スポーツ栄養
SPORTS
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ランニングを行う際は、糖質と脂質を主なエネルギー源としていますが、特にランニング等の持久的な運動では「アミノ酸」もエネルギー源として使います(とくにエネルギー源として筋肉でよく利用されるアミノ酸に、BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン:分岐鎖アミノ酸)があります)。
糖質や脂質と異なり、アミノ酸は身体の中での貯蓄の形を持たず、細胞の中や血液中にアミノ酸として一定の濃度で存在しています。
濃度が高くなれば(食事の後など)、筋肉のタンパク質合成に使われ、濃度が低くなる(空腹時や運動時など)と筋肉のタンパク質を分解し、濃度を一定に保っています。
そのため、BCAAなどのアミノ酸が運動のエネルギー源として使われると、それを補うために筋肉のタンパク質の分解が促進されてしまうのです。
長時間または強度の高いトレーニング、筋グリコーゲン量が少ない状態やタンパク質が不足している状態(細胞内や血液中のアミノ酸濃度が少ない)でトレーニングを行った場合にも、筋肉のタンパク質の分解が促進され、エネルギー源として利用されます。
運動前には、持久的なトレーニングをしっかり行うためにエネルギー源として使われる分も見越して、さらにできるだけ分解を最小限に抑えられるように、運動後には筋タンパク質の分解を抑制し、筋肉のタンパク質合成を促進するために、食事からたんぱく質も摂取する必要があります。
また、筋肉のタンパク質の分解を抑制するためにも、筋肉のグリコーゲンを蓄えておくことは重要で、運動前後の食事でグリコーゲンのもととなる炭水化物(糖質)を摂取することは非常に大切なことなのです。
さて、マラソンのエネルギー源として欠かせない糖質(グリコーゲン)と脂質(体脂肪)、またアミノ酸ですが、それだけではエネルギーを生み出すことはできません。それらをエネルギーに変える際に必要なのがビタミンB群です。ビタミンB群はエネルギーを生み出す代謝をスムーズに行うために連携しながら働いています(運動後にエネルギーを貯蔵するためにも必要です)。
ビタミンB群の中でもとくにビタミンB1は、糖質(グリコーゲン)をエネルギー源として利用するときに必須のビタミンで、運動量が多くなり消費するエネルギーが増えるほど、必要量も増えます。一方で、ビタミンB群はゆでたり煮たりと調理することで失われてしまったり、水溶性のため長時間身体の中にとどめておくことができないため(4時間程度で尿に排出されてしまう)、とくにランナーは毎食の食事や、走る前後の食事でしっかりと摂取する必要があります。
このように、持久力を高めるためには、炭水化物(糖質)やたんぱく質、ビタミンB群を意識した食事によって、グリコーゲンを枯渇させないことと、筋肉のタンパク質の分解をできるだけ抑制すること、円滑なエネルギー代謝をサポートすることが大切です。もちろん、これらの効果は、毎日の3食の食事バランスが取れていることが前提です。後編では、スタミナアップのための具体的な食事について紹介します。
深野祐子(管理栄養士・ランニングコーチ)
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※参考文献
・スポーツ栄養学 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる 寺田新 氏(東京大学出版会)
・スポーツと健康の栄養学 下村吉治 氏(NAP Limited)
・スポーツトレーニングの基礎理論(西東社)
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