※本記事は『ランナーズ2026年5月号』掲載内容になります。
東京都足立区に本社を置くスーパーマーケット企業「サンベルクス」の陸上部が、駅伝やマラソンのテレビ中継をにぎわしている。ニューイヤー駅伝では過去最高の5位。Honda、旭化成、富士通といった優勝経験を持つ大企業に先着した。大阪マラソンでは同社所属の吉田響選手が37㎞まで首位を走り、東京マラソンでは市山翼選手が日本人3位に入った。地域密着型スーパーはなぜ陸上部を立ち上げ、そして強いのか。その原点は社員の人材育成にあった。
サンベルクスの選手はほとんどが店舗勤務と競技を両立している
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1968年に青果専門店として創業し、現在は東京、千葉、埼玉で計52店舗のスーパーマーケットを展開。陸上部を創設したのは2014年で、陸上部GMでもある鈴木優喜朗専務取締役の発案だった。
陸上部のGMを務める鈴木優喜朗専務取締役
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今年のニューイヤー駅伝で4区終了時点まで2位を走り、チーム史上最高の5位でフィニッシュしたサンベルクス。Honda、旭化成、富士通といった過去に優勝経験のある大企業にも先着し、親戚や友人から「あなた、サンベルクスでしょ、すごいわね」という電話を受けた従業員も多かったという。
では、なぜサンベルクスは駅伝に力を入れているのか。その原点は人材育成にある。大学卒業後、別の会社を経てサンベルクスに入社した鈴木優喜朗専務取締役は、新卒社員がおとなしいという印象を抱いていた。「もう少しガツガツした人材が欲しい。2、3割は体育会系の人間でもいい」と考えた。
「とはいえ、野球部は都市対抗野球に出ようとすると最低2億円の活動費がかかる」。自身が中学・高校の陸上部で長距離経験があったこともあり、「陸上部をつくって会社の幹部候補になる人材を採りたい」と思い立った。スーパーマーケットの店舗は100~120人の従業員がチームで働き、マネジャーとなると20人の部下を抱える。「それにはチームスポーツのほうがいい。陸上は個人種目ではあるが、駅伝はいわばチームスポーツ。チームで働く社員の育成にもつながる」。そこで、2014年に陸上部を発足。ニューイヤー駅伝出場という目標を掲げた。その目標は2年目の16年にクリアし、21年からは6年連続で出場している。
優勝 GMO インターネットグループ
2位 ロジスティード
3位 トヨタ自動車
4位 JR東日本
5位 サンベルクス
6位 中国電力
7位 黒崎播磨
8位 Honda
9位 旭化成
10位 富士通
ニューイヤー駅伝では2区の吉田響選手で2位に浮上し、大企業を相手に過去最高の5位を占めた(写真:毎日新聞社/アフロ)
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日本人選手は横浜を拠点にしているプロランナーの吉田響選手を含めて13人(ほかにケニア人が1人)。本業の人材育成のため、埼玉県草加市拠点の12人のうち10人が経営企画部、加工食品を扱うグロサリー部、精肉部などに所属し、火水木土の午前8時から午後1時まで、1日5時間の短縮勤務で働いている。
最初は陸上部員もフルタイム勤務だった。しかし、終業後にトレーニングをする選手たちを気の毒に思う声が各店舗のマネジャーから届き、週1回の短縮勤務が導入された。その後、2年目は短縮勤務が週2回になり、ニューイヤー駅伝出場などの実績を上げるにつれて社業の負担が軽減され、現在に至っている。
一方で、人材育成という観点では1日5時間の勤務でも社員として成長するのか。鈴木専務は「1日4時間で週5日より1日5時間で4日のほうが従業員として成長する。5時間あれば重要な仕事を任せられるから」と説明する。
「社員としてスキルアップするかどうかの境目は業種、会社によって異なるが、ウチの場合は5時間が基準になる。責任感のある仕事を任せるようにしないとビジネススキルが身につかない」
選手たちは週4日、1日5時間の勤務によって社業でもキャリアを積んでいく
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陸上部の1期生9人のうち7人が現在も会社に残り、陸上部マネジャーの時広暁良さんら全員が管理職に就いている。精肉部、経理部を経てきた教育部マネジャーの山下侑哉選手兼コーチは「競技も仕事も全力でやっているうちにビジネス面でも道が開けるだろうと思っていた。陸上がうまくいかない時に仕事へエネルギーを注ぐことで心が充実し、それが陸上にもいい影響を与える」と話す。
「どこのチームにも誘われず、サンベルクスに拾ってもらった身なので、会社に恩返しがしたいし、仕事にもやりがいを感じている。1期生は特にその気持ちが強いと思う」現在はフルタイムで働きながら新入社員や店長候補者への研修を企画・運営し、新人には自身の経験を踏まえて心の部分の大切さを授けている。
| 有木達哉(南越谷店) | 精肉部マネージャー |
| 木寺良太(草加手代店) | グロサリー部マネージャー |
| 佐藤弘季(北松戸店) | グロサリー部マネジャー |
| 高津戸翔太(船堀店) | グロサリー部マネジャー |
| 時広暁良(HD本部) | 人事部マネジャー |
| 宮澤隼平(HD本部) | 財務経理部マネジャー |
| 山下侑哉(HD本部) | 教育部マネジャー |
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