スポーツ栄養
SPORTSQuestion
高齢でも筋肉質な身体を維持しているランナーがいます。そのような身体を目指すのに、何か秘訣はありますか?
Answer
ランニングの強度や頻度、トレーニングの実施方法など、工夫して上手に効率よく鍛えることで、いくつになってからでも筋肉を発達させることができます!
回答者:深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)
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「前編」では、筋肉をキープするには良質なたんぱく質、とくに必須アミノ酸のBCAAの一つ「ロイシン」の摂取がカギになることを教えていただきました。後編ではすぐにでも参考にしたい、その摂り方について迫ってみました!
――早速、今日からでも筋肉づくりのために効果的な食事を始めたいです! 食事のタイミングなど、たんぱく質の摂り方のコツはありますか?
深野先生(以下F):現状の筋肉を維持し、効率的に筋肉のタンパク質を「合成」するには、定期的な刺激=トレーニングが必要です。そのトレーニングを食事とセットで考えるよう意識を変えてみましょう。
ランナーの場合、食事などからのたんぱく質(アミノ酸)摂取には2つの目的があります。一つめは長時間(高強度)のランニング等で、エネルギー源として利用するために起こる筋肉のタンパク質の分解をできるだけ抑制し、また終了後は素早い修復・回復(リカバリー)を行うため。
二つめは運動の刺激(身体づくりのために行うレジスタンストレーニング〈筋トレ〉など)に対して筋肉のタンパク質の合成を行うため。
特にレジスタンストレーニング(筋トレ)と食事(栄養補給)を組み合わせることで、効率よく筋肉量を維持、増やすことができると報告されています。
――食べてから運動するのと、運動してから食べるのではどんな違いがあるのですか?
F:たんぱく質やアミノ酸は、トレーニング前に摂取すると「筋肉のタンパク質の分解を抑える」、トレーニング後に摂取すると「筋肉のタンパク質を回復・修復する」「筋タンパク質の合成を促進する」といった目的があります。もちろん、エネルギー源となる糖質もたんぱく質と合わせてとりましょう。
ちなみに…空腹感の強い状態でトレーニングをすると、筋肉のタンパク質を分解し、エネルギー源として使われやすくなってしまいます。これは筋トレでもランニングでも同様です。この状態だと、むしろ筋肉量が減少する方に傾いてしまいますね。
また、特に長時間(高強度)のランニングを行う場合、練習量に対して食事から摂取するエネルギー量やたんぱく質などの栄養素が不足していると、それ自体によって筋肉のタンパク質をより分解しやすい状態にある、ともいえます。
――つまり、ただ走っているだけでは筋肉はいつも減少の危機にさらされている状態だということですね。高たんぱくな食事、そして筋トレで筋肉を「合成」しなくては。
F:そうですね。だからこそ、筋トレも練習の中に取り入れて、走るための“体づくり”にも取り組んでいただきたいです!
筋トレを行うタイミングは、筋肉のタンパク質の分解が進みやすい強い空腹時よりも、食後2~3時間後を目安に行うのが理想です。前の食事から5時間以上経っていたら補給食をとりましょう!
運動するまでに1時間あったら塩や梅のおにぎり、蒸しパン、バナナなど比較的消化のよい糖質+牛乳、ヨーグルトなどでたんぱく質補給を。30分程度しかない場合は、すでに分解されていて体内への吸収の速いエネルギーゼリー+ アミノ酸などを活用しましょう。糖質とたんぱく質(アミノ酸)を摂取することで筋肉のタンパク質の分解をできるだけ抑えることが大切です。
さらに筋トレのように大きく筋肉を収縮させる運動の刺激は筋肉のタンパク質の「合成」を促す “スイッチ”を入れることができますが、このタイミングで、糖質とたんぱく質…特にBCAA…なかでも『ロイシン』を意識して摂取することで筋肉のタンパク質合成を大きく促すことができます。
――筋トレをしたら、すぐ食事をすればOKですか?
