2025年6月の大会で走るオーストラリアランナーたちとギャラリー(写真/野田倖史郎Koshiro Noda)
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「1時間で6.7km走る」ことを身体の限界まで繰り返す、バックヤードウルトラという競技をご存知でしょうか。近年国内外ウルトラランナーの間で人気が高まりつつあります。この競技に魅せられて脱サラ、大会に参加するだけでなく自身でも大会を企画、さらには普及活動も行っている水野倫太郎さんがその魅力について綴る連載です。
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「あなたは、参加者が最後の1人になるまで走り続けられますか?」と聞かれたら、多くの人は面食らいつつ否定することでしょう。
それでは「あなたは、1時間に6.7㎞を走れますか?」という質問なら? この記事を目にしているランナーの方々であれば、多くの方が「YES」とお答えになるはずです。「途中歩いても、時間内に間に合えばいいんだよ!」と伝えれば、日頃ランニングをしていない家族や友人たちでさえ、「それならできるかも」と答えるかもしれません。
バックヤードウルトラが誕生したのは、2011年。テネシー州に住むアメリカ人・Lazarus Lake氏(通称ラズ)が、ランナー仲間たちとの“遊び”として開催したのがはじまりです。場所は、ラズの自宅の裏庭で。
それから15年。「1時間に6.7kmを走る、最後の1人になるまで繰り返す」という競技形式は世界中に広がり、現在では約80カ国で、年間400前後の大会が開催されています。
一見すると過酷な耐久ランニング。しかも、同じところを延々とぐるぐる走り続ける。これだけ聞くと、到底、面白そうには感じられないでしょう。でも世界中に広まり続けている。バックヤードウルトラが盛んなオーストラリアには、500名以上が集まる大会もあるのです。
なぜか? 理由は単純で、参加しやすいから。「最後の1人になるまで繰り返す」という部分こそ、ハードルの高さを感じさせますが、逆に言えば、やめたくなったらすぐやめられるという気軽さがあります。1時間に6.7kmさえ走れれば、仮に、走れなくとも、スタートラインに立つことはできます。
何より、速く走ることが重要ではないからこその楽しさが、大きな魅力になっています。バックヤードウルトラには、走力や世代、性別による違いに関わりなく、ランナーたちが共に走る時間が多くあります。自然とコミュニケーションが交わされ、時間が経つほどに選手同士はもちろん、会場にいるサポートクルー、応援者も含めた一体感が生まれます。
実際、私が2025年に参加したオーストラリアの大会は、約260名がスタートラインに立ち、最初の1時間で5名が脱落。自身の競技を終えても、会場に留まり、このいわば「ラン二ング好きが集まるお祭り」を大いに楽しんでいました。
また、大会運営者としての開催しやすさも理由の一つです。コースは最長でも6.7㎞分確保すればよく、距離さえ規定を満たしていれば路面は問いません。舗装された道でも、登山道でも、芝生でも、砂浜でも。上り下りも、あってもいいし、なくてもいい。人里離れた山奥から、街中まで。いわばなんでもありです。大会運営者としては、やりたいと思って、できそうなコースを選べばよいだけ。大がかりな交通規制が必要にならないことがほとんどです。
日本では、2020年に初開催され、現在に至るまで約10の都道府県で開催されてきました。年間に5大会前後。まだまだ超人たちの過酷な戦いとして、敷居の高いイメージを持たれていますが、着実にすそ野は広がっています。
2026年の国内初戦は、2月21日(土)から神奈川県秦野市で開催予定です。何を隠そう私がレースディレクターを務めています(笑)
バックヤードウルトラの雰囲気を知りたい方は、ぜひ足を運んでみてください。
バックヤードウルトラの創始者ラズ。
2025年10月アメリカ世界選手権にて(写真/野田倖史郎Koshiro Noda、山内健靖Kensei Yamauchi) |
<プロフィール>
みずの・みちたろう
プロウルトラランナー。1995年生まれ。神奈川県秦野市在住。バックヤードウルトラを主戦場に、2024年、2025年、日本代表として世界選手権に出場。自己ベストは 94LAP/約630km。
活動の軸は、走ること・伝えること・つくること。『走るはつなぐ』『共走』をテーマに、「丹沢ループス」「バックヤードウルトラ神奈川大会」等のイベント企画やバックヤードウルトラのドキュメンタリー上映会・ポッドキャスト配信にも精力的に取り組む。2026年は海外バックヤードを転戦予定。
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