2025年10月アメリカでの世界選手権にて。選手の拠点となるテントとサポートクルーの様子(写真/野田倖史郎KoshiroNoda)
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「1時間で6.7km走る」ことを身体の限界まで繰り返す、バックヤードウルトラという競技をご存知でしょうか。近年国内外ウルトラランナーの間で人気が高まりつつあります。この競技に魅せられて脱サラ、大会に参加するだけでなく自身でも大会を企画、さらには普及活動も行っている水野倫太郎さんがその魅力について綴る連載です。
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「ランニングって個人競技でしょ?」一見するとそんなイメージが持たれがちですが、ランニングに親しまれている方であれば、駅伝、リレーマラソンなどチームワークが問われる種目もあると思い浮かぶかもしれません。バックヤードウルトラもまた、個人競技を超えたランニングの一つ。ランナーたちと"走らない"サポートクルーたちのチームワークが重要になるのです。
大会にもよりますが、バックヤードウルトラでは、各選手1〜2名(交代可)のサポートクルーをつけることが許可されています。イメージは、F1やルマン24時間耐久などのモータースポーツのピットクルーでしょうか。
ランナーたちは、1時間に1回、6.7kmを走り終えて各自の"陣地"に戻ってきます。多くの選手は、2.5m×2.5m等の割り振られた区画に、テントを設営し、仮眠できるような簡易ベッドや食事の用意をするための調理器具、替えのシューズやウェアなど身の回りの品を、思い思いに持ち込みます。距離も時間も決まっていない挑戦を走り続けるための、いわば"家"です。
その家にピットインしてきたランナーを手助けするのがそれぞれのサポートクルーです。ランナーの要望に応えながら、必要なものを手渡したり、食事を用意したり、仮眠から目覚めるように声かけをしたり。加えて、ときに叱咤激励したり、選手を立たせてスタートラインまで背中を押したり、ボクシングのセコンドのような役割まで担います。
選手にとっても、サポートクルーにとっても終わりがわからない長期戦。気を許せる、何でも思ったことが言える、そんな間柄の人に、サポートクルーをお願いすることをオススメします。
なぜなら、レースが進むごとに、選手はどんどん自分でできることが少なくなっていき、大なり小なりわがままになります(笑)。
いまでこそ笑い話ですが、私も、初挑戦のときにサポートしてくれた同世代のラン仲間たちに「もっとこうしてほしい、ああしてほしい」とわがままを炸裂した結果、「お前はモラハラ夫か!」とお叱りを受けたことも。
現在は、ランニングコミュニティの仲間であり鍼灸マッサージ師でもある花田鉄平さん、妻のあおいをはじめ、走ることでつながった仲間たちにお願いすることが多いです。
痛み出した私の体を献身的にマッサージしてくださる鉄平さんや眠気で朦朧とする私の口に「ほら、口開けて」と食べ物を押し込んでくれる妻あおい。
一つ一つのバックヤードウルトラが、サポートクルーたちとの想い出でもあります。
バックヤードウルトラへの挑戦は、サポートクルーの存在なくしては成り立ちません。(なかにはサポートクルーをつけずトップレベルの結果を残す特異な選手たちもいますが)
1人ではできないし、1人じゃない。まさに共走です。
「なかなかサポートクルーもお願いしづらいよ」と思われた方もいるかも知れませんが、そこには新しいランニングの景色が待ち受けているはずです。
「自分が走るのは、ちょっと……」という方にも、サポートクルーという形は、一つのランニングの楽しみ方をもたらしてくれますよ。
2025年6月オーストラリアのバックヤードウルトラにて献身的にマッサージをする花田鉄平さん(写真/野田倖史郎KoshiroNoda)
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<プロフィール>
みずの・みちたろう
プロウルトラランナー。1995年生まれ。神奈川県秦野市在住。バックヤードウルトラを主戦場に、2024年、2025年、日本代表として世界選手権に出場。自己ベストは 94LAP/約630km。
活動の軸は、走ること・伝えること・つくること。『走るはつなぐ』『共走』をテーマに、「丹沢ループス」「バックヤードウルトラ神奈川大会」等のイベント企画やバックヤードウルトラのドキュメンタリー上映会・ポッドキャスト配信にも精力的に取り組む。2026年は海外バックヤードを転戦予定。
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