※本記事は『ランナーズ2026年8月号』掲載内容になります。
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日本の夏はもう暑くて走れない――。それは半分正解だが、もう半分は脳のせいかもしれない。 本特集では「脳」をキーワードに、夏のランニングを快適にする最新の暑熱対策ギアを紹介する。 「暑さは脳が決めている」という脳の仕組みを逆手に取り、今年の夏を走り抜けよう。
暑熱対策ギア装着例。日よけ付きキャップ 、寒色系サングラス 、通気性シャツ 、冷感アームカバー 、冷感タイツ
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極限環境でのレースを経験してきた岩本能史コーチ。気温50℃を超えるウルトラマラソン「Badwater 135」など、その暑熱対策の核心は「脳をいかに騙すか」にあると言います。
「Badwater 135」の舞台である米国カリフォルニア州のデスバレーでは最高で気温53℃を体験したことがあります。道路はサンダルの底が溶けるほどの高温になりますが、実は日本の暑さと比べるとそこまで辛くはありません。理由は湿度の違いです。デスバレーの湿度は10%程度なので、例えるなら「近くで焚火されているような暑さ」です。
一方、昨今の日本の夏では気温30℃以上、湿度は70%にもなります。汗の気化熱による体温調整が機能せず、例えるならお風呂に浸かりながら走っているような状態です。
とはいえ、秋以降のフルマラソンを目標にするランナーにとって、夏場は鍛錬期に当たります。涼しいジムでトレッドミルを走ったり、高原など避暑地で走り込みをできれば理想ですが、そういった環境が近くになかったり、時間的に厳しいという方もいるでしょう。中には夏場をオフと決めて、涼しくなってからトレーニングを再開する方もいるのではないでしょうか。
ただ、夏場に外を走るトレーニングをゼロにしてしまうと、ランナー体質(血液を体内の隅々まで循環させたり、汗をかいて体温を調節する能力)を元のレベルまで戻すのに時間がかかってしまいます。そのため、暑い夏でも無理のない範囲でトレーニングを続け、ランナー体質を維持することが大切です。
大事なのは、3日以上空けずに外を走ることです。夏は心拍数が上がりやすいため、ペースはジョギングかそれよりゆっくりでも、心肺や循環器に十分な刺激を与えられます。トレーニングが継続さえできれば、秋以降の大会に向けた十分な走力の土台を築けます。
夏ランをする上で最大のポイントとなるのは「脳」への対処です。暑い中で走っていると、長い時間走っていないのに、なぜか足裏が痛くなったり、腹痛が起きたりすることがあります。実は、これは「脳が走るのをやめさせよう」とするシグナルです。
脳にとって身体は唯一の乗り物なので、危険を察知するとすぐに、あの手この手で身体にブレーキをかけようとするのです。
私の経験では、脳は本当に危険な状態になるかなり手前からそういったアラートを出し始めます。逆に言えば、脳を「安心させる」ことができればブレーキを緩められます。私はこれを「脳を騙す」技術だと考えています(もちろん、脱水や熱中症などの症状を察知したときはすぐに中止することが重要です)。
暑さに対して、最も脳を安心させる方法が「首を冷やす」ことです。血液は体温が43℃近くなると正常に機能しなくなると言われており、これを防ぐために脳内では血液の温度が定点観測されています。そのため首を通る血液が冷えていれば脳は「大丈夫だ」と判断するのです。
首を冷やすために私がBadwaterで使ったのはバンダナでした。三角に折って氷を入れたものを頭に巻くことで、走りながらでも冷たい状態をキープできます。タオルやバフでも代用でき、近いものでは日よけのついたキャップも有効です。
ただ、暑さを脳に認識させるセンサーは身体中にあるため、直射日光を防いだり、通気性の高めるキャップや冷感素材のウエアといったアイテムを活用することも必要です。これらを駆使して脳が「大丈夫だ」と安心できる状態を維持すれば、いつもより快適かつやる気を持って夏のトレーニングができるようになるはずです。
その1 3日以上空けずに外を走る
その2 ペースを上げず、ゆっくりジョグを継続
その3 冷感アイテムで脳を騙す(安心させる)
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いわもと・のぶみ
club MY☆STAR ランニングチーム代表。2003年スパルタスロン6位、11年「Badwater 135」5位、24時間走世界選手権出場3回。1966年生まれ。神奈川県出身。
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