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「僕は脳のリミッターをはずすことができるから、力を出し切れる」。1月のニューイヤー駅伝で22人を抜いたプロランナー・吉田響選手はそう語ります。ランナーズでは「失速の原因は脳がブレーキをかけること」という理論を度々取り上げてきましたが、「吉田流・脳のリミッターのはずし方」とはどんなものなのでしょうか。吉田選手に徹底インタビューしました。
陸上競技を始めた中学時代、ラストのスプリント勝負ではかなわないので、3000mのレースでは1000mや1400mからロングスパートをかけるようになりました。
それ以来、いつもハイペースでレースに入っているので、必ず「このまま最後までもつだろうか」という不安が頭をよぎります。終盤、つらくなったときに脳がブレーキをかけてくるのも感じます。
そういうときに僕は脳のリミッターをはずして、ペースを保ったり、上げたりすることができます。
そのための大事なポイントは「脱力」です。いかにリラックスするかです。身体がきつくなると力んでしまい、走るために必要ではない筋肉にも力が入ります。肩周りに力が入って呼吸がしにくくなったり、余計な力を使うので酸素消費量が増えたりして、走りの効率が悪くなります。そうなると心理的にもきつくなります。
そうならないように、僕は腕をブラブラさせて、肩周りの筋肉をほぐします。身体をリラックスさせると、必要な筋肉だけを使って走れます。身体とともに心もほぐれてきます。
脳がブレーキを掛けてきたら、そうやって技術的に対処してペースダウンを防ぎます。僕はそれを「脳のリミッターをはずす」と表現しています。それができるのが自分の強みだと思います。
短距離の選手の走りを見ると、ラストは脱力しているのがわかります。口は堅く結ばず、開いているし、手はギュッと握らず、パーの状態です。そうすることで、ムダな力を省いて、必要な筋肉だけを使っているのだと思います。どの筋肉に力を入れるか、どこを緩めるが大切なポイントです。
脱力するともに、使う筋肉を少し替えます。ふくらはぎを使って地面を蹴り過ぎていると感じたら、臀筋とハムストリングスを使うようにする、といった具合です。その切り替えのテクニックが向上してきました。
大会で脳のリミッターをうまくはずせた成功例の一つは、創価大学4年次の箱根駅伝2区(日本人歴代最高記録で13人抜き)です。残り3kmの戸塚の壁が迫ると、身体が硬くなってフォームを崩してしまう選手がたくさんいます。あそこで僕は上手に脱力して、ムダのないフォームで力を出し切ることができました。
今年のニューイヤー駅伝の2区(22人抜きで区間新)も成功例です。10kmの通過がトラックの1万mの自己ベスト(28分12秒)を上回る27分42秒だったので、最後まで持つだろうかと不安になりました。でも、せっかくいい形でレースを進めてきたのだから、リミッターをはずして、このまま押し切ろうと決めました。
13㎞付近で先頭集団に追いついて今江勇人選手(GMOインターネットグループ)と平林清澄選手(ロジスティード)との競り合いになってからは、2人にリズムをもらいながら、焦らず、力むことなく最後まで走ることができました。
初めて脳のリミッターをはずせたのは中学3年のときのジュニアオリンピック3000mです。激しい雨の中、1000mで早めに飛び出しました。その後、追いつかれてもフォームを崩すことなく7位に入賞できたことが大きな自信になりました。ただし、あのレースは意識的に脳のリミッターをはずしたわけではなく、結果的にそうなっただけです。
高校時代にラスト1000mや400mでペースアップする練習を重ねたことで、意識的に脱力してリミッターをはずせるようになりました。徐々にその精度が高まって、大学に入って以降は失敗したことがありません。
発売中のランナーズ9月号では吉田選手のインタビュー全文、および「一般のランナーも応用可能なスキル」と語る走る脳科学者による解説も掲載しています。
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