは、毎回70kmあたりでキツい局面が訪れます。そこでいつも、家族の名前をつぶやいて自分を奮い立たせ、脳に刺激を入れていました。子どもや親しい人たちのことを意識すると、不思議と粘ることができるのです。
前のランナーを薄目で見続けサブ2.5
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きよもと・よしふみ(47歳)
産業医。フルマラソン自己ベスト2時間24分40秒(2017福岡国際)、
100km自己ベスト6時間44分9秒(2015サロマ)。
3時間3分を出してから次はサブスリー、と思って4年。今度こそと挑んだ22年長野マラソンの35km地点で、「またここでダメになるんじゃないか」という弱気が脳をかすめかけたとき、ペーサーの方が「皆さん、ここからは集中力。自分に騙されないようにしましょう」という声掛けをしてくれました。 それを聞いて「脳だ」と思い、それまで何度も35kmから失速したイメージを捨て去り、「残り7ラップに集中すればいける。これは練習でやってきた、ロング走翌日の1000mインターバルの4本目、5本目だ」と思考を切り替え、2時間58分41秒の初サブスリーでゴールすることができました。
今年2月の別府大分では、39kmまであっという間に過ぎ、以降も「あとキロ何分でいけば2時間53分台が出る」と、もう一人の自分が冷静に判断している状態で、40〜41kmはペースを上げてキロ4分を切っていました。脳のリミッターがはずれた状態だったと思います(2時間54分8秒でゴール)。
仏教的に言うと、人生もマラソンも「乗り越える」ものではなく「受け入れる」ものではないかと思います。うまくいったレースは、自分の能力、状態を客観視しながら、冷静に受け入れることができ続けていたと思うのです。
長野マラソン35kmで気づいた脳との向き合い方
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しみず・ゆうかい(52歳)
信州善光寺徳寿院住職。自己ベスト2時間54分0秒(24年東京)。
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よしだ・せいいち(64歳)
元日本経済新聞記者。毎月本誌で原稿を執筆。
フルマラソン完走78回。100km完走13回。フルマラソン自己ベストは3時間16分2秒(2012東京)
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