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脳疲労の研究者が語る「レース直前はスマホを置いてボーっと過ごすのが一番」

2026年8月14日
写真/青山義幸
写真/青山義幸

発売中のランナーズ9月号ではランニングと脳の関係を様々な切り口で紹介していますが、「脳グリコーゲンからみた運動中の脳疲労とその予防策」を研究する筑波大学体育系の松井崇准教授に、ランナーがパフォーマンス向上に活かせる知識を教えてもらいました。


脳グリコーゲンの減少は運動中の脳疲労の原因になる
実は脳にもグリコーゲンがあり、脳グリコーゲンの減少は運動中の脳疲労(中枢疲労)の原因になることが動物実験によってわかってきています(脳グリコーゲンはヒトでは測定はほぼ不可能)。運動中の中枢疲労は、脳が筋肉を動かす機能の低下を招きます。
ではランナーの皆さんがレース中に脳グリコーゲンの減少を抑えるには、どうすればいいのでしょうか。方法として、「事前に増やしておく」「運動中に節約する」の2つのアプローチがあります。
1つ目の「事前に増やしておく」方法。それはトレーニングを積み重ねることです。トレーニングを積み重ねることで、筋グリコーゲンだけでなく、海馬や大脳皮質で脳グリコーゲンが増えることがわかっています。トレーニングすることは、筋肉や心肺機能だけでなく、運動を継続させるための脳も鍛えているということです。さらに、レース1週間前から当日に向けて脳グリコーゲンをより増やしておく方法が、グリコーゲンローディングです。これはいわゆるカーボローディングと同じで、1週間前に疲労困憊になるような運動を行い、高糖質食をとることで、筋グリコーゲンだけでなく脳グリコーゲンも増えることがわかっています。
2つめは、レース当日どのように走れば脳グリコーゲンを節約できるか、です。ランナーの皆さんは、フルマラソンではイーブンペースで走ろうとする方が多いのではないでしょうか。実は、最新の研究では、野生動物の移動形態のように、動いたり止まったりする断続的な運動の方が、イーブンペースよりも2倍くらいスタミナが長持ちするということが知られています。ただこれは、平均速度は同じで、長い距離を動けるということなので、早く目的地にたどり着くことが目的ではないという前提があります(野生動物の運動は、早く目的地へたどり着くことではなく、なるべく効率よくいろんな餌場を探す、なるべく長く動き続けるという目的のため)。よって、断続走はレース時の走り方というよりも、トレーニングとしての方が効果的と言えるかもしれません。ファルトレクなどが断続走にあたるでしょう。

スマホ使用後の運動は筋力発揮・持久力が低下
現代を生きる市民ランナーの皆さんは、もちろん肉体的に走っていると思いますが、脳も走り続けてしまっているかもしれません。パソコンに向かって仕事をすることはもちろん、何気なくスマホでSNSやネットサーフィンをすることでも、実は頑張って仕事するのと同じくらい、脳が働いているのです。
スマホを使用後に運動すると筋力発揮・持久力がともに低下するという研究があります。
一方のグループはSNSやネットサーフィンでスマホを45分間使った後にスクワットをできるところまでやる、もう一方のグループはドキュメンタリーを45分間見た後に同様にスクワットを行うという比較実験を行った結果、事前にスマホを45分間使った方が、スクワットの回数が落ちるという結果でした。これは、認知疲労がその後の筋力発揮を低下させるということを示しています。さらに、スマホを45分間使った後は、自転車で最大出力の80%の負荷で運動する時の限界までの時間が短くなるという結果も出ています。つまり、筋力発揮だけでなく、持久力も落ちるということです。
このことから、レース前に何か調べたり、友達に連絡するなどでスマホを使っていると、実はレースでピークパフォーマンスを出せていない可能性があります。
スマホを使っている時にも実は脳内で脳グリコーゲンが使われ、利用されている可能性があるのです。ですので、脳グリコーゲンの節約と言う意味では、レース直前はスマホを置いてボーっと過ごすのが、一番です。
直前のスマホに限らず、レース前夜に遅くまでパソコン仕事をするというのも、脳グリコーゲンを減らす行為と言えます。



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