F:筋トレ後、30分~1時間以内には「ロイシン高配合必須アミノ酸ミックス」などのアミノ酸をまず摂取するようにしたいですね。ちょうど筋トレすることで筋タンパク質合成を促す “スイッチ”が押されている状態のときに、筋肉のタンパク質合成を促すシグナルの働きがある『ロイシン』を摂取することでさらに筋肉の合成が促進されるからです。
ただし、筋肉のタンパク質を合成する能力は、年齢を重ねるほど低下するというデータも。だからこそ、50代以上は、より意識してたんぱく質摂取量が不足しないよう食事を摂ることが大切になります。
また、筋肉のタンパク質の合成に必要な材料となる必須アミノ酸が十分にそろっていることが大前提。毎食の食事(特にトレーニング前後)で肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などの良質なたんぱく質を不足のないように摂ることも大切です。手のひら1枚分の量を目安に毎食食べるようにしましょう。
食事からの摂取が難しい場合は補食や運動時には「ロイシン高配合必須アミノ酸ミックス」などのアミノ酸やプロテインなどのサプリメント活用をお勧めします。(ただし、たんぱく質は摂り過ぎも身体に負担をかけます。トレーニングの内容や強度に合わせて、体重をはじめとした身体の状態なども併せて確認するようにしましょう)
また、いきなりハードな筋トレは危険ですよ。50代以上の筋トレでは、負荷の設定がとても大切になってきます。まずは自重でのスロートレーニングなど、低負荷でも十分に刺激を与えられる方法で足腰や体幹部のトレーニングをすると良いでしょう。目的等にもよりますが、今回のように筋肉量の維持や増加、走るための身体づくりといった目的で行う場合は週2回程度でよいので、長時間走るようなランニングとは別のタイミングで設定するのがおすすめです。
――わかりました。ランニング習慣のない妻にも勧めて、一緒に筋肉をキープしたいと思います。
F:ぜひ! ただし、大会などに向けた長時間のランニングが習慣になっているランナーに対しては、さらなる栄養摂取のポイントがあります。長時間、また強度の高いランニングで筋肉の分解をできるだけ防ぎ、終了後は素早いリカバリーも重要に。以下を参考にしてみてください。
★練習中も「ロイシン高配合必須アミノ酸ミックス」を摂取
強度の高いトレーニングを行う場合は、できるだけ筋肉のタンパク質の分解を抑える、筋タンパク質を作る働きを強めるために、「ロイシン高配合必須アミノ酸ミックス」を定期的に摂取しましょう。長時間にわたるトレーニングでは途中でも使ってみることをお勧めします。
★練習後にもスポーツドリンクや100%果汁ジュースとともに「ロイシン高配合必須アミノ酸ミックス」を補給!
トレーニング終了後もできるだけ素早く水分と併せて糖質+「ロイシン高配合必須アミノ酸ミックス」を摂取。筋肉のタンパク質の分解を抑え、回復・修復を促します。スポーツドリンクや果汁100%ジュースとともに摂取することで、運動後の水分補給や失った体内のグリコーゲン回復に役立ちます。
さらに普段の食事では、練習量に対して摂取するエネルギー量やたんぱく質などの栄養素が不足しないように摂ることも大切です。(スタミナ・持久力アップに必要な栄養素とは?も参考に!)
――ありがとうございました! 「筋トレ+たんぱく質たっぷり食事デー」を習慣にして、筋肉を効率よく「合成」できるよう頑張りたいと思います! いくつになっても走り続けたいですからね。
F:加齢に伴う身体の変化を受け入れながらも、ランニングの強度や頻度、トレーニングの実施方法など、工夫して効率よく鍛えることで、いくつになっても筋肉を発達させることができます。その効果を感じられることが、ランニングの新たな楽しみになると良いですよね。まだまだ長く、楽しく、走っていきましょう!
(終わり)
⇒ 前編はこちら
⇒ 【マンガ版】『ロイシン高配合必須アミノ酸ミックス』は、運動中の筋肉のコンディションをキープ